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GAME2

前はさすがにアモンに任せて俺は後ろの憂いを…クピンを守るのが賢明だな。防具も売ってかたさ能力値も底、山賊の斧一発でたぶん致命傷だこの数とこの場じゃ下手に前に出て事故ることもあるからなー? うん、それがいい。


「カールあんたにわたしの発練まで任せるのなんかこわいんだけど!」


「ははははそりゃ言えてるが黙って練り上げてな。一発もまともにうててないくせにどの口がいってんだ、たらたら羊飼い女」


「たったたたたらたら羊飼いオンナぁ!?? はぁ!? もうどうなっても知らない! 一発でもくらったらあんたのせいだから! 逃げないでよね!」


そうこう後ろでごちゃごちゃと雑談に勤しんでいると、さっそくの予想通り遠方からみせた隙を突き危ないナイフが飛んできた。


「残念だがそれはないな──ほらね? かぁーんたんっ♡なんてなははは」


「あたしのナイフを弾いた!? 坊やだけじゃなくて坊やが!?」


次々に飛んできた悪くない精度の投げナイフをひん曲がった異色の武器で慣れたようにはたきおとしながら、次に女盗賊が殺気を放った瞬間に俺はボーンブーメランを景気良く投げつけた。


「いいとこの坊やだからな、そらよっ!」


投てきされたナイフはその強度とスケールでは骨太なブーメランの勢いを止められるわけはない、無駄なく攻撃のついでに敵の投げナイフの軌道を読み鉢合わせるように合わせ無力化。

女山賊頭が尻をあたためて座っていたしゃれた樽椅子にブーメランは突き刺さり、中身の紫果汁の酒が辺りに噴射した。


「カールそこどいてっ!! 練り上げた【アクアウルフ】あのちくちくムカつく女を追い立てろ!!!」


「もうどいてるってのはは!」


出たな羊飼いルーツのオリジナル魔法。全身水属性の牧羊犬(狼)が定めた獲物を追いかけつづけ噛みつかれるといてぇ魔法だ。


「なんだいそれはわざわざ濡れた犬なんて呼んで、田舎臭い無駄の多い魔法だねー!!」


「うっさいわね!! おばさん!!」


「おばさん!?? おい野郎ども、今すぐだれかその口悪いガキっ娘の口を塞ぎな!!」

(うざったい魔法ねぇ……寄ってたかっても止まらないタフな美剣士にあたしのナイフにもひるまない魔法師娘そして途中現れたあのぼんぼん坊やの見透かした気味の悪い目はなんだい……どうなってんのさこのぽっと出トリオは!! …読み違えたっていうのかい……フフ、久々にひりつく感じ興奮してきたじゃないかい!!)



「チッ──追われるのは趣味じゃないのよ、発破!!」


荒れる様相のアジトで、部下たちの股をするりとぬけてきた水狼に追われつづけていた女山賊頭は、【サラマンダーの怒り】と書かれた注意書きの張られた樽をみつけ蹴飛ばし床に転がした。


そして火属性のナイフを投げつけ刺し、発破させた。

しつこい水魔法ごと強引に何かの計画に使う予定であったアイテムを駆使しながら爆発に巻き込み、飛び付く水狼を四散させた。


女山賊頭がにやつきながらナイフを腰のナイフホルダーからひとつ取ろうとしたそのとき────


「なひゃっ!??」


地を這ってきた紫蛇が足元に巻き付き噛みついた。

それはしたたる葡萄酒をつかって練り上げられた、【スネークロープ】であった。

水狼に追わせている間に発練の集中を乱すような憂いのなくなったクピンが再度練り上げた初級魔法であり、犬と戯れるのに必死で注意散漫のお留守の山賊頭の足元にはよく効いた。

頭からすっころぶほどによく効いた。


「こんのッッこむす!!!────ナッ……ガッ…!??」


すっころんですぐさま起き上がろうとしたオリーブが見上げた穴だらけの青のみえる一瞬の上空、優雅に浮かんでいた白鳥が鋭く急襲し舞い降りた。


「さて、山賊ごっこはもう終わりかな。ぽっと出、追加キャラのオリーブさん」


「この手際…なにもの……フフ……」


賊頭を見下ろす茶髪の王子は爽やかなスマイルを、木床に刺さるくの字の白い首枷をハメられたオリーブは床に這いつくばりながら冷汗を垂れ流し…………その早すぎる決着に微笑いながら〝お手上げ〟するしかなかった。






