表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プルゴンとかいう生命体が謎すぎる  作者: 黒弧かずちか
1章 プルゴン開示編
8/8

大スクープ



あれから、一週間がたった。

 世間では《狂乱のプルゴン》事件が連日トップニュースで、通勤電車の中でも、カフェでも、どこを歩いていても誰かがあの話をしている。


「そういえばさ、この前のプルゴンのニュース見た?」「あの火の玉のやつだろ」


 そんな会話が、そこかしこから聞こえてくる。


 プルゴン協会は今回の件について、早々に公式見解を出した。

 曰く──「ああいった“稀に見る特異なプルゴン”は、歴史的にも世界各地で時折確認されている。だが、これまでの例から見ても、人類全体の脅威となったことは一度もない。従来どおりの生活を続けてもらって問題はない」とのこと。


 ……まぁ、俺も正直、あの現場の映像を見て混乱したクチではある。けれど、それでも「プルゴンが人類の敵になる」とまでは、なぜか本気で思えない。

 根拠なんてどこにもない。ただ、胸のどこかに、揺るがない確信みたいなものが居座っている。おそらく、多くの人も同じなんだろう。


 《狂乱のプルゴン》本人はというと、いまだ逃走中。行方は完全に不明だ。

 ニュースでは「引き続き注意が必要です」なんて言っているが、見た目は普通のプルゴンと変わらない。そもそもプルゴン自体が「様子がおかしい」生き物なのだ。挙動不審がデフォルトの連中から、一体どうやって“()()()()()”だけを見分けろというのか。

 結局のところ、彼のほうからまた何かアクションを起こしてくれない限り、こちらから捕まえに行くのはほぼ不可能だろう。


 警察とプルゴン協会から事情聴取を受けた一ノ瀬は、「普通じゃない、会話の通じるプルゴンがいた」と正直に話したらしい。

 そして、二神はといえば──あいつのモニターゴーグルが、事件の一部始終をきっちり録画していた。

 あれがあれば、来月号はなんとかなる。いや、むしろ特集確定レベルだ。問題は、その主役たる二神の身柄が、いまだここにないことだけで。


 そして今、田島先輩の貧乏ゆすりが、デスクの下で地震のように震度を増している。

 理由は言わずもがな。


 ──二神凛、本日「事件後初出勤」のはず。時刻、十一時半。出社予定は十時。


 まあ、予想の範囲内ではある。むしろ「やっぱりな」としか言えない。


 ***


 二神と一ノ瀬のその後だが──

 二神は事件当日から二日ほど念のため入院し、三日目にはあっさり退院。医師の判断で「一週間は自宅療養」とお達しが出たものの、本人は電話越しでも分かるくらい元気そうだ。擦り傷だらけだったが、大きな外傷はなく、本人いわく「新陳代謝の暴力でほぼ治った」とのこと。


 一方、一ノ瀬は軽傷で済み、すでにバリバリ現場復帰。

 あの日の状況を何度も何度も聞かされ、今は編集部総出で、事件特集号の構成に取りかかっている。次号はほぼ丸ごと《狂乱のプルゴン》特集になるだろう。サイエンス編集部としては、ここ数年でもっとも“当たり”の号になるはずだ。


 「早く来ないかなぁ、凛ちゃん。なんだかんだいないと、寂しいのよ。わかる? いっちゃん?」

 「わかるー」


 棒読みで返事をしているのは、一ノ瀬蓮。そして話しかけているのは、プルゴンサイエンス編集部のエース、天使茉白あまつか ましろだ。俺と同い年の二十七歳。


 その名に違わず、見た目は絵に描いたような“天使”。

 爽やかな笑顔に、涼しげな声、コミュ力おばけ。性格も穏やかで、女子人気も高い。……ただし、付き合いが長くなると分かるのだが、その内面にはわりと深い闇を抱えている。いわゆる“堕天使”の気配が濃い。


