お盆
僕はこの家に住み始めて、僕の部屋を親から与えられてから「お盆」という時期が嫌いだった。
それはなぜか?
簡単な話しで霊がお祭り騒ぎをおっぱじめるからだ。
僕は前の話であった通り、寝るときは部屋のドアを閉め、その扉についている小窓もカレンダーを使って塞いだ状態で暮らしていた。
そんなカレンダーの日付を見なくてもお盆が近づくとわかる。
僕の部屋までの長い廊下をどれほどの人が走り抜けたらそんな音がするのか
ドタドタドタドタッ!
ドタドタドタドタッ!!
そんな音が真夜中に鳴り響くのだ。
「夜は墓場で運動会」とかいうアニメの歌があるが、僕の部屋の前で運動会をしているかのようだった。
また、カレンダーで小窓を塞いだといっても、ぴったり小窓に合うサイズのカレンダーがなかった。
なのでドアの小窓に少しだけ隙間があって、廊下から覗かれるんじゃないか。
そんな恐怖感もあった。
そんなお盆のある日、僕はとうとう毎晩のように鳴り響く大量の足音に我慢の限界を迎え
「うるさい!! こっちは寝てるんだ!」
とベットで横になっている状態でドア越しの廊下に向かって叫んだ。
すると、それまでしていたうるさいほどの足音はピタッと止まった。
霊にも言葉って通じるんだな……。
そんな事を思いながら眠りにつこうとした時だった。
茶の間の方から最初はゆっくり、そして僕の居る部屋に近づくにつれて小走り気味になりながら足音がひとつ近づいてきた。
トン……トン……ドタドタドタ!
こんな音だったと思う。
その足音は僕の部屋のドアに衝突したのかドンッ! という音と共に振動が伝えて、足音も止まった。
目を閉じ、これから眠ろうとしていた僕は、その音と振動にびっくりして目を開ける。
何かがぶつかったよな? 今
僕はおそるおそる小窓を塞いでいるカレンダーの隙間に近寄り、その隙間から廊下を覗き込んだ。
真っ暗な廊下には誰も居ない。
茶の間も電気が消えているので、寝ぼけた弟が茶の間から走ってきてドアにぶつかった訳でもなさそうだ。
じゃあ一体なに……?
僕は隙間から廊下を覗き込んだ状態で固まった。
部屋のドアを開けようとノブをひねって廊下側にドアを開ける。
やっぱり誰も居ない……。
さっきの感じだと僕の目の前のドアに衝突して、そのまま廊下にその何者かが倒れていてもおかしくはないほど衝突音だった。
再び部屋のドアを閉じる。
するとカレンダーの下の隙間から視線を感じた。
何者かと目が合う。
目は見えるのに顔は見えない。
目だけが隙間からこちらを覗き込んでいた。
真っ暗な廊下に真っ白な目が浮かんでいる。
僕はその体験をしてから、お盆時期は耳栓をして寝る事にしていた。