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最強の兵士

オレはみんなから最強の兵士と呼ばれていた。年齢は20歳名前は鉄男だ。我が国で姓を持つのは上流階級だけでオレにはない。ただの鉄男だ。出世して姓名をくれるという話もあったが断った。鉄男でいい。気に入ってる。農村の出身だが両親は戦禍に巻き込まれて亡くなった。当時、6歳のオレは軍に少年兵としてスカウトされ厳しい訓練を受けあらゆる格闘技と兵器の扱いを習った。初めて戦場に立ったのも6歳の時だ。それ以来、ずっと戦争に参加している。オレの生まれた馬の国は周囲の国とずっと戦争状態だ。オレは戦場において死神と呼ばれ恐れられている。姿を見たものは生きて帰れない、というウワサが立っているのだ。しかし、実際はそんなことはない。白旗をあげた人間は殺さん。おもに前線に配置されることが多いが恐怖を感じたことはない。死ぬ時は死ぬからだ。家族はいない。軍人の恋人はいる。いつ死ぬかわからないので子供を作る気持ちはない。毎日毎日多くの敵兵を殺してきた。マシンガンを撃ちまくり塹壕に突入して弾が切れたらナイフで斬り殺す。突き殺す。ナイフがなければ素手で殺す。とにかく殺しまくった。何度も死にかけたが回復力が強いせいで死ねない。オレは鋼の肉体と脅威の生命力を持っていた。多くの国を侵略して我が国の領土にできたのもオレの大活躍のおかげだ。街で1人殺せば殺人犯だが戦場で100万人殺せば英雄だ。階級は大将だが、強すぎるので前線におかれて切込隊長として活躍している。お金に困ったことはない。家は国が大豪邸を用意してくれて執事やメイド、ガードマンも複数ついている。だが、けっきょく、オレが1番落ち着くのは戦場だ。半年ぶりに休暇を貰ったが、趣味のないオレは自宅で筋トレや射撃訓練をして過ごしていた。すきあらば一日中、体を鍛え人を殺すことを考えている。格闘技のトレーニングもかかしていない。敷地内に道場もありプロのコーチを毎日呼んで戦闘の勘が鈍らないようにしていた。いつものように筋トレにはげんでいると、スマホに電話がかかった。元帥からの電話だ。

「もしもし、鉄男です」

「鉄男くん。休暇中に悪いね。鷹山総理がきみに会いたがっている。勲章を授与したいそうだ」

「そうですか。わかりました。よろこんで拝受します」

日時を聞いて電話を切る。子供の頃から徹底的に上層部には逆らわないように教育されていた。馬の国は総理大臣制で総理が1番の権力者であり軍の実権も握っている。偉い人であり忠誠を誓うべきおかたであり命令には絶対従わなければならない。この場で死ねと言われれば死なないといけないのだ。けれど、実際に無意味に死ねと言われればオレは断る。洗脳教育を受けて死ねと言われて死ぬ軍人もいるが、オレはそこまでではなかった。約束の日に総理官邸に行くと、大ホールは多くの人でにぎわっていた。軍人だけでなく各界の著名人が入り乱れている。ごちそうや飲み物も用意されてまるでパーティ会場だ。奥のほうに車椅子に乗った白髪の老人がいた。横には恰幅のいい軍人が立っている。鷹山総理と元帥だ。総理はまるで枯れ木のようだった。御年96才。苛烈な性格で30才で総理になってからは軍事費を拡大し馬の国を軍事超大国に導いた独裁者だ。支配欲が強く独善的だが戦争に強いので国民人気は高い。反抗的な敵対勢力は1匹残らず粛清してきたので周囲にはイエスマンしかいない。出身は軍人ではなく官僚で陸軍の事務方を務めていたという。

 鷹山総理はオレの姿を見つけて顔をほころばせる。

「鉄男よ。そなたの活躍のおかげで我が国はさらに豊かになった。民の笑顔も増えた。そなたは我が国の宝じゃ」

「もったいなき言葉。光栄にございます」

オレはひざまづいて勲章を拝受した。さっそく軍服につける。軍服にはもうつけるところがないぐらい勲章であふれていた。その後は立っているだけでいろんな階級の人間が話しかけて来た。オレは寡黙な男で人と話すのは好まないが軍人の評判が悪くなるのは良くない。それなりにちゃんと受け答えをし笑顔まで見せてやった。戦場の話を嬉々として聞きたがるのは他人事であり映画の中の世界のようだからだろう。上流階級が戦地で汚泥にまみれることは生涯一度もないのだ。

1時間ほど経過した頃、ウェイターからワインをもらった。普段酒は飲まないが喉がかわいていたので飲み干した。慣れない酒のせいで急激に眠くなったので帰宅することにする。元帥に帰宅の意を告げると離宮の迎賓館に泊まるように指示された。国賓の宿泊施設だ。恐れ多いが元帥には逆らえない。鷹山総理の指示の可能性も高い。迎賓館の部屋は上品で快適だった。慣れない社交会に疲弊したオレはすぐに深い眠りについた。

朝、腰痛で目が覚める。腰痛などわずらってないのに不思議だ。首も痛い。寝違えたか。とにかく体が重くてだるい。体の節々が痛むのでゆっくり起き上がる。知らない場所なので混乱したが、自分がどこで寝ていたのか思い出した。迎賓館だ。いや、しかし、ここは迎賓館ではない。まったく見覚えのない部屋だ。誰かに話を聞かなければならない。ベッドから降りるもうまく立ち上がれなかった。なんとか立ち上がって手すりを使ってドアに近づく。ふと壁にかけられた鏡の中の自分と目が合う。

「なんだこれは」

オレはシワシワの顔をしたやせほそった白髪の老人に変貌へんぼうしていた。

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