「にしても、リンリン遅いねー。もう十一時半だよ? 絶対、田島パイセンキレ散らかしてるっすよ」


 それは俺も強く同意する。

 彼女の性格を知っているからこそ、「いや、むしろよくここまで遅れられるよな」と感心すらしてしまう。


「まぁいつものことだからねぇ〜。凛ちゃんも、ちゃんと反省してると思うよ〜。でもさ、今回の手柄は凛ちゃんなんだから、私は許してあげる」

「お前が許しても俺は許さんぞ」


 低い声でそう返したのは、田島優たじま ゆう。俺たちプルゴン生体部門の編集長だ。

 編集部は大きく三つ。プルゴン生体、プルゴン経済、プルゴンエンタメ。とはいっても、完全に縦割りというより、担当の“重心”が違うだけだ。

 俺たち生体部門は、プルゴンの謎や生態にフォーカスする部署……なのだが、ここ数十年、世界的にも目立った新発見がないのが現実である。

 入社してからの俺の仕事といえば、「小ネタ集め」と「考察記事の水増し」がほとんどだ。みんな大差ない。


「お前も同感だろ、渡」

「そうっすね。遅刻とかあり得ないっすね。ゴミっすね」


 俺は思ったままを口にする。バディだからこそ、遠慮はない。

 田島先輩は自分のデスクで貧乏ゆすりを続けながら、鬼のような速さでキーボードを叩いている。


「あ、田島せんぱーい。居酒屋、いつものとこ予約しといていいっすか?」

「ああ、頼む」


 明後日は「二神おかえり会」だ。

 今回の事件でやらかしたのも二神だが、同時に“とんでもないスクープ”を持ってきたのも彼女だ。天使が企画して、田島先輩も渋々了承。

 ……まあ正直、うちは記事が枯渇しすぎていて、飲み会だけは異様に多い。だいたいは編集長の愚痴大会になるけど。


「ねぇ天使ちゃん、なんでリンリン大遅刻してるか教えよっか〜?」

「えー? なになに!」

「プルゴン大学で、長谷川先生の授業受けてる」

「そうなのー? 私も聞いてみたいなー!」


「それかワンチャン、プルゴンにセロリ買ってあげてる」

「あぁ〜それはやりそうだよね。優しい子だから」

「うっそー。本当はね……」


 耳元でごにょごにょ囁く一ノ瀬。

「いっちーサイテー!(笑)」

「てか、天使ちゃん。昨日、男とおったでしょ? 女の友達から聞いたんだけど」

「あー、前に一度取材の打ち合わせで会った人なんだけど、ずっと“今度遊ぼう”って言われててー」

「え? 遊びに行ったん?」

「いってないよー。うざいんだもん。待ち合わせ場所に行って、“もう関わらないでください”って言ってビンタして帰ってきたよ」

「こわ。なんでそんなことするん?」

「そうしたらさ、振ったの私のほうって周りから見られるでしょ?」

「こわ。なんでそんなことするん」


 ……相変わらず、この二人は仕事中もよくしゃべる。

 今は一ノ瀬と天使がバディを組んでいる。

 一ノ瀬が見習いだった頃は俺がバディだったが、まぁ、あいつもあいつで問題児だった。今でも田島先輩と一緒に、謝罪の同行ばっかりしていた記憶しかない。

 天使と組んでからは不思議とうまく回っているようだ。女の扱いは、女のほうが上手いということだろう。


 コン、コン、コン、コン──


 階段を駆け上がる足音が、編集部のフロアに近づいてくる。

 来たな、と全員が目で合図を交わした。


 ガチャァンッ!


