13年ルールとリスポーン理論
「さて。今回は、プルゴンの謎のひとつ──“13年ルール”と“リスポーン理論”について講義していこうか」
そう言って、長谷川教授は大きなタブレット端末を取り出し、教科書用の資料をぱらぱらとスワイプしていく。
今日は久しぶりの対面講義。
私は後ろの席で小さく足をステップさせながら、先生が話し始めるのを今か今かと待っていた。
「えーと……まず、プルゴンが現れた年は、西暦何年だったかな。覚えている人はいますか?」
「はーい! 2045年です!」
私は勢いよく手を挙げて、大きな声で答える。
「はい。ありがとうございます。今日は遅刻なく講義に来られましたね、二神さん」
教室のあちこちから、くすくすと笑い声が上がる。
先生は、この莫大な数の学生の中から、私の“遅刻歴”をちゃんと覚えているらしい。
嬉しいような、恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちになる。
「今年が西暦2210年ですから、プルゴンが“出現”したのは、ちょうど165年前ということになります。
みなさんご存じの通り、プルゴンはおよそ十三年で“寿命”を迎えるわけですが──その理由を、明確に説明できる人はいますか?」
教室のあちこちで、ひそひそと相談する声が聞こえる。
「結論から言いましょう。
──分かりません」
きっぱりと言い切った。
「当時から現在に至るまで、“よくわからない”というのが、もっとも正直な回答です。
ですから、これから話す内容は、あくまで“こうなのだろう”と広く受け入れられている仮説であって、厳密な科学的根拠はありません。
そもそもプルゴン学というのはですね、“仮説の上に仮説を積み上げて、結果として何がなんだかわからなくなる”という、なかなか愉快な学問なので」
教室がどっと笑いに包まれる。
「さて。十三年ルールが最初に提唱されたきっかけは、当時スイス・ジュネーブにあったプルゴン研究所──後の国際プルゴン協会研究機関、IPARIの前身ですね──で起こった“ある事件”です。
その研究所にいた数十体のプルゴンが、ある日を境に、突如として姿を消した。
その年が西暦2058年。プルゴン出現から“十三年目”の年に当たります」
「うーん。当時の人たち、めちゃくちゃびっくりしたんだろうなぁ」
「ねぇ凛ちゃん。心の声が漏れてるよ」
隣の席の友達が、くすくす笑いながら肘でつついてくる。
「あ! ごめん〜! 今の、しゃべってた?」
「しゃべってたよ。普通に」
「え!? 心の中で思ってただけなんだけど!」
「それを“心の声が漏れてる”って言うんでしょ」
「そうなのか!?」
そんな他愛もないやりとりをしながらも、私はちゃんと先生の話を聞いている……つもりだ。
「前回、“絶食試験”の話をしましたね。
あの研究所には、合計で百数十体のプルゴンがサンプルとしていました。
ところが、その中の“初期ロット”のプルゴンだけが、ある日を境に一斉に消失した。
翌年には“二番ロット”が、さらに次の年には“三番ロット”が順番に消えていった。
初期ロット、つまり“2045年出現組”、次が“46年組”、その次が……というように」
スライドに簡素な年表とグラフが映し出される。
「このロット順の消失と、絶食試験で得られた寿命データを統合した結果、“プルゴンはおおよそ十三年で消失する”という仮説が生まれました。
これが、今ももっとも有力とされる“十三年ルール”です」
周りでは、ノートにペンを走らせる音と、端末を叩くタイピング音が軽く響いている。
この音が、なぜか私は好きだ。講義を受けているって感じがして。
「話を端折りますが、先人たちが血眼になってプルゴンを研究して、この十三年ルールをある程度確からしいところまで持っていった。
この十三年を“一期”とよび、二期目以降のプルゴンは“十三年周期で一秒ごとに消失している”と考えられています。
現在、プルゴンの総数は世界でおよそ六億体。単純計算で、一秒あたりおよそ二十体が“どこかで消えている”計算になりますね」
教室の空気が、少しだけざわめく。
「そして、この十三年ルールと対になるのが、“リスポーン理論”です。
プルゴン系の専攻のみなさんは、名前だけなら聞いたことがあるでしょう」