抵抗の意思を削ぎ頭の女の無力化に成功し、残りの部下を倒すまでもなく自動的に白旗が上がると思ったが。

さいごの断末魔がやんだ……アモンは当然のようにむさくるしい男どもを全員残さず平らげていた。さすがバケモン能力値の太陽の勇者の子孫といったところか。

そして、そんなまさに今全てが終わったタイミングで────メイヂ国から同伴していた従者のメイド部隊がメイド長を先頭に遅ればせながら駆けつけてきて合流を果たした。


「アモン様、クピン様、無事ですか」


「あぁクロウさん、あはは無事だよ」

「余裕でぶじだし…」

「無事だぞ増援さんきゅー」


「カール様…?」


見慣れた俺の顔を見つけたメイド長はポーカーフェイスで驚いた様子だ。


「なんだ、俺の顔に何かついてるか?」


「いいえ、ただ突飛なことをされては多少…こちらも驚いてしまいます。はじめての長旅でしたのでまだ宿のほうで休まれているのかと」


「突飛か? 長旅…まぁなるほどな。それより何してたんだ? おかげで3人で片付けちまったぞ。少しばかりタイミングが悪かったな、そういや時間厳守を俺に言いつけるのはいつからかやめてたっけ? 調子でも悪いのかクロウ」


こいつはクロウ・フライハイト。

ファンブックによると名前は自由なカラスという意味で、凄腕メイドをしながら諸国を旅していたのだとか。カール王子直属のメイド部隊を纏める影のリーダー的存在で、主人と認めたものをその多彩なスキルで手助けする冷静沈着なまさにメイドの中のメイドだろう。

黒髪で背が高く戦闘能力も高く魔法も使える、序盤から頼りになるユニットであることは間違いねーな。

だがどうも王子への親愛度は微妙みてぇだなぁ?


「いえ山に急に濃い霧がかかり、共に山賊狩りへと赴いたはずがアモン様クピン様と途中視界不良ではぐれてしまったのです。それ以外の言い訳は立ちません、もう晴れてしまったようですが天候操作の魔法石でも敵にあったのでしょうか、ただの推測の域を出ませんが。同時に少数の賊どもに足止めをされていたようです」


「ははーんなるほど、一応良さげな言い訳は立ってんな。わかった、それは仕方がないな。災難だったな、じゃ後片付けを頼めるか」


「はい。承知いたしました。──クリーナーシュリンプ、お片づけのじかんです。かかりなさい」


〝クリーナーシュリンプ〟そう名付けられたメイド兵の中でも特別部隊の赤いメイド服たちがこの荒れた戦場の洗浄にとりかかった。まぁ野暮だが直接的に言ったらぶっ倒したまたはぶっ殺した敵の装備を剥いで使えそうなものを勝手に集めてくれる便利な部隊のことだ。





▼▼

▽▽





【話題①:カールはつよかった?】


山賊狩りの事後処理が一段落して、血なまぐさい現場から一転し酒臭くかおってきた街のバーへ。

ラウンドテーブルで対面する緑髪の姉弟がブラッドオレンジジュースを飲みながら、疲れ渇いた喉を甘苦酸っぱく癒し今日の出来事を語り合っていた。


「プハァ……にしてもカールどういうつもりかしら」


「どういうって?」


「どういうってアモンそりゃいきなりヤル気だすのおかしいでしょ、ぐーたらのアイツが」


「そうかなぁ? だってカールだし?」


「だってカールだからでしょ! それにアイツがあんなに…ぐぅぅ……つ、つよかったなんて珍しく? あ、あの一瞬だけはね! へんな武器で…イキって…」


「ん? カールはつよいよ」


「アモンの方が絶対つよいでしょー!! 嫌味じゃない?」


「あはは嫌味じゃないよ。だって子どものころのカールと僕はぼくが49勝50は」


「それはきいたから!! 散々きいたから!! カールが逃げたって話でしょ、どうせ負けそうになって!! ほっぽりだすクセあるんだからね、どうせ最初だけじゃない」


「え、だって20年後にまた勝負するやくそ」


「めちゃくちゃ先送りの子どもらしくない誤魔化しじゃない!! それに20年もアイツといっしょにいるつもりーー??」


「あははダメかな? こうして魔物狩りにカールに連れてってもらってるし、クピンも?」


「はぁダメでしょうに……名を上げるためについてってるだけなんだから」


「わかってるよクピン、〝カール・ロビンゾン第九王子〟のだろ? 他の王子王女にも誘われたけどつくなんて、やっぱカールと一緒の方が思う存分! おもしろい! だしな!」