 勢いよく扉が開き、本日の主役が一時間半遅れで登場する。


「ふーたーがーみー!!!」


 編集部中に轟く、田島先輩の怒号。


「すみませんしたぁーーー!!」


 ドアを開けるや否や、二神は呼吸をするような自然さで、その場にすべり込み土下座を決めた。流れるようなフォーム。もはや芸術だ。


「俺は何時に来いと言った? あぁ?」

「はい! 九時に来なさいと、おっしゃられました!」


 本来の集合時間は十時だ。

 遅刻を見越して、田島先輩はあえて一時間早い時間を伝えていた。結果、予定より一時間半遅れ。計画すら上回る遅延。ある意味すごい。


「なんでここまで遅れてくるんだ。バカなのか?」

「はい。おっしゃる通りです。馬鹿ですみません。殺してください」


 一ノ瀬は腹を抱えて笑い転げ、スマホを構えて撮影モード。

 その姿を見て、二神がビシッと指を差した。


「おい! 一ノ瀬! お前マジで許さないからな!」

「遅刻しておいて何を言ってる。許さないのはこっちだ、バカ野郎」

「はい、すみませんでしたーー! ごめんなさーーーい! こんちくしょー!」


 その後三十分ほど、二神は公開土下座ショーを続けることになり、田島先輩の罵声と一ノ瀬の笑い声、天使のほっこり笑顔が混じり合う。

 ──これが、俺たちプルゴンサイエンス編集部の日常だ。

 毎日が騒がしくて、落ち着かない。だからこそ、外に取材に出ているほうが、まだ静かに感じるのかもしれない。


 ***


「体の傷は、もう治ったのか」

「ほとんど治りましたよー! 私、なんか新陳代謝すごいみたいで!」


「そうか。それじゃあ本題に入るぞ。

 《狂乱のプルゴン》の詳細を、映像と二神の証言から洗い出して、何者なのか推測する」


「はい!」


 編集部の空気が、一気に締まる。

 知性を持つプルゴン──それも、人間に敵意を向け、実際に襲撃まで行った個体。

 日本では前例のない事件。その“真相”に、俺たちが一歩でも近づけるかもしれないのだ。


「その前に、みんなに報告がある」


 田島先輩が、わざとらしく咳払いをした。


「今回の件は、確かに二神の手柄だ。……が、プルゴン編集部ライセンスを持たない二神が、勝手に単独取材を行った形になっている。これに関してプルゴン協会から、上に“()()()()”が入った」


