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世界平和

早朝、総理大臣執務室に一本の電話がかかる。元帥からだ。

「捕虜になっていた鷹山元総理が袋詰めのミンチになって駐屯地に届けられました」

「そうか。では、すぐに竜の国と停戦条約を結んでくれ」

電話を切る。あのクズはきっと苦しんで死んだはずだ。人類史上最も苦しい殺されかたをしたに違いない。これから先もその記録は破られないだろう。竜の国の大統領は残虐と勘違いされているが実はそうではない。戦場の兵士を殲滅するのは戦力を減らすための合理的な手段として行っているだけで命をもてあそんだりはしない。しかし、とらえた敵軍の悪党に対しては苛烈な拷問を行い被害者の仇を討つことに情熱を燃やしている。戦争も我が国が侵攻したのがはじまりでこの300年竜の国がどこかの国を攻めたことはない。内政も安定していて国民を虐殺したりもしていない。大統領は内心平和を愛している可能性が高いので停戦条約に合意してくれるはずだ。

1ヶ月が100年にも感じる日々だった。オレは手を組んで深く息を吐く。

鷹山総理と入れ替わった日から毎日厳しい筋トレにはげんだ。枯れ木のような肉体だったが鍛えればそれなりに動けるようになる。格闘訓練も行った。相手がいないのでシャドーだ。老人ホームの付近の公園で朝から日が暮れるまで特訓した。ランニングやジグザグ走りも日課として行った。

オレが鷹山総理と入れ替わったことを介護士に話してもボケ老人の戯言として扱われた。鷹山総理は以前からボケたふりをして、こうなった時にオレの話を信じてもらえないように工作していたのだ。オレは脳移植手術を担当した医師の情報を入手した。新聞で事故死になっていたが殺されたのだとすぐにわかった。オレは医師の妻に会いに行った。妻の香織も脳外科医だと調べてわかったからだ。香織に真相を話すと最初は信じてもらえなかった。しかし、脳の形は人それぞれ違うから調べてくれとお願いした。脳の形がそれぞれ違うという知識は図書館の本で調べた。本など読まないオレだがこの時ばかりは脳について調べた。オレは健康診断で脳ドッグを受けておりそのデータが病院にあるのだ。元総理の権限でオレの脳ドックのデータ、ついでに鷹山総理の脳ドックのデータを入手して香織に渡した。調べた結果、たしかに入れ替わっていることが判明して香織はオレの話を信じてくれた。それから恋人の左京に連絡を取って老人ホームに呼び出した。

「鷹山元総理。お呼びでしょうか?」

入れ替わりの話を最初は信じてもらえなかったが2人しか知らない交際のきっかけや睦言むつごとの話をすると信じてくれた。

「鉄男殿は他人に男女の情事を漏らしたりする男ではない。下ネタも嫌いで硬派な男だ。最近の鉄男殿は様子がおかしいと思っていた。まるで別人のようだと。私はあなたのいうことを信じます」

そして脳外科医の香織と恋人の左京の協力を得て体を取り戻すことに成功した。

鷹山総理の飲んだすっぽんドリンクには睡眠薬が混ぜられていて左京は寝込んだ鷹山総理を自分の家に運ぶふりをして車に乗せて病院に向かった。特殊部隊の隊員に声をかけて警備兵の処刑にストップもかけてくれていた。

「鉄男殿の命令だ。警備兵の処刑は撤回。鷹山元総理は牢屋ではなく国病へ。鉄男殿は私の家に行きたいというので連れ帰る。警備は私がいるので大丈夫だ」

隊員達は敬礼して見送ってくれたそうだ。それから病院で待っていた香織が脳移植手術をしてオレは無事元の体に戻った。脳移植手術が終わった後、オレは元帥に命令して鷹山総理を前線に放り込んだ。

いろいろあったが、これからは世界平和に向けて活動していこうと思っている。他人の痛みを感じず他人の不幸を蜜の味ととらえる歪んだ人間が天下を取るのは戦乱という時代のせいだ。平時なら残虐性の強い人間は力を発揮できず凡庸な人生を送る。戦争では残虐であればあるほど重宝されて出世してしまう。サイコパス遺伝子の撲滅のためにも道徳的で平和な社会をオレは作っていく。そう強く心に誓う。オレの人生は今からがはじまりだ。


戦争の背後にはいつもお金持ちがいる。

自分は安全な場所にいながら他人に命を賭けて戦えと叫ぶ勇ましい人間を私は信用しない。

開戦を決意した政治家こそ真っ先に前線に行くべきなのだ。


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