「はぁ……だからそれが利用されてんのよぉ…。もうつかれたしらなぁーい」



何やら緑髪の美男子が席を立ち、持つ剣もなく様になるエアー素振りをして酒場で酔っ払いどもから拍手をされながら踊っている。

この人目を気にせず発動する舞で、闘技場に招待されたりどこぞの剣聖に絡まれるイベントが主人公補正で起こったりするんだが、見惚れるような動きをみせるそいつに絡んでいたのは遅れて来た俺だったようだ。


「よーーーーーーっ!!! アモンクピンなにしてんだー、まさか俺の今日の大活躍を尾ひれをつけて語ってたんじゃねーだろうな?」


「尾ひれつけまくるのはいつもあんたでしょカール!」


やはり抉るようなツッコミ、机上にだらっととけていたクピンは背筋をピンとし、俺を指差しながら叫んだ。


「あ、カール? そうそう話してたんだ。子どものころのチャンバラ勝負! あーーーそうだッ、さっきのたった今剣舞しながら考えてたんだけどカールは20年後って言ってたけどさ、2日後ってどうかな! 勝負のつづき!」


「なんだよガキのころの話かよ?? あぁいい…って!! お前なんで20年が2日後になんだよアモン!!!」


俺は思わず後ろからかぶさるように肩を組んで絡んでいた緑髪男からとびのき離れた。

とんでもないことを強制イベントが発生しそうな雰囲気で言い出したからだ。


「え? だってあのころから20年って言ってたからだいたいそれぐらいだろ?」


「ふざけんなテメェ!! ごほん……20年後は今も昔も20年後だ」


「?? カールそれじゃあいつまで待ってもヤレないぞ? 2日ははやかったかな? 間をとって2週間!」


「ちょっと待てや!! さすがに最低でも1年と2ヵ月は待て馬鹿野郎!! まだまだ序盤なんだぞ、この長旅は」


「2ヵ月かぁ? いいね! カール!!」


「よくねぇーーーー!! 1年を無視するな1年を!! ってその素振りをやめろーー!!!」


「まだまだ序盤なんだろ? なら俺も1年でもっとつよくなってカールに50勝!! はぁあ!!!」


「しれっと2ヵ月を消すな……! ってあ、クピンいたのか?」


「いたわよッッ!!!! ずっと!!!!(最初によんでたじゃないの馬鹿ール!!!)」


カール王子の髪をそよ風で揺らす、威勢のいい脳筋気味なアモン・シープルの掛け声に、俺は苦笑いするしかなかった。


アモンとクピンとカールやはりこのトリオは無視できない。GAME原魔勇の世界にひとりひとりが色濃く匂いはなち風を吹かす、思い出深いはじまりのユニットだ。









「アモン様山賊狩りブジお疲れ様です! カール王子も!」

「28人斬りですって! さすがアモン様! か、カール王子も!」

「アモン様ぁー仕事終わりに街中のドーナツ屋によりませんかー、あ…カール王子はドーナツとか庶民的なのはお嫌いでし…」


大人気男アモン・シープルに寄ってたかる女子たち。

ウエイトレス姿のこいつらはさっそく見知らぬ街のバーで仮働きをしている俺直属のメイド兵たちだ。

語尾に義務のようにカール王子を添えながらもアモンにアタックを続ける胆力と女子力はなかなかのものだろう。

うむ、まぁ予想はしていたが例のリザードナイフで刺された以前を普通にプレイしていたと仮定したらカール王子の親愛度は現在の戦力で約1名を除いて上がることはねぇだろうな……よし、ここはひとつ俺も親愛度を積極的に上げておく必要があるだろうか?


「ドーナツ? え? 食うけど、ふつうに。なんだ誘ってくれたのかぁニモア、かわいいいなはは(ちなみにポンポンリングはいらねーぞ? ふつうので──買っといてくれ)」


「「「え?」」」


メイド3人ならべて口をぽっかりと開けてドーナツの真似でもしているのか?