「……え?」


「今回は、一ノ瀬が現場にいたおかげで、“正式な担当は一ノ瀬で、二神はあくまで補助”という形で報告しておいた。

 それと、二神の勤怠状況を部長に事細かく提出した結果──今月いっぱい、警戒処分。給与減給が決定した。以上。みんな、拍手」


 俺たちは、何の迷いもなく、盛大な拍手を送った。


「えぇぇぇぇ!? それはないですよー!! ……なんで拍手してんだよ! おい! ……おい、拍手やめんかぁ!」


「なんで私が、みんなのために手柄持ってきたのに、こんな仕打ちになるんですかー!」


「まぁ、お前のせいじゃね?」

「ですね。俺もこの対応は、正しいと思います」


 俺と一ノ瀬は、心からの賛同を送る。

「最低よ、あんたら……。もぉ〜、天使ちゃん、この編集部の男どもキラーイ」

 天使は「よしよし」と二神の頭をなでて、こちらを冷たい目でじっと見てくる。いや、その目やめてほしい。


「さて。二神、映像をこっちに送ってくれ」

「はーい……」


 テンションを地底まで落としながら、二神はゴーグルからデータを送信する。


「送りました。見てください」


 モニターには、二神が狂乱のプルゴンと会話している場面から映像が始まり、巨大なコンクリート片をかわして転がるところでぷつりと終わっていた。


「あ〜、いちばんいいとこで映像切れてんじゃん!」と一ノ瀬が叫ぶ。


 だが、それでも十分だった。

 画面の中のプルゴンは、明らかに“普通”ではなかった。

 言葉を理解し、自分の感情を整理して、論理立てて話す──そんなプルゴン、俺は初めて見た。


「確かに、知性のプルゴンの可能性が高いな」


 田島先輩は、いつもの冷静な声で分析を始める。


「二神。このプルゴンは、最初から人間に対して憎悪を向けていたのか?」

「です。そーんな感じなんだけど……でも、なんかこのプルゴンも“理由”があるんじゃないかなって、思ったんですよね〜」


「理由?」


「このプルゴンも、リスポーンしたてで、何も分かってないはずなんですよ。

 でも、前のリスポーンの“記憶だけ”が、かすかに残ってるみたいな……そんな焦りと怒りで、空回りしてる感じで」


 そう言ってから、二神は「あっ」と思い出したように付け足す。


「田島先輩、個性持ちのプルゴンって、基本“能力ひとつ”ですよね?」

「ああ。個性は原則ひとつだ」


「このプルゴン、火の玉でこのかわいい私を襲ってきたんですけど──」

「自分で言うな」

「でも、そのあと一メートル四方はあろうコンクリート塊を片手でぶん投げてきたんですよ。なんか“火”だけじゃなくて、身体能力も桁違いで」


「なるほどな。基本的に能力が二つってことはあり得ない。だが、教育次第で身体能力を底上げすることはできる。プルゴンファイトみたいにな。ただ、それは“無個性”のプルゴンの話だ」


「ですよね〜」


 無個性プルゴンは個性を持たない代わりに、人間の指示を理解しやすい。そのぶん教育しやすく、社会での運用にも向いている。

 個性持ちは、もともとの身体性能が高い個体もいるが、基本的には“能力”と“筋力”は別物だ。筋力はトレーニングで底上げするのが基本。


 今回の個体は──リスポーンしたばかりのはずなのに、燃える火球と、バカみたいな怪力を併せ持っている。しかも、明らかな知性持ち。


 常識から、完全にはみ出している。


「なぁ二神。このプルゴン、ティーファのことを知っていたのか? 動画を見ると、“なぜティーファがここに”って口走っているように見えるが」


「ん〜。普通のプルゴンも、ティーファは“なんとなく”知ってる感じですよね?」


「そうなんだが……この言い方は、ティーファと何か“個人的な関係”があるようにも聞こえる」


「うーん……。そこまではよく分かんなかったなぁ〜。そのとき私、死ぬほど焦ってましたし」


「それより、この動画のあとの現場が、すごかったんですよ!」


 一ノ瀬が身を乗り出し、目を輝かせる。


「なぁ、リンリン!」


 同意を求められた二神は、まだ一ノ瀬に怒っているらしく、露骨にそっぽを向いた。


「……あんたマジで、あとで覚えときなさいよ」

「何、まだ怒ってんの(笑)」


「まぁ、それは置いといてだ」

 一ノ瀬は話の主導権を奪い取り、そのまま続ける。


「このあと、もっとヤバいプルゴンが出てきたんすよ。急に!

 そいつが《狂乱のプルゴン》を一瞬で黙らせたんですけど、そのプルゴンが軽く触った“無個性プルゴン”が、一体だけリスポーンみたいに“ふっ”て消えたんす!」


「……プルゴンが、プルゴンに触れて消えた?」


「そうなんす! で、そのあと近くにいたプルゴンが二体いたんですけど、そいつらは消えたプルゴンのことを覚えてない。

 でも、あの《狂乱のプルゴン》だけが、“さっきまでそこにいた”って覚えてるんすよ!」


 それは──リスポーン理論と真っ向から矛盾する現象だ。


「つまり、通常のリスポーンでは、消えたプルゴンの記憶は“全プルゴンのネットワークから抹消”される。……が、今回だけは《狂乱のプルゴン》だけが、その消失を記憶していた、と」


 田島先輩が、問題点を整理してくれる。


「そんで、そのあとにぃ〜!」


 一ノ瀬がさらに話を続けようとして──


「ちょっと、それ私が言おうとしてたのに!」

 二神が割って入り、言葉を重ねた。


「狂乱のプルゴンが、そのよく分からないプルゴンにコンクリート片を投げつけたんですけど、そのプルゴンは手のひらを前に出して──触れた瞬間、そのコンクリートが“砂”になっちゃったんです!」


「砂に?」


「はい、サァーーって。砂時計みたいに。

 で、気がついたら、そのプルゴンは《狂乱のプルゴン》の目の前にいて、頭をなでおろしてたんです。狂乱のプルゴンは白目むいてビクビクっとなって、我に返ったみたいに焦って逃げて行ったんです」