“リスポーン”──プルゴンが突如現れたり、突如消えたりするあの現象のことだ。
今や日常語になっていて、プルゴン協会に通報するときは「リスポーン回収をお願いします」で通じる。
私たちにとっては当たり前の言葉だけど、本来はかなり異常な現象のはずだ。
「“リスポーン”という言葉は、本来ゲーム用語でした。
倒したモンスターが一定時間後に復活する現象を“スポーン(出現)”あるいは“リスポーン(再出現)”と呼んでいたのです。
この現象が、あまりにもプルゴンの挙動と似ていたため、そのまま名称を借りた、というわけですね」
「十三年ルールとリスポーン理論は、セットで考えられています。
プルゴンが現れては消える──しかも、毎回現れる場所はバラバラだったり、逆に“同じ場所”に出現し続けたりする。
後者のように、座標が固定されているポイントを“固定リスポーン”と呼びます。
日本でいえば、トー横のプルゴン街が有名ですね」
教室のあちこちから「あー」「行ったことある」のささやきが聞こえる。
「この現象を追うために“プルゴン動態調査”が始まりました。
長期にわたって世界中で調査した結果、驚くべき事実が判明します。
──プルゴンの総数は、調査開始から八十年間、ずっと“同じ数”を維持しているのです」
ごくり、と誰かがつばを飲む音が聞こえた。
「まるでゲームのプログラムのように、プルゴンという“モンスター”が一定数、再出現し続けている。
十三年ルールに従い、寿命を迎えたプルゴンは、どこか別の場所でリスポーンされ、再び世界を巡り、また十三年後に消える。
そして消えたプルゴンは、プルゴン同士の記憶から完全に抹消される」
スライドには「ネットワーク → 記憶消失」と大きく書かれている。
「これらのことから、プルゴンには“何らかのネットワーク”が働いており、
そのネットワーク上で“記憶の改ざん”が自動的に行われているのではないか──と考えられているわけです。
消えた個体は、彼らの世界から“なかったこと”にされる。
これは、生物というより、どちらかと言えば“システム”に近い振る舞いだと、私は思っています」
「さて。ここまで話すと、ある疑問が生まれますね。
──そのネットワークを制御している“中心”があるのではないか?」
教室の空気が、もう一段、ひきしまる。
「その仮説の一つが、みなさんも噂で聞いたことがあるであろう“ティーファー”です。
詳細は……今日は割愛しましょう。噂話の域を出ませんので」
ティーファー。
プルゴンたちが畏怖と憧れを込めて呼ぶ“始祖”の名。その名前が出てくるだけで、私は少し背筋がぞわっとした。
「プルゴンは基本的に、群れで生活しません。
個体ごとに自由行動、たまに他のプルゴンと絡みはするけれど、群れることを好まない。
それでも十三年のあいだに、彼らは周りの環境や人間のことを少しずつ学んでいきます。
……しかし、十三年の周期が終わり、その個体が消失すると、そのプルゴンに関わっていた他のプルゴンからも、その存在は“綺麗に消える”」
先生は、自分の胸を軽く叩くような仕草をした。
「もし、私がこの世からいなくなっても、みなさんは私のことを覚えていてくれるでしょう。
……まぁ、二、三日もすれば忘れられるかもしれませんが」
また教室が笑いに包まれる。
「ともかく。
十三年ルールとリスポーン理論。この二つは、プルゴンの根幹をなす現象であり、非常に重要な意味を持っていると考えられます。
テストでもたっぷり出しますので、ちゃんと復習しておくように」
どよめきと苦笑いが混ざった声があがる。
「君たちはプルゴンブリーダー専攻ですから、この講義を取らなくても資格自体は取れます。
ですが、時間と単位に余裕のある人は、ぜひ後期の“プルゴン学総論”や“生態理論”も取っておきなさい。
いつかプルゴン自身が、この謎めいた仕組みの真実を、私たちに見せてくれると、私は本気で信じています。
その真実に一歩近づけることは、私たち研究者にとって、何よりの喜びです」
「今日はこのへんで切り上げましょう。
次回は“プルゴンの個性”について解説します。ここも重要ですから、気合を入れてきてください」
そう言って、講義は少し早めに終了した。
