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甘党探偵月影ましろ〜人魚姫にトリックスター〜  作者: ツキノ
3章 クトゥルーの呼び声〜目覚めた水の邪神〜
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14話 新たな名前

 クトゥルフ教団代表の加藤徹夜ことルムル=カトゥロスがボクを召喚してから数日が経った。

 今は人間の子供の姿をとっているボク。

 何の違和感も無くボクはカトゥの子供として扱われ、この御伽街と呼ばれる土地をひと通り巡り、人間の生活を学んだ。


「ふわぁ~あ……」


 長い間封印されていたせいか、時々強い眠気がボクを襲う。


「クトゥルー様!今は会議中です!欠伸は慎むように!」

「ふわぁい……」


 メガネのレンズを光らせたカトゥにビシッとつっこまれる。

 そう。今現在進行形でクトゥルフ教団の本拠地で会議中。正直、ボクにはあまり興味の無い話しだから椅子に座っているだけで聞き流しているけど。

 カトゥがホワイトボードに細かく何かを書き込んでいて、それを議会席の信者たちがノートに書き込んでいる。

 基本的にカトゥが平日出勤の時とこういう議会の時が最高に暇してる。1人での外出は禁止されているから、平日はサブスクでアニメやドラマを観ながら暇つぶしするしかない。


「……と、思うのですが、クトゥルー様は如何お思いでしょうか?」

「ん……。いいんじゃない?」


 カトゥはボクが眠いのを知ってか知らずか、時折ボクに話題を振ってくるからタチが悪い。ボクは適当に相槌をうつ。

 平日クタクタになって帰ってくる癖に、クトゥルフのことになるとハイテンションで語っている。徹夜という名前通り、徹夜慣れしていて信者は夜更けまでカトゥの話しを熱心に聞いている日が多い。


「……熱心に語っている時に申し訳ないのですが、私はこれからどうすれば良いのでしょう?」


 手を挙げたのはホーリーホワイト……白野聖しろのひじりと呼ばれる異世界から召喚されたらしい聖女だ。


「クトゥルー様召喚の儀式がひと通り終わりましたので、聖女殿には暫く休暇をとっていただこうかと」

「休暇……」


 白野聖は顎に手を当て、暫く思い悩んでいる。突然の暇宣言で休暇中に何をするかがわからない、といった顔だ。ははあ、とボクは閃いた。


「だったらボクと付き合ってほしいな、白野聖しろのひじり!」

「え?」

「な、なんですとーー!?」

「だってカトゥは忙しいんだろ?ボクはもっと出歩きたいんだ。ひじりが保護者でいいだろう?」


 議会席がザワザワと騒めく。ボクが出歩きたいって言うだけでこんなにも騒ぐなんておかしいよ。子供の姿だから信用がないのかなぁ。こんなことなら、今からでもグラマラスな女性の姿でも取るべきか……。


「クトゥルー様、くれぐれも街中で暴れるような真似は……」

「わかってるって!耳からタコを出すくらいに散々言われてるからね!もし何かあったらひじりはすぐにクトゥルフ教団に連絡すること!じゃ、早速だけど行こうか、ひじり!」


 ボクは席を立ち、ダッシュでポカンとしていた聖に駆け寄りその手をとる。


「え、」

「お、お待ちくださいクトゥルー様ーー!!」


 まだ何か言いたげなカトゥを無視して会議室から飛び出した。


「い、いいのですかクトゥルー様……」

「いいっていいって。どうせただの小言だから。……それよりひじり、ボクもこっちの世界での呼び名が欲しいな。外でクトゥルー様って呼ばれるのは困るからさ」


 困惑した表情から一転し、聖は再び顎に手を当てて考え始める。


「では……。久遠琉月くとうるるというのは如何でしょう」

「久遠琉月か……。よし、気に入った!今日からボクは琉月るるだ!あはははは!」


 ひじりに名前をもらい、ボクは有頂天になり手を取っている聖と円を描きながら喜んだ。


「さぁ、行こう聖!外の世界へ!」


 部屋に篭ってアニメやドラマを観るのも悪くはないけど、永きに渡って封印されてきたボクは外の空気の方が吸いたい気持ちが強い。

 戸惑う聖を他所に、ボクは聖の手を握ったまま、長い廊下を疾走する。


「クトゥルー……琉月るる様!」

琉月るるでいいよ!ボクもひじりって呼んでるだろう?」

「それは出来ません。私と琉月るる様は対等ではないので」

「カトゥまでとはいかないけど、ひじりも肩っ苦しいなぁ。……まあいいや!さぁ、何処へ行こうか!」


 カトゥと街を巡った時よりも新たな発見がある筈だ。まだ見ぬ未知の世界にボクは心を踊らせた。

 え?逆だって?まだ見ぬ未知の世界を魅せるのはボクの方?今はそんな気分じゃないのさ。ボクの初めての友達になりそうなひじりと、人間の遊びをしたい気分だからね。


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