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幽霊だと思っていたらご存命でした~心霊に興味を持った私の恋は生霊から始まる  作者: 悠日 里


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2/6

お家に幽霊が出るんです

「ただいまぁ……はぁぁ疲れたぁぁ」


 レジ締めなどの閉店業務を終えて、女子更衣室でコックコートから私服に着替えた後、バスに乗って一人暮らしをする2階建てのアパートへと帰って来た私。


 部活の後みたいにくたくただけれど、お腹が空いた。手洗いうがいを済ませて、早速ご飯にしよう。

 でも時間は午後10時過ぎ。これからお料理する気力なんて私にはない。

 そんなズボラな私の夕ご飯はと言うと、休憩時間に買って来たお惣菜のサラダと朝の残りもののスープである。


 そして今日のデザートは、自分がさっきまでお店で売っていたプリン。キャラメルプリンだっ。

 ちなみに今日までの賞味期限のものなのでタダである。


「はぁぁ美味しい~」


 マリネされたタコとトマトのサラダをメインに、朝多めに作っておいた適当ポトフを食べ、結構いい感じに胃が膨れた私だったけれど、こうしてデザートも食べてしまう。

 お米を抜いているとは言え、こんな時間に甘いものを食べて平気だろうか……?

 そんな自問自答を毎回しつつも、私はしっかり完食していく。うちのキャラメルプリンは、少し苦みがあるから甘すぎなくて食べやすいんだ。って、今……。


「今、何か耳元で聞こえた気がしたけれど……気のせいだよね! お風呂に入る前に、ちょっと胃を休めないと。動画でも観るか!」


 私は胸のドキドキを打ち消すように、そう明るく独り言を口にした。そしてぞわぞわした耳たぶを拭うように払いながら、パソコンを起動する。


「あれ? つ、繋がらない。電波障害かな? スマホは……大丈夫か。な、なら、パソコンも調子戻ったよね?」


 震えそうになる声で、また私は明るく独り言を口にする。

 でもパソコンのインターネットアクセスは無いままだ。


「べ、別にスマホでも観られるもん! ほら」


 けれど動画が始まった瞬間。スマホ画面に映る演者の男性の顔にノイズが走った。おまけに電源まで落ちてしまう。


「ひ! き、昨日は普通に観られたのに何でまた……? しかも勝手に消えちゃうし、もぉぉぉ無理っ」


 私は恐怖のあまり、スマホから離れて近くのベッドへと顔を(うず)めた。すると、すぐ。


「あ……やばい……」


 後ろに気配がした。ううん、それだけじゃない。気配どころか、何かが私の腰からお尻にかけて触れた。

 私はもぞもぞと蠢くそれに気付かれないように、黒目だけを動かして壁に立てかけてあるスタンドミラーを見た。


「や、やっぱりいつものやつだ……今日はまだお風呂に入ってないのに……ほ、本当無理です……!」


 すみませんすみません。私はそう必死に謝る。

 もし誰かがそんな私の様子を見たら、頭のおかしい子だと思うだろう。

 だって鏡には何も映っていない。

 当たり前だ。一人で住むこのアパートには、私以外誰も居ないのだから。


 な、なんだけれどね、ほら……?


「いいよ、入ってなくても。ご飯食べたばかりなんだから、俺とゆっくりしよ?」

「み、見えないのに喋るんだもん! 絶対そうだぁ!」

「? 見えないの? もっと俺を感じないと。さぁこっちを向いて」

「向きません! もう許してくだ——……んっ」


 私は見えない何かに手首を掴まれ、無理やり口を塞がれる。

 柔らかくて温かい。キスされてるんだ……


「って、そうじゃない。離してくださいっ」

「照れてるの? 相変わらず可愛いなぁ。でもまだ離してあげないよ。俺以外の男を見ようとしたからね」

「お、俺以外の男って何の話ですかっ?」


 私が訊くと、消えていたスマホの電源が突然立ち上がる。


「見ようとしたでしょ?」

「み、見るってまさか……」


 ど、動画のこと~~!?


「ほら、ちゃんとこっちを向いて……うん、よし。後ろ姿もいいけど、やっぱり正面からの方がよく顔が見られて好きだな。可愛い……ん」

「んんっ」


 私は見えない彼の力に押し負けて向かい合う体勢になると、いつものようにキスの嵐を受けた。

 普段はもっと壊れ物を扱うように優しいのに、焼きもちのせいだろうか。今日はずいぶんと強引だった。

 見えない彼の執拗なキスに、思わず私も息が乱れてしまう。


「君も(たかぶ)ってきたみたいだね、嬉しいよ……。もっと俺に、んっ、その可愛い声を聞かせて……」


 私の間近でそう囁き、見えない彼は段々と息遣いを荒くした。


 ど、どうしよう。何か今日おかしい……頭真っ白になる……


「——!?」


 思わずこのまま身を任せてしまいそうになった時。

 なんと目の前に、今まで見えなかった彼の姿が現れたのだった。


 幽霊に似つかわない、褐色の肌。

 何度も重ねた薄い唇は怪しく光り、私を真っ直ぐ見つめる瞳は曇り一つなく、長く美しい睫毛に縁取られている。

 そして私の身体を悪戯に触れる手は大きく、白いシャツから覗く厚い胸板が目に毒だった。


 ちょ、ちょっと、しっかりイケメンなんですけど~~!?


 彼は驚く私の顔を、嬉しそうに目を細めながら眺める。

 ううっ、悔しいけれどかっこいい。


「ふふ……やっと見てくれた。いい子いい子、たくさん撫でてあげようね」

「あわわわわわわ」


 私は今日も彼……イケメンだった幽霊に押し切られ、朝チュンしてしまうのかもしれない……。

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