周りでは、帰り支度を始める学生たちのざわめきが広がっていく。
「凛ちゃん、このあとどうする? 私、後期のプルゴン実習で使うプルゴン、事務で登録しに行こうと思ってるんだけど」
「あー、私も行かなきゃいけないんだけど──」
「えーと、二神さんはいますか?」
ちょうどそのとき、長谷川教授が私を名指しで呼んだ。
「あ、はーい! ここです!」
「少し、私の研究室まで付き合ってもらってもいいですか?」
「え……あ、はい! 伺います!」
私は慌ててノートと端末をバッグに放り込み、立ち上がる。
「凛ちゃん、なんか悪いことでもしたの?」
「え!? こんなかわいい私が? するわけないじゃない!」
「……どういう理屈なの?」
「違うの! ちゃんと真面目に講義聞いてたもん! また今度ね!」
「うん、また次の講義でね」
私は手を振って教室を出ると、教壇前で待っていた長谷川教授のもとへ向かった。
「いやぁ、時間を取らせてしまってすまないね。田島くんから話は聞いているよ。君が、例のプルゴン襲撃事件の当事者だそうじゃないか。
……つまり、あの日の講義は“オンライン受講かサボり”だったということだね?」
冗談めかして微笑みながら、ちらりと私を横目で見てくる。
「あ、すみません……。ちょっと体調悪くてオンラインで受講してて、その途中でサイエンス事務所から連絡が来たんです。
講義の続きを聞きたかったんですけど、事件現場が近くて……その、巻き込まれちゃいました」
「ふむ。怪我が大事に至らなかったようで何よりです。
か弱い女の子なのですから、あまり無茶はしないように」
「……怒らないんですか?」
「怒る? どうして?」
不思議そうに首を傾げてから、ふっと柔らかく笑う。
「君は、とても重要な“新しい情報”を持ち帰ってくれたんですよ。
これから教科書に載るかもしれないような、“彼らの謎”をね。
私の退屈な講義なんかより、よっぽど価値のある経験でしたよ」
「あの、あの日暴れた狂乱のプルゴンなんですけど──」
「詳しい話は、私の部屋でゆっくり聞かせてもらいましょう。この歳になると、階段ひとつ上るのにも気合がいるものでね。エレベーターも遠いし……」
そう言って、教授はゆっくりと階段を上っていく。
私はその後ろを、少し緊張しながらついていった。
教授の研究室の前には、なぜか使われていない大きな机と、膝掛けのかかったワークチェアがぽつんと置かれていた。その机の上には、「5/15日 第二倉庫へ」と殴り書きされたメモが一枚、セロハンテープで留められている。
特に壊れているわけでもなく、椅子のクッションもまだふかふかそうなのに、しばらく誰も触っていないような、薄いほこりが端っこにたまっていた。新学期のドタバタで、年度末の片づけが後回しになっているだけ──そう思えばそれまでなんだけど、
“第二倉庫”という言葉と「5/15」という日付が、なぜだか胸のどこかにちくりと引っかかる。通りすがりの景色のはずなのに、頭の片隅にこびりついて離れない。
このときの私はまだ知らない。
このどうでもよさそうなメモと、ここに放置された机が、あとで私たちをとんでもない騒動に引きずり込む“入り口”みたいな存在になることを。
私は視線を机から切り、目の前のドアに向けてひとつ深呼吸をした。手のひらには、じんわり汗がにじんでいる。ドアを横にスライドさせて、中へと足を踏み入れた
そこは──私にとっての“聖域”のひとつだった。
何度も何度も入りたいと願い、何度も断られてきた場所。
「ようこそ、長谷川ゼミの研究室へ。ここではプルゴンの生態や構造、ネットワークなど、さまざまな研究を進めています。
……まぁ、君は何度もここに入りたいと言ってきたから、説明は不要かもしれないが」
奥の部屋からは、ゼミ生たちがこちらの様子をうかがっている気配がする。
私は、ここのプルゴンを一匹、ちょっとした手違いで逃がしてしまい、それ以来“出禁”を食らっていた。
この部屋の周りに近づいただけで、ゼミ内の情報網を通じて通報されるレベルである。
今日は特別に、“一時的解除”という形で入室を許されているに過ぎない。
歓迎されていない空気は、ひしひしと伝わってくる。
「さて。先ほどメールでやり取りした、“狂乱のプルゴン”についてのお話を、本人から聞かせてください」
