4話 人魚姫(後編)
王子たちが甲板に出る。すると、そこには赤色に染まった海が広がっていた。
その海から1匹の人魚が姿を顕にしている。髪の長さから見て、短剣と髪を引き換えにした人魚姫の1番上の姉だ。
「何故王子を殺さない!コハクを使い、実らぬ恋の復讐を果たせると思ったのに!」
(お姉様!?)
巨大な人魚は周囲に複数の短剣を侍らせている。王子殺しの短剣は、思うように動かなかった琥珀に向けて投げられた。
(危ない!琥珀さん!!)
どうにか出来ないものかとましろが念じると、結界のような透明な壁が現れ、短剣を弾いた。
(貝殻の髪飾りなだけに、バリアが張れたのかな?)
『ましろ、それみんなにも張れるかい?』
(……ダメだ。ボクの持ち主の琥珀さんにしか張れないみたい)
「……仕方ない。僕が直接切り込むしかっ──!」
敵は王子殺しの短剣を、王子の心臓目掛けて投げつける。鵜久森は双剣を持つ手首を捻らせ短剣を弾いた。
『気を付けなよ王子!敵は君に効果抜群の武器を持っている!』
「ただの短剣でも心臓目掛けて投げつけられたら死ぬって!!」
林檎が死角から銃を構え、人魚を狙うが宙を舞う短剣の刃が銃弾を防ぐ。
「──ダメです。銃弾が読まれてる」
「短剣の数を少しでも減らせたらなぁ!」
打ち落としても、短剣は人魚の意思に従い何度も襲ってくる。
『まやかしかもしれない!元の短剣はあの中にひとつだけだ!』
「──見えた!!」
鵜久森が最初に心臓を狙ってきた短剣を双剣で斬りつける。残像が消え、人魚に真っ直ぐ突き進めるようになるが──
「っ!?」
人魚は手元にトライデントを召喚していた。鵜久森の双剣をトライデントを振り翳し、受け流す。
「沈め!人間ども!」
人魚がトライデントを振り翳すと、赤い海が荒れ、嵐となる。
鵜久森は足場が不安定なことを利用し、ステップを踏んで再び人魚に斬りかかった。双剣とトライデントが犇めき合う音が鳴り響く。
「くっ……!!」
人魚が力負けし、鵜久森に組み敷かれる形になる。鵜久森は双剣を甲板に突き刺し、トライデントを人魚から奪い手にした。
「……強いな。流石、私が惚れただけのことはある」
「え?」
『王子に人魚姫よりも先に恋をしたのは、1番上の姉だったんだ』
人魚の身体が泡となって消え始めた。王子との恋に敗れた為、死が近づいている。
(お姉様……)
「──コハク。貴女の恋はまだ終わっていない。泡にならないのがその証拠。私のようになってはダメよ」
人魚は最後にそう言い残し、泡となって風に流され宙をシャボン玉のように舞った。ラプスがすかさず口を開け、泡を回収すると、世界がガラス片となり、崩れ始めた。




