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プルゴンとかいう生命体が謎すぎる  作者: 黒弧かずちか
1章 プルゴン開示編
7/8

狂乱のプルゴン襲撃‼

「で? 一ノ瀬、状況を整理してくれ」


 田島先輩は、スマホを耳に当てたまま、新大阪駅のリニア改札へ向かって人混みをかき分けていく。

 俺はそのすぐ後ろをついていく。


「今、〇〇駅で“狂乱のプルゴン”にリンリンが遭遇して、その後を追ってたみたいなんすよ。

 で、なんかあって通話切れちゃって。だから俺も今、そっち向かってるとこっす」


 スピーカーモードに切り替えられたスマホから、一ノ瀬の声が広がる。


 ――狂乱のプルゴン。

 プルゴンが狂う? そんな話、聞いたことがない。


「なんかさー、今暴れてるプルゴン、めちゃくちゃ“自我”あるらしくて。

 リンリン、 多分“知性のプルゴン”じゃね?って言っててさ」


 ティーファ以外にも、知性持ちプルゴンがいる――?

 プルゴン学の本では、「確認例は極めて少ない」としか書かれていなかったはずだ。


「……知性のプルゴンである可能性は高いな。

 この情報は絶対モノにする。昨日みたいに台無しにはできんぞ。一ノ瀬、現場着いたらすぐ連絡しろ」


『了解、承知のスケ! んじゃまた!』


 通話が切れた。


「敬語って概念、いつ覚えるんですかね、あいつ」


「俺も同じこと考えてたわ」


 先輩が苦笑する。


「とりあえず、〇〇駅に向かうぞ」


「今の話をまとめると――知性のあるプルゴンが突然出現して暴れてる。

 しかも、人間に“憎悪”を向けてる、って感じですか?」


「ああ。何人か怪我人も出ているらしい。

 ……にしては、プルゴン協会の対応が遅すぎる。いつもなら、五分以内に駆けつけるはずだが」


 確かに。

 俺の家に個性持ちプルゴンがリスポーンしたときも、回収までは一瞬だった。


「それと、知性のプルゴンって、ティーファ以外にも存在してるんです?」


「ああ。情報は少ないが、“いくつか”存在が確認されているとされている。

 長谷川教授の専門分野だ。あとで今回の件も連絡しておかんとな」


「やっぱり、繋がりあるんですね、長谷川教授と」


「まあな。仕事で何度か取材させてもらってからの縁だ。

 あの人は、本当にプルゴンに精通してる。話してると、こっちの常識を全部ひっくり返してくる」


 俺たちはリニアの改札を抜け、東京行きの乗り場近くの休憩スペースでドリンクを買い、発車を待つ。

 先輩はスマホを見て、ニヤリと笑った。


「ほら見ろ、さっきの二十九番系、優勝だ」


「マジですか。どんくらい増えたんすか?」


「十八万」


「え、いくら賭けてたんですか……」


「こういうのもな、本気でやらないと面白くない」


 茶化してるようで、妙に本質を突いてくる背中だ。


「先輩、ティーファと知性プルゴンって、やっぱ関係あるんですか?」


「大いにある、と考えられてる」


 さっきまでの軽い顔つきから一転、先輩の表情が引き締まる。


「ティーファは、“始祖のプルゴン”じゃないかと言われている。仮説だがな。

 なぜティーファと呼ばれるか? プルゴンたちがそう呼んでいるからだ」


 先輩は、少しだけ目線を天井に向けてから続きを話す。


「プルゴンのネットワークは、一本の“ゼロポイント”で管理されている――という説がある。

 リスポーン、十三年ルール、行動の同期……そういった不可思議な現象は、全部ティーファがコントロールしている、と」


「ゼロポイント……コントロール」


「そう呼ぶ研究者もいる。

 で、そのティーファと“まともに会話できる”プルゴンを、『知性のプルゴン』と定義している」


「つまり、ティーファが一方的に命令を下すんじゃなく、“会話が成立する”相手?」


「そう。ティーファが、情報管理や調整用に、“ある程度頭の回るプルゴン”を意図的に生成しているんじゃないか――という説だ。

 それが、世界に九体ほど確認されている“知性のプルゴン”」


「九体だけ……」


「正確には、“そう見える個体が報告されているだけ”だ。

 細かい情報はほとんど残っていない。長谷川教授クラスが、ようやっと断片を掴んでいる程度だな」


 なるほど。

 その一体が、今から俺たちが向かう街で、暴れているかもしれない――。


「でも、知性のプルゴンって、人間に敵意を向けたりするんですか?」


「今までの記録では、“まずありえない”とされてる。