「はい。
二神がこの事件の第一発見者で、詳細な映像はすべて私たちの事務所で保管・解析しています。
今日は、その一部を抜粋して持ってきました。
この映像と彼女の証言から、長谷川先生の見解を伺えればと思い、お時間をいただきました」
「二神さん、説明できますか?」
「はい!」
田島先輩は、編集済みの映像ファイルをタブレットで再生する。
数分の映像が流れ終わると、私はそのときの状況を、自分なりの言葉でできるかぎり細かく説明した。
たどたどしく、順番も前後しがちだったが、教授は途中で遮ることなく、静かに聞いてくれる。
「ふむ……」
やがて、教授は眉間にしわを寄せ、低く唸った。
私の説明に対してなのか、プルゴンそのものに対してなのか、それとも両方なのか──判断がつかない表情だ。
「これは確かに、お二人が言う通り、“知性のプルゴン”である可能性が高いですね。
あの落ち着いた言葉の運び方は、通常のプルゴンには見られないものです。
知性持ちと断言して構わないでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
田島先輩の声には、安堵と興奮が同時に滲んでいた。
「非常に興味深い個体です。後ほど、研究所でも詳しく解析してみましょう」
教授はそう言ってから、少しだけ表情を引き締めた。
「ただし──今まで事例として報告されている“知性プルゴン”とは、やや異なる印象も受けます。
知性のあるプルゴンは、いくつかの分類がなされていますが、今回の個体は、それらとは別枠として扱うべきかもしれません」
「つまり、新種……ということですか?」
「“新種”というより、“新しい個体としてのカテゴリ”ですね。
少なくとも、日本で確認された中では例を見ません。
人間に対してここまで明確な敵意を持っている知性プルゴンは、記録上存在していないのですよ」
「あ、あと、そのプルゴンなんですけど──」
私は勢いで口を開いた。
「さっきの映像のあとに、プルゴンが“リスポーンみたいに”消えたんですけど、その消えたプルゴンのことを《狂乱のプルゴン》が覚えてたんですよ!
普通のプルゴンって、リスポーンで消えた個体のことは覚えてないじゃないですか。それが、すごく不思議で……」
「なるほど。それは、典型的な“知性プルゴン”に見られる現象ですね。
彼らは、他のプルゴンが消えても、どこかしら“違和感”として覚えている節があるのです」
教授はさらりとそう言ったが、私にとってはかなり衝撃的な話だった。
「二神さん、“九つの知性プルゴン”の話は知っていますか?」
「えーっと……なんとなく、断片的には……」
正直に言えば、ちゃんと理解しているとは言えない。
文献も少ないし、噂話レベルの話が多い。
「知性プルゴンは現在、九つの個体が確認されています。
いずれも、通常のプルゴンネットワークとは異なる挙動を見せ、人間と対話可能な知性と、特異な個性能力を兼ね備えている──とされています。
この九つの個体だけが、正式に“知性プルゴン”と認定されている。
ですが、今回の《狂乱のプルゴン》は、そのどれにも該当しないように見えるのです」
「ということは、“知性プルゴン的な性質を持った、別枠の存在”ってことですか?」
「そう解釈するのが妥当でしょうね。
彼の個性は炎──エレメント系でしたか?」
「はい。火の玉飛ばしてきました」
「エレメント系は珍しい個性ではありますが、それ自体は“特別な何か”ではありません。
むしろ、過去にも何度か確認されているタイプです。
そういう意味では、“九つの知性プルゴン”とは、出自が異なる可能性が高い」
「……あの、そのプルゴンの“目”に特徴ってありましたか?」
「目、ですか? 特に変だとは思わなかったですけど……」
「そうですか。
九つの知性プルゴンは、共通して“目に特徴がある”と言われているのです。
それと、近くにいるだけで、何か異質なエネルギーを感じると証言した人も多い」
──異質。目。
そこで、私は唐突に「あっ」と声を漏らしていた。
「どうしました?」
「異質で、目が違うプルゴン──いました! 事件の途中で急に現れた、しゃべらないプルゴンがいて……。
そいつが《狂乱のプルゴン》と一瞬だけ戦って、一方的に勝ったんです!