ふむふむ、珍しい反応が見られてカール王子視点固定バグ、なかなかおもしろいな? ははは。





そうこうアモンに屈託なく笑われ、クピンに苦い顔を向けられ、ドーナツ好きのメイドのニモアがこの世の終わりのような得体の知れない表情をし。バーで今日の山賊戦をおさらいしながらぐだぐだ一行が語らっていると────


「お、お兄ちゃん…!」


座っていてはみだした安いマントをちょんちょんと控え目に引っ張られたアモンは背丈の低い少女に話しかけられた。

少女はどうも決まりが悪そうな顔をしてもじもじしている。

それもそうだ、その少女は悲嘆に暮れ泣く善良な住人を演じた山賊狩りを依頼した仕掛け人だからだ。

オリーブ山賊団の息のかかったアモンたちを待ち伏せする山賊団のアジトへと誘った子役というわけだ。

それが今何の用か、こんな酒臭い子どもに似つかわしくない現場にあらわれて、アモンへと後ろ手に隠していたアイテムを震える手で手渡そうとしている。


「きみは、ぼくに依頼してくれた……これは?」


ん? よく見るとそれは妖精の粉だ。俺も超絶お世話になった妖精の粉が縛られたちいさな皮袋だ。

俺が毒で悶え苦しんでいて、自力で買おうとしても店主から離れていて買えなかったひっじょーーーに思い出深いあと100行はまつわるエピソードの語れそうな妖精の粉だ。

そんなものをアモンお兄ちゃんにくれてやるその真意は? えとーーー…たぶん渡すのはこっちだと思うぞ? 数時間前に渡してくれてたらめっちゃ泣いて喜ぶと思うぞ?

冗談はさておき、────まぁ俺が野暮な言葉を発するまでもなく。


緑髪のお兄ちゃんは席から立ち上がり膝をついて同じ目線。

目を見れば分かる。野暮な言葉はいらずとも。


少女の今にもあふれそうな穴あきの心が。


アモンはぎゅっと少女のちいさな手を覆うように、──受け取る、アイテムだけじゃない、もっとおおくを。


涙をこらえためて赤面する少女がいる。


「ありがとう。つかわせてもらうよ」


まるでどこか尊い星の国の王子のようだ。

脳筋なのに、こういう天然テクニックも持ち合わせているたぁ……見知らぬ街の少女すら心の底から惚れさせてしまうアモン・シープルはそんな(わる)い男だ。


俺の出番は?────もちろんない。両手を広げ、首をちょっこし傾けて『ハッ』とキザに笑うぐらいでよしとしておこう。




こうしてベヌレの街の山賊狩りはオリーブ山賊団が壊滅、アモンと少女のお熱い仲直り、で落着といったところか。なんか色々とこの原魔勇のデータがバグっている気もするし、このあとの予定と行き先をさっそく立てたいところだが…………


「やぁめでてぇめでてぇそんなに甘酸っぱくてめでてぇの見せつけられちゃぁ……酒が不味いよなぁああああこのイカした街中の〝オレンジジュース〟、大樽で100もってきやがれええええ!!!」


「はぁ???? ななな!? 馬鹿ールそんなにたのんでどうすんのーーーー!?」


「好きだろ? オレンジ?」


「好きにも限度ーーーーー!!!」


「ガキのことだが?」


「ナッ!??」



すっかり仲良しに打ち解け笑い合う少女を肩車するアモンに、拍手で盛り上がる現バー、明るいカール王子ならこのバカ騒ぎにノらない手はない。──よな?











「にほい。にほいがちかいほいーーーーここホレホイーーー!!!」


「おだちん…おだちん……おだちん!!!」


チョコと番犬ホイは獣道を抜けた先の山中に隠されたおだちんを見つけた。




▼▼

▽▽




山賊狩りをひと段落終えて、大樽で100とはいかないがバーでオレンジジュースを居合わせた皆に振る舞い同じ味で乾杯し。時はまだ夕暮れのオレンジ。

アモンには修行と偽り、オレンジジュースを9杯飲んだクピンには呆れ顔をされながらカール王子は酒場をあとにした。


そしてさっそく俺は軍資金をかかえ戻って来た従者チョコに出店で買ったAPが回復する〝チョコっとドリンク〟を褒美に与え、共にベヌレの街の物色をはじめた。



ところで、さっきから従者チョコのほかに俺に纏わりつくちこちこした足音がふたつ。

俺が立ち止まり振り返ると、そいつらも立ち止まり振り返った。


「あほやろうこっちだ。こっちを見ろ」


「「──みた」」


「よしみたな? じゃあ次は質問に答えろ。お前らなんできたんだ?」


「「メイド長にいわれてしんぺんけいご?」」


「やっぱりそうか。ならしっかりけいごしとけよ?」


「「うんわかった。そこそこ」」


「しっかりだ」


「「うっかり?」」


「俺は王ヂだぞ?」


「しってる」「しってた」


「ハっ、ならそこそこけいごしとけよ?」


「「うん。こそこそ」」


これ以上の親愛度上げは不毛なのでやめておこう。

こいつらは……まぁいいか?