 知性はあっても、基本的な性質はほかのプルゴンと同じ。

 人間には、半ば友好的で、温厚だ」


「じゃあ、今回の事件は――」


「前代未聞だ。

 だからこそ、記事としても、研究としても、とんでもなく大きい」


 ちょうどそのとき、リニアがホームに滑り込んできた。

 俺たちは顔を見合わせ、小さく頷き合う。


「行くぞ、渡。二神が、何かとんでもないものを見てるかもしれん」


 ***


「おーいプルゴーン! 私たちのことが憎いなら、その理由、私に教えなさーい!」


 勢いに任せて、私は再び狂乱のプルゴンの前に飛び出した。

 正直、膝は少し震えている。


 でも――怖いからって、黙って見てるだけの記者にはなりたくない。


「貴様ら人間こそ、この状況を説明してみろ」


「もともとプルゴンって、こういう生き物なんですぅ〜!

 ティーファ以外、話通じないのよーだ!」


 逃げ腰全開の軽口で返すと、狂乱のプルゴンの瞳がほんの一瞬だけ揺れた。


「ティーファ……? なぜ、その名をここで出す……」


「知りたければ、私を捕まえてみなさいよーだ!」


 そう宣言して、私は背を向けて全力で走り出した。

 狙いは駅前の飲食店街――プルゴンも人もそこそこいるエリアだ。


「プルゴンー! ついてきてー! セロリあげるからー!!」


「セロリ!? セロリくれるのぉー?」


 キラキラした目で、普通のプルゴンがわらわらとこちらに向かってくる。

 その後ろを、怒り狂ったプルゴンが追いかけてくる。


「どいてどいてー! みんな隠れてー!」


 狭い路地を抜ける間にも、何人もの人とすれ違う。

 私と、私を追う狂乱のプルゴンを見て、みんな一斉に店内やビルの影へと飛び込んでいく。

 状況を理解して避難行動を取れているあたり、まだこの街は運がいい。


 後ろを振り返った瞬間――視界いっぱいに炎の球が迫ってきた。


「喧嘩よくなぁ〜い!!」


 またもや、さっきのキラキラプルゴンが飛び出してきて、火球を身体で受け止める。

 爆音。爆風。砂煙。

 熱風が頬を叩き、視界が一瞬真っ白になる。


「ありがとープルゴン! 引き続き私を守ってねー!」


 キラキラプルゴンは、ニコッと笑って両手を上げる。可愛い。

 ――可愛いけど、今はそれどころじゃない。


「どいてくれ」


 狂乱のプルゴンが、正拳突きの構えを取る。

 ぞわっと、悪寒が背中を走った。


 次の瞬間、キラキラプルゴンの身体が、ありえない速度で吹き飛んだ。

 轟音と共に爆風が押し寄せ、私はまたしても地面を転がる。

 視界の端で、突き当たりの建物の壁が粉々になるのが見えた。


「いったぁ……」


 膝と肘は擦り傷だらけ。

 顔を上げると、そこには狂乱のプルゴンが立っていた。

 小さな手が、私の首をがっしりと掴む。


「私たちを、馬鹿にするのもほどほどにしろ、人間」


 片手で私を持ち上げながら、もう片方の手の中で炎の球を生成し始める。

 喉が締まり、息がうまく入らない。


「喧嘩よくなぁ〜い!!」


 どこからともなく、別のプルゴンが飛び蹴りをかまし、狂乱のプルゴンの横顔に命中。

 また別のプルゴンが、生成された火球を腕ごと丸呑みするように飲み込む。

 さらにもう一体が、私の首を掴む腕にしがみつき、その力を弱めてくれる。


 プルゴンたちが、怒り狂う同胞を必死で止めようとしている。


 私は地面に落とされ、咳き込みながらも、再び走り出した。

 突き当たりまで全力疾走。息は荒く、肺が焼けるようだ。


 さっき吹き飛ばされたキラキラプルゴンは、飲食店の店内に突っ込んだらしく、店の壁ごと崩壊していた。

 まだ営業時間前でよかった、と心底思う。


 突き当たりには、右は商業地区へ続く大きな橋、左は住宅街と線路沿いの小道。

 私は一瞬だけ迷って、右――橋の方へ走り出した。


「プルゴンが多ければ多いほど、こっちが有利!」


 人混みの中に狂乱のプルゴンを引きずり出せば、プルゴンたちが必ず止めに入る。

 その性格を、今だけは利用させてもらう。


「はぁ……はぁ……もー! 早く来なさいよ、プルゴン協会ーー!!」


 全然来ないプルゴン協会に、思わず八つ当たりで叫ぶ。


 橋の向こうには、数匹のプルゴンがうろうろしているのが見えた。


「プルゴーン! こっち来てー! 助けてー!!」


 川の向こうにいたプルゴンたちが、私の声に反応して両手をバタバタさせながらぺこぺこ走ってくる。

 私も全力で橋に向かって走る――そのとき。


 頭上に、影。


(え……?)