でも、プルゴン協会の人にも、周りの人にも“そんなプルゴン見てない”って言われて……!」
教授は私の話を聞き終えると、静かに頷いた。
「よく、その現場に居合わせましたね。そのプルゴンこそ、九つの知性プルゴンの一つ──“クロノス”と呼ばれている個体です」
ぞくり、と背筋に電流が走る。
「クロノスの能力は“時間の操作”だと言われています。
物質の時間を早めたり、周囲の時間の流れを変えたりすることができる。
今回のように、“周りの人間とプルゴンの時間・記憶を改変して、なかったことにする”ことも、理屈の上では可能です」
つまり──あの場にいたのは、《狂乱のプルゴン》と、クロノス。
九つの知性プルゴンの一体だ。
「クロノスは、《狂乱のプルゴン》と何らかの関係性を持っている可能性が高い。
そして、その関係性を“人間に知られたくなかった”がゆえに、介入し、記憶を操作した。
そう考えるのが自然でしょう」
「知性プルゴンの定義とは別枠の、“知性を持つ異常個体”としての《狂乱のプルゴン》……
そこに、“九つのプルゴン”が絡んでいる、という理解でよろしいですか?」
「ええ、その認識で問題ありません」
田島先輩は、天井を仰いで、大きく息を吐いた。
「これは、想像以上にとんでもない話を掘り当ててしまったようですね、先生」
「ちなみにですが──お二人は、この事件の前に、“ティーファーの目撃情報”について聞いていませんでしたか?」
私はビクリと肩を震わせた。
なぜなら、それは──私が“やらかした”案件だからだ。
ニコニコと無表情を装っていると、田島先輩が、静かな声で答えた。
「知っています。……何せ、その調査を、こいつに依頼していたのは私ですから。
結論から言うと、“何もなかった”というオチでしたが」
語尾に、わずかな棘が混じる。
教授は「ほう」と小さく頷き、すぐに状況を察したように、「ああ、なるほど」と表情を和らげた。
「その件ですが、むしろ調べていただきたいことが出てきましてね。
……狂乱のプルゴンが、そこで“リスポーン”した可能性がないか。確認してほしいのです」
「現在、いろんなメディアが発生地点の特定に動いていますね。
もしその場所が“リスポーン地点”だったとしたら──野良プルたちの動きも、かなり変わるはずです。
了解しました。私たちで調べてみます」
「よろしくお願いします。
それと、お二人には直接関係ないかもしれませんが、少し不思議な“お土産話”がありましてね。
お時間は大丈夫ですか?」
俺と田島先輩は顔を見合わせ、頷いた。
「先日、私のもとに、一通の手紙が届きました。
“あなたの親しい友人です”と名乗る人物からの、匿名の手紙です。
私はそのような友人に、まったく心当たりがないのですが──内容が、非常に気になるものでしてね」
教授は机の引き出しから、一通の封筒を取り出し、大事そうにテーブルへ置いた。
「読んでいただいて構いませんよ」
「では、失礼して……」
田島先輩は、そっと封を切り、便箋を広げる。
紙面には、丁寧な筆致で、奇妙な“別れの挨拶”と、“現状報告”めいた文章が綴られていた──。