「その異質なプルゴンは?」


「一瞬でいなくなりました。そのタイミングでプルゴン協会の人たちが来たんですけど、その人たちも“そんなプルゴンいなかった”って言うんです。

 ほかに見てた人たちも、み~んな口を揃えて、“見てない”って。

 私といっちー、何回も説明したのに、“誤認だろ”って片づけられて。

 ニュースも《狂乱のプルゴン》の話しか報道してないんですよ! むかつきません? プルゴン協会来るのも遅かったし!」


 狂乱のプルゴンもじゅうぶん謎だが、そのあとに現れた“異質のプルゴン”は、それに輪をかけておかしい。


「ねぇ、リンリン。ちょっと聞いていい?」

 沈黙していた天使が、ふと口を開く。


「そのプルゴンも、知性のあるプルゴンに見えなかった?」

「ん〜。そのプルゴン、何もしゃべらなかったんだよね〜」


「そっかぁ。でもさ、その行動、なんか《狂乱のプルゴン》のことを“知っていて”出てきたって感じがするんだよね〜。

 あの二人の間に何か関係があって、その関係性を私たち人間に知られたくなかった、とか」


 田島先輩が、その意見に乗っかる。


「それで、そのプルゴンが何かしらの個性を使って、周囲に“誤認”を引き起こした……。あり得るな」


「それにさ〜、プルゴン協会、対応遅すぎない? そこも引っかかるんだよね〜」


「メディア向けの回答だと、“通報が同時多発して、場所の特定に時間がかかった”って言ってましたけどね」と一ノ瀬。


 現場にいた彼にとっては、到底納得のいく説明ではなかったのだろう。あのときも、協会の担当者を捕まえて、ずいぶん噛みついていた。


「とりあえずだ」

 田島先輩が、話をまとめにかかる。


「今回の事件で分かったことは、どれも重要だ。狂乱のプルゴンは、知性を持つ新たな個体である可能性が極めて高い。さらに、その周囲に“異質な別の知性プルゴン”が介入している節もある。二人とも、よくやったよ。相当な収穫だ。この映像は、研究機関のほうにも一部提供して解析してもらう。俺たちは俺たちで整理して、記事に落とし込む。編集は天使、頼む。俺はこの件を長谷川先生に投げて、見解を仰いでくる。一ノ瀬は俺と同行。渡と二神は映像のさらに細かい分析を頼む」


「了解です!」


 全員が声を揃える。


「この事件は、まだ“未解決”であることを忘れるな。また同じ個体が現れるかもしれないし、別の場所で類似事件が起こる可能性もある。

 取材中も、常にアンテナを張っておけ。以上」


 そう言い終えると、二神が何かを決意したように顔を上げた。


「田島先輩! 一ノ瀬と私、交代してください!」


「お前は映像分析でいい。病み上がりだろ」


「私が一番、この事件の現場を知ってます! それに、大学にもよく行ってるので、施設も詳しいです!」


「映像はだいたい持っているし、事情も説明できる。俺も大学には何度も行ってる。問題ない」


「でぇもぉ!」


 どうしても同行したいらしく、二神は机にしがみつく勢いで食い下がる。


「俺は別にどっちでもいいっすけど〜。

 あと、長谷川先生の研究室、入りたいってずっと言ってたし。紳士な俺は、譲ってあげてもいいっすよ?」


「お前の何が紳士だよ!」


「……まぁいい。じゃあ二神、ついてこい」


「やった!」


「それじゃあみんな、頼んだぞ」


 田島先輩は、さっさと資料を抱えて部屋を出ていく。

 二神は「まってぇー!」とバタバタ準備を整え、そのあとを全力で追いかけていった。


 ──事務所内の騒音レベルが、二段階ほど下がる。


「さて、俺たちも映像の解析を進めるか」

「そうっすね〜」


 作業を始めようとしたところで、ふと一つ思い出したことがあった。


「そういえば、一ノ瀬。二神になんかしたのか?」


 一ノ瀬は待ってましたと言わんばかりの顔で、にやりと笑う。


「聞くっすか?」


 嫌な予感がした。


X作りました!続きが居たい方はフォローしていただいて通知確認できるのでお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