見ての通りちいさな双子だが双子じゃない。何をいってるか分からねぇと思うが、名前はギムとホナだ。

ベージュ色の右サイドテールがギムで、左サイドテールがホナだ。

右のギム、レフトのホナと覚えれば楽ちんだ。──何もかかってねぇ。


思わぬ派遣メイドだが、ちいさいと侮るなかれ実は身辺警護には適した能力持ちだ。

メイド長クロウ・フライハイトは有能か、それとも苦悩か?

どっちにしろこのまま予定通り次の準備と下見にちょっとゆっくり取り掛かるとするか。


と、俺が立ち止まりながら考えていると──威厳あるメイヂ国のマントをそこそこのちからで左に引っ張られた。


「「焼きおにぎり」」


〝焼きおにぎり〟は炎耐性が一定時間上がり、HPが小回復するアイテムだ。

しかし俺は今火を吹くモンスターと魔法師とサラマンダーの相手をしていないので、焼きおにぎりは好きだ食べよう。


ちょいちょいとまた俺はマントの裾をちんまい手で引っ張られ──


「「食べたもん勝ち」」


バグって味がするんだ、食べたもん勝ちと言える。やけに乾燥した唇をなめずる俺の舌と味蕾がよんでいる。


俺は醤油の香りがリアルすぎる焼きおにぎりを3つ購入した。





余っていた焼きおにぎりを半分ギムかホナどっちかに渡し、俺は道具屋や武器屋を片っ端から回っていった。そして今結局追加の焼きおにぎり3つを買い、さいしょに訪れた武器屋へと戻った。

店主は心なしか目を輝かせている。旅人で高貴な見目(ご自慢の金ぴかのライトアーマーはライトアーマーなのにはやさにマイナス値がかかるから売った)の俺が再び自分の店に現れたからだろう。去り際のむすっとした顔が嘘のように晴れている。

ここで何も買わずに去ったらそれはそれはおもしろいだろうが、それを世間は冷やかしと言うので今回はやめておこう。


とりあえず記憶した一番品揃えがマシなここで当分の装備を揃えるか。

ちなみに不思議の星の店は秘密のエリアから消えてやっぱどっかにもう行ってたな残念。


アレは不幸中のラッキーでカール王子ルート専用の特別措置かもしれないしまぁ山賊狩りの報酬と、山中で別行動させていた鼻のきく番犬が骨董品のネムル宝の洞穴を見つけたおかげで資金がちょっと増えたことだ。

メイド長のクロウも、俺の散財癖を見越してか双子に旅の資金の一部をもたせてくれていたし。過剰な気配りは何故かはしらないが、貰えるものは貰っておこう、無理に引き出そうとすれば当然親愛度は下がるから注意だな。刺された俺が言うのもなんだが、ハッ。


俺はとりあえず頭に記憶していたアモンやクピンの装備状況を鑑みて、装備を購入した。

最優先はやはりアモンだ。原大陸帝国産の鋼の剣は序盤にしては悪くない、今の普通の鉄剣より2段階ぐらいはマシだろう。強いユニットに装備を集中し優先するのは言わずもがなの鉄則だからな。


さてさてそれと────


武器屋の店主の両手をこすりあわせるやらしい手つきを無視し、俺は斜め上をぼーっと見上げながらこの後の展望を考えていく。


そうすると浮かび上がっていく、忘れていたことや、思わぬルートや、最善ではなくてもたのしそうなアイディアが────

俺は決断し、太った皮袋をじゃらっとケチくさくない音をたてながらカウンターに置いた。





発注した武器を後日別の従者が取りにうかがうと告げて、ほくほく顔の店主にかしこまらせた。

そしてとりあえず受け取ったプレゼントラッピングされた大箱と小箱をひとつずつ、暇そうに屋台を覗いていた双子に預けた。


「そんな重いの無理、物理的に」「イロイロ重い、愛が重い、まだはやい」


汗水垂らして運んだクソ重い大箱はギムに持たせついでにぱわーを測る、小さな箱はホナに手渡して中身が光るドーナツとマセて勘違いしてやがる。


「何勘違いしてやがるお前らの装備だ、さっさとそれに装備しろ」


「ほへ?」「ほへぇ?」


メイド見習いのギム・スライとホナ・スライはお互いの顔を見合わせ、すっかり安細った金袋をもちニヤつくカール王子を上目遣いでまた見上げた。

王子がノールックで後ろに指差し遠目に映るほくほく顔の店主が、試着室にうれしそうに手招いている。

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