ヤバい霊
皆さんは『ヤバい霊』と聞くと、どのような姿を想像するだろうか。
心霊番組などに出る、血まみれの幽霊?
映画に出てくるおどろおどろしい姿のそれだろうか?
僕個人の経験から言えば、そういったものは危険度「中の上」くらいだ。
先に結論を言う。
本当にヤバイ霊というのは「生きてる人間と一部以外、見分けのつかない霊」だ。
なにそれ? と謎に思うかもしれない。
僕も最近やっとわかった事なのではっきりとは言えない。
逆の立場で考えた時、あなたは目の前の人を呪い殺そうとして、おどろおどろしい様相で、その人の前に姿を現すだろうか?
例え話をするなら、詐欺師は「私は人をだましてお金を儲けています」と言っているのか? と言い換えてもいい。
僕は人の怖い話を聞くのも、見るのも好きで、よくそういったものを見たり、聞いたりする。
かなり昔になるが、某匿名掲示板で僕と同じようなものを見ている人がいた。
その人が見たのは、スーツ姿の男性だったという。
しかし、手の指が他の人より多かった……。
という様な書き込みだったと記憶している。
僕もそれと似たようなモノを、この家で暮らしている時、見た。
それは、僕が寝ている部屋の廊下の中央、床の間に行った時の事だ。
何の用があって床の間に入ったのかは失念してしまった。
床の間での用を終え、僕が廊下に出た時、廊下のガラスに写った僕の背後にそれはいた。
その時の僕は150cmほどの身長だったと思う。
その僕の肩当たりに顔を近づけているニコーっと笑った男の子が写っていた。
それだけならば、よくある怖い話で終わりだ。
僕は、怖くて振り向くこともできず、かと言って動こうにも恐怖で身がすくんでしまって動けない。
鏡に写った男の子はゆらゆらと僕の背後で揺れていた。
そして、段々と顔のある場所が変化していった。
ある場所とは「眼」だ。
彼の眼は、最初は普通の人間のように白目があった。
しかし、次第に黒目ガチになっていき、最終的にそこに穴が空いているかのような真っ黒な「ふたつの穴」になった。
それに伴って、廊下のガラスに写る彼は狂ったように体を左右に激しく振り回す。
「うわああ」
その時の僕は悲鳴をあげて家族の居る茶の間に走り込んだ。
なぜ、こういった霊が一番「ヤバイ霊」とわかったか。
それは最近、同じような霊を見たからだ。
その霊は、一家にとり憑いているのか、その一家は真っ黒な影に覆われていた。
そして、皆同じような、「眼」をしていたのを今でも覚えている。
そこには僕の姉も居た。
姉の彼氏の家族だ。
僕は姉にお祓いを勧めた。
そして、向こうの家族もそれを了承してくれたらしい。
お祓いは僕が仕事で居ない日中に件のお祓い士のもと行われる事に決まった。
ここからは、僕の聞いた話になるので、実際とは違うかもしれない。
一家の父親は「家に、いちゃもんつけて金をせびろうとしてんのか! おい!」こう言ってお祓い士に掴みかかったらしい。
その日は、お祓い士の方もそういった雰囲気でなくなってしまい、お祓いは行われずに、そのまま姉ともども一家は帰って行ったらしい。
その後、姉は消息不明になり、音信不通だ。
その一家もそれ以降見ていない。
もしかすると、人の不幸にする霊というが世の中には居るのかもしれない。