 地面に落ちた影が、瞬く間に大きくなっていく。

 反射的に顔を上げると、巨大なコンクリートブロックが、真上から落ちてきていた。


 考える暇もなかった。

 私は横に全力で滑り込み、ヘッドスライディングのように身体を投げ出す。


 ドガァンッ!!


 轟音と共に、コンクリート塊が地面に激突し、橋の入り口を塞ぐ形で横たわる。

 全身がアスファルトで擦れて、肘から膝までズル剥けだ。


「いったぁ〜……」


 じんじんとした痛みが神経を刺激する。

 息を整える暇もなく、背後から声がした。


「もう、逃げ切れないぞ、人間」


 狂乱のプルゴンが、跳躍。

 信じられない高さまで跳び上がり、拳を振り上げてこちらに落ちてくる。


「もう――私に近寄らないで!!」


 思わず叫んだ、その瞬間。


 狂乱のプルゴンの拳が、私の目と鼻の先――爪一枚分の距離で、ぴたりと止まった。


「……なんだ?」


 狂乱のプルゴンが、自分の拳を不思議そうに見つめる。


「何してんだよ、お前は!」


 橋の向こう側から、誰かがブロックをひょいと飛び越えてきた。

 赤いパーカー、だぼだぼのズボン、赤い髪。耳にはピアスがずらり。


「くらえ! プルゴンハンマー!!」


 真っ白な小さなハンマーを握りしめ、その人物――一ノ瀬蓮は、狂乱のプルゴンにフルスイングをかます。

 狂乱のプルゴンは腕でガードしようとするが、その小さなハンマーの一撃を受けた瞬間、30メートルほど吹き飛び、建物の壁に激突した。


 壁は音を立てて崩れ、埃と破片が舞う。


「大丈夫? リンリン」


 目の前で手を差し伸べてくるのは、一ノ瀬蓮。

 見た目はチャラチャラした街の兄ちゃんだが、根は意外とちゃんとしている。……はずだ。


「ナイスタイミングじゃない! 早かったじゃん!」


「GPS見てたら、どんどんリンリンのほうが俺に近づいてきてさ。

 じゃあ先回りしたほうが楽かなって別ルート走ってたら、なんか追いかけっこ始めてるじゃん?

