影
影というのは基本的に、その物の動きを写す。
それは、太陽に照らされた物の影だったり。
あるいは、視界の端を横切る人影だったりと様々だ。
今日はそんな影にまつわる僕の恐怖体験を語ろうと思う。
もしかすると皆さんの中にも居るかもしれない。
時々、自分の影が遅れて動くという事はないだろうか。
僕は影には実は自分の意思があるのではないか……?
そう思っている。
というのも、僕の影は時々自分とは違う動きをしている時があるからだ。
初めてそれに気が付いたのは、小学校の運動会の100m走をしている時だった。
僕は足がそれほど速くない。
なので、最下位だろうな……と半ば諦めムードでうつむいて走っていた。
他の場所はどうかわからないが、北海道の運動会は大抵7月中旬に行われる事が多い。
その日も真夏の日が照り付ける中、僕らの運動会は行われた。
そんな太陽の日が照っているグラウンド。
ふと走りながら足元の自分の影を見た。
僕の影は、ものすごい勢いで走っている。
はっとして、現在走っている自分の足を見た。
どう考えても足の動きが影と合っていないのだ。
なんだこれは……。そう思っている内に100m走は終わった。
結局僕はビリで5人中5位という不遇な結果に終わる。
しかし、そんな事よりもさっきの影が気になって仕方なかった。
次にその現象に会ったのはある朝、起きた時だった。
小学校の頃は早起きをしていた僕(現在はすっかり夜型の人間になり朝は弱い)。
その日、学校が休みである事を忘れ、いつもの時間に起きてしまい、寝直そうとして枕へ横向きに寝た。
すると、部屋の中に差し込む朝日で部屋の壁に僕の影が写っていた。
しかし、どう考えてもおかしい。
その影は、さも今ベットから起き上がり部屋を出ようとしていた。
「え……?」
ベットで横になった僕の口からそんな驚きの言葉が出た。
すると、僕の影がこっちへ振り返る様なそぶりをした。
影を作り出している僕自身は、驚きのあまりベットの上で固まっているのにも関わらずだ。
僕の影は僕が未だにベットで寝ている事がわかると、何もなかったかの様にゆっくりと身体を横たえた。
僕はそれを不思議に思い、もう一度ベットで上半身を起こす。
しっかりと影は僕の動きについてきた。
その姿勢から勢いよく枕へと飛び込み壁に写る影をじっと見た。
「――ひっ」
驚いて言葉も出なかった。
僕の影は未だ、ベットで上半身を起こしている。
(きっと寝ぼけているだけだ……)
そう思い込みベットで目を閉じた。
しかし、それから10何年と生きてきているが、未だに僕の影は時々勝手に動く。