メンタルクリニックに受診しても、なぜまだ窮地に立たされたか
次の日、健は運転して、静香と亮をクリニックまで送りました。亮は抵抗もしなかった、ただ無言でついて行きました。もともと元気満々の子なのに、今は髪の毛がぼさぼさで、服も健の古い迷彩のダウンジャケットを着ていました。静香の心がとても痛かったです。クリニックの前に停車して、静香と亮は下りました。健はハンドルを握って言いました「後で迎えに来ます。」
「あなた、一緒に行かないですか?」静香はびっくりして聞きました。
「行かない、あなた二人で行って」健は言いました。彼は自分の息子が精神疾患になるのがとても恥ずかしいと考えるようで、静香も無理にはしませんでした。
「じゃ、あとで電話しますね」静香言って、亮と一緒にエレベーターを乗りました。
クリニックは9階にありました。エレベーターを出て、すぐたくさんの人が見えました。皆さんは受診を待っていました、あまり人の多さで静香がびっくりしました。それに若い人もたくさんいました。表面から見るとみんな普通に見えましたが、特に変な様子のひとは見当たりませんでした。むしろ亮の古い迷彩のダウンジャケットは一番目立ちました。ただ皆さんは大分慣れた様子で、亮を見ても驚きはしなかったです。静香と亮は席に腰を下ろして、順番を待ちました。予約した上初診ですので、すぐ呼ばれました。静香と亮は一緒に診察室に入りました。
大きいテーブルの後ろに年寄りの先生が座っていました。静香はドアを閉めて、一礼をしました。先生は二人をひと見して、「どうぞ、座って」と言いました。静香と亮は一礼して正面の椅子に座りました。普通の問診でした。こんな様子はいつからとか、夜の睡眠はどうか、心あたりの原因はありますかとか、亮はずっと頭が下がったまま一言も言わなかったです、すべて静香が答えていました。ただ静香も分かりませんでした、彼女は自分の息子にこうなったのは全然気づきませんでした。「家には何が原因とか考えられません、多分学校のことが原因でした」静香はそう答えました。彼女の心は冷たくなりました。自分の息子はこんな重い病気になるのに、医者の自分は全然知りませんでした。
「うつ病です」先生は表情なく言いました。
「はい」
「入院はどうですか?」先生は言いました。
「入院?」 静香は亮に聞きました「亮、入院はどう?」
亮は首を左右に振りました、静香は亮の気持ちが分かります、入院すると病歴が残り、後の勉強、仕事に大きい支障が出るのは分かっています。
「先生、入院しないで薬で治療してもいいですか?」 静香は言いました。
先生すこし考えました、「じゃ、内服薬で治療します」
「ありがとうございます」静香は深く頭を下げて、言いました。
二人は薬を貰って、薬局を出た時、健も迎えに来ました。三人は一緒に帰りました。
「どうですか?」健は聞きました。
「とりあえず薬を飲みます、効果あるかどうか見てみます」静香答えました「先生はまた眠剤も出しました、亮、今夜から薬を飲みましょう。」
薬は結構効きました、1か月後亮の状態はよくなり、話が多くなりました、眠剤の作用もあり、夜間の睡眠もよくなりました。静香はそばで亮の表情を伺い、心の中にホッとしました。こんな状態は続くと亮は回復に向かうと希望を抱きました。
時間は2020年の5月になりました。コロナのパンデミックは世界中に広まっていました。日本も日に日に感染者が増えて、政府は緊急事態宣言を出しました。亮所在の大学も対面授業を辞めて、校舎の出入りを禁止して、オンライン授業が始まりました。亮としては悪いことではありませんでした。うつ病を持っている亮としては、自宅にいるのはむしろ心が楽になったでしょう。でも、重い学業の圧力は山のように亮の心を圧迫していました。亮の睡眠は悪くなり、時々ボーとして、やがて目の中の光がだんだん暗くなっていました。亮は頑張って本を読んでいました、でも静香は気づきました、時々亮は1時間本を読んでいるけど、実は1ページの本すら進めなかったです。静香はとても心配になりました。こんな状態続くと亮は再度うつになります。
その頃、偶然大学から授業のアンケートが届けました。亮は無視していましたが、静香は結構気になりました。亮の状態から見ると、彼のうつ病の原因は学業と関係していると静香は推測できました。亮の専門は数学科でした。これは健が選んでいた専攻でした。入学時、実は静香は少し心配していました。なぜなら、小さい頃から亮は数学が得意にはどうしても見えませんでした。もちろん苦手ではないですけど、数学科を選ぶのは、亮にとって大きいなプレッシャーでした。でも推薦でこの大学に入学したいなら、数学科を選ぶしかなかったです。亮がうつになり、静香も後悔しました、だから彼女は転科できないかと考えていました。
亮はアンケートの用紙を無造作でテーブルの上に置きました。静香は亮が知らないうちに手に入れました。それで自分でアンケートを出しました。「今は4年目ですけど、転科することができませんか?」下の署名は田中亮の母 陳静香。封筒の中に自分の名刺も1枚入れました。それで、静香は不安いっぱいでこの手紙を出しました。