 『やっば! あいつ、また突っ込んでる』って思って、全力ダッシュよ。……お前、マジで何してんの?」


 崩れた建物の中から、再び狂乱のプルゴンが姿を現す。

 さっきよりも、明らかに怒りが濃くなっていた。


「邪魔をするな。二人まとめて葬ってやる」


 炎の揺らめきのような空気が、やつの身体の周りにまとわりつく。


 その瞬間――

 私たちと狂乱のプルゴンの間の空間が、ぐにゃりと歪んだ。


 見えない“門”が開いたように、そこから一体のプルゴンが姿を現す。

 見た目はどこにでもいるネズミ色のプルゴン。

 だけど、全身から漂う“異質さ”が違った。


 静かすぎる気配。

 焦点の合わないようで、すべてを見透かしているような黒い瞳。


 異質のプルゴンは、きょろきょろと周りを見渡したあと、ゆっくりと狂乱のプルゴンのほうへ歩き出した。


「同胞よ。すまないが、私の邪魔をしないでくれ」


 狂乱のプルゴンが声をかける。

 しかし異質プルゴンは、何も答えない。ただ無言で歩み寄る。


「ナイスタイミングよ、一ッチー! 思ったより早かったじゃない!」


「GPS見てたら、リンリンがどんどん“事件の中心”に突っ込んでいくからさ。

 いや〜、マジで呆れたわ。……で、あの異様なやつ、何?」


「知らない。けど、あきらかに普通じゃない」


 その間にも、キラキラした目のプルゴンたちが、争いを止めようと間に入ろうとする。

 彼らは争いが大嫌いだ。“喧嘩よくない派”が、ぞろぞろと前に出ていく。


 異質プルゴンは、そのうちの一匹に近づくと、ぽん、と優しく頭に手を置いた。

 次の瞬間、そのプルゴンは――音もなく、跡形もなく消えた。


「……え?」


 そこにいたはずのキラキラプルゴンは一瞬で消え、残ったプルゴンたちは何事もなかったかのようにきょろきょろと周りを見回す。


「なにしてるのぉー?」


 いつも通りの声が、空気に溶ける。


「今、何をした? そこの同胞はどうした?」


 狂乱のプルゴンが、怒りではなく“戸惑い”を滲ませた声で異質プルゴンに問いかける。

 その言葉に、私と一ノ瀬は同時にゾクリとした。


「ねぇ……今の、見た?」


「ああ……。たぶん、今の消え方――十三年ルールと同じだ」


 狂乱のプルゴンは足元のコンクリート片を拾い上げ、全力で異質プルゴンへ投げつける。

 異質プルゴンは、正面に手のひらを向けるだけ。


 コンクリート片が手に触れた瞬間、それは砂のように粉々になり、「サァー」と砂時計みたいに地面にこぼれ落ちた。


 狂乱のプルゴンが驚愕する間もなく、異質プルゴンは一瞬で距離を詰め、頭にそっと手を置く。

 そのまま、ゆっくり撫でるように滑らせ、一歩後ずさった。


 狂乱のプルゴンの身体が、一瞬ビクッと痙攣する。

 白目を剥きかけて、すぐに戻る。


「……私に、何をした?」


 狂乱のプルゴンは、まるで見えない何かから逃れるように数歩後ずさる。

 しかし異質プルゴンは、一言も発せず、その場に静かに立っているだけだ。


 次に瞬きしたときには、その姿はもうどこにもなかった。


「プルゴン協会です! そこから動かないでください!!」


 遅ればせながら、ようやくプルゴン協会の救助隊が到着した。

 背中に「PAA」(Purgon Assistance Association)の文字が入った制服を着た隊員たちが、盾とハンマーを構えて走ってくる。


「やっと来たー! あのプルゴンでーす!!」


 私は全力で狂乱のプルゴンを指さす。


 救助員たちはプルゴン化合金属で作られた抑制盾を構え、片手にはプルゴンハンマーを握っている。

 プルゴンと同等の性質を持つこの金属だけが、プルゴンの攻撃を受け止め、彼らにダメージを与えられる唯一の物質だ。


「抵抗するな。お前の攻撃は、我々には通じない」


 救助員がゆっくりと狂乱のプルゴンに近づく。


 狂乱のプルゴンは、一ノ瀬の持つハンマーを一瞥し、さらに後ずさる。

 そして、ちらりとこちら――私を見た。


「必ず、近いうちにまた貴様たちに会いに行く。そのときが、貴様らの“最後”だと思え」


 そう言い残すと、狂乱のプルゴンは地面に両手を叩きつけ、巨大な炎の球を生み出して爆発させる。

 炎と煙が視界を覆い――その中から、奴の気配は消えていた。


 のちにこの一連の出来事は、《狂乱のプルゴン襲撃事件》と呼ばれることになる。




――――――――――――――――




 かなり痛手を負ってしまった。回復まで時間がかかる。しばらく身を隠すとしよう。

 「けがしてるのぉー?大丈夫ー?」

 「問題ない。同じプルゴンだ、状況が違えとまた仲よくしよう。よろしくな。名は何というのだ?」

 「わからなーい」

 「本当に何もわからないのだな。まぁ私もよくわかっていない。なんでここにいて仲間がこういう状況なのか混乱しているのだよ。」

 先ほどの一件で腕をかなりやってしまった。再生にはしばらく時間がかかりそうだ。とりあえず逃げきれてよかった。かなり遠くへ逃げてきた。同胞の助けもあって、だれも利用していない廃墟の工場跡地へ身を隠している。なんだろう。全くお腹がすかないな。気疲れでもしているのだろうか、少し休んで食糧調達でもしよう。

 「きみはここでなにをしているんだい?」

 不意に後ろから声をかけられた。警戒を解いていない私にこんなに気配なく近寄れるとは何者だ?間合いをあけて後ずさる。相手を見ると真っ黒な露出を隠したフードをはおり身を隠して顔にはペストマスクをつけている何者かが立っている。後ろにもフードで身を隠しペストマスクのようなものををかぶった小さい何かが複数体が同じように身を隠しマスクの先頭の何者かの後ろからこちらを見ている。刹那の間に施行を巡らせて明らかに危険な状況と判断し緊張が走る

「何者だ!」

「そう身構えないでくれ。君と敵対するつもりもない。さっきの○○駅での騒動を見ていたんでね、気になって君の跡を追ってきたのだよ。」

 そういって謎のフードを被った者は私に話しかけてくる。


――――――――――――――――



 「ねえ、きみ。ティーファって知ってる?」

駅名とか場面は手直しするかも?いったん投稿

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