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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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死の十字路

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/09/26

『死の十字路』というタイトルは、かつてポプラ社から販売されていた江戸川乱歩さんの少年探偵団しリーズのひとつです。大好きな本のひとつでした。

「これでよし、と」

死神のアルバイト、佐藤(仮名)は、交差点の真ん中でパイプ椅子に腰掛け、交通整理用の誘導灯をぶんぶん振っていた。

ここは「死の十字路」。現世で命を落とした魂たちが、天国か地獄かの進路を選んで進む、霊界最大のジャンクションである。

本来なら荘厳で静寂に包まれた場所のはずだが、今日の十字路は大惨事になっていた。

「おい警備員! 右の『天国行き』コース、出口が工事中で全面通行止めになってるぞ!」

頭に輪っかを浮かべたおじさんが、怒気を含んだ声で詰め寄ってくる。

「すみませ~ん! 今、天国の『真珠の門』の自動ドアを最新のスマートロックに改修中でして! 2500年ぶりの大改修なので、ちょっと押してるんですよ!」

佐藤はメガホンで叫んだ。

「じゃあ俺たちはどこへ行けばいいんだよ!」

「暫定措置として、あちらの『地獄行き』コースを逆走して detour(迂回)してください! ただし途中の『針の山』は大変滑りやすくなっておりますので、足元に十分ご注意ください!」

亡者たちの列から、一斉に「ふざけるな!」とブーイングが巻き起こる。

そこへ、今度は黒い翼を生やした悪魔が息を切らせて走ってきた。

「ちょっと佐藤さん! 地獄行きコースの第一カーブで、血の池地獄の配管が破裂して水浸し……じゃなくて血浸しですよ! 亡者たちが『流れるプールみたいで楽しい』って浮き輪持ち出して遊んじゃって、全然地獄の拷問にならないんです!」

「あ〜、昨日からボイラーの調子悪いって言ってたやつですね! 急いで水道屋……じゃなくて悪魔工務店呼んでください! あと、遊んでる奴らには全員、流れるプール10周追加の罰を与えておいて!」

「了解っす!」

混沌を極める十字路の真ん中で、佐藤は頭を抱えた。

右を見れば「天国行き」の看板の前で「待ち時間が長すぎる」と腰を据えて麻雀を始める善人たち。左を見れば「地獄行き」の入口で「血の池プール最高!」とハイタッチを交わす悪人たち。

その時、十字路の奥から、圧倒的な後光を放つ巨大な影が現れた。閻魔大王である。

「佐藤よ……この未曽有の大渋滞は一体何事だ! 死者の交通網が麻痺しておるではないか!」

地鳴りのような声に、亡者たちもしんと静まり返る。佐藤は冷や汗をダラダラ流しながら、ビシッと敬礼した。

「申し訳ありません、大王様! 天国の改修工事と地獄の漏水事故が同時に重なりまして!」

「ぬうう……致し方ない。ワシ自らが交通整理を行おう。者共、ワシの指示に従え!」

閻魔大王は懐から巨大な誘導灯を取り出すと、キレッキレのダンスのような動きで交通整理を始めた。

「はい、生前ちょっとだけ路上喫煙したけどボランティア活動も頑張った人、右折! 針の山迂回ルートへ! 生前タピオカのストローをちゃんと分別しなかった人、左折! 泡風呂仕様の血の池へどうぞー!」

ノリノリで裁きを下す閻魔大王の姿に、亡者たちから「おーっ!」と歓声と拍手が湧き起こる。

こうして「死の十字路」は、霊界史上最も陽気で大騒ぎな交通渋滞に包まれたのだった

執筆のきっかけ: 「お堅いイメージのある死後の世界や裁判を、身近な日常のトラブル(工事渋滞や設備の水漏れ)と掛け合わせたらどうなるか」というアイデアから生まれたコメディショートストーリーです。

見どころ・こだわり:

キャラクターのギャップ: 畏怖されるべき存在である閻魔大王が、まさかの「キレッキレのダンス」と「緩い罪の基準(タピオカのストロー分別など)」でノリノリに交通整理をするギャップを描きました。

カオスな状況設定: 2500年ぶりのスマートロック改修工事や、地獄の血の池で流れるプール遊びを始める亡者たちなど、地獄と天国の双方が「システムエラー」を起こしているカオス感を意識しています。

読者へのメッセージ: 生前どんな生き方をしていても、最後はこんな陽気でちょっと適当な交通渋滞に巻き込まれるなら、死後の世界も案外悪くないかもしれません。クスッと笑っていただけたら幸いです。

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