すべてに感謝したじゃがいも。
何かに包まれているような感じがして心が気づいた。俺をずっと待っていたかのような温かさ。まるで、俺が小さな小芋だった時、根っこが優しく栄養を送って微笑んでくれていたような温かさだ。
心の目を開けると、そこには、アミラーゼ達が出迎えてくれていた。君を待ってたんだよ。一緒に子供達の元気の源になろう。そういってくれてるようだった。
僕の心は、子供達の体全身に行き渡り、その子供の一部となって新しい命となったような気がした。これが僕の役割だったんだ。
他の兄弟達には、悪いがこれが本当の悟りだ。
今まで、自己中心的で、ワガママだった自分がここまで自分を見つめなおすことが出来たのは、どこか自分自身の行いが悪いと心が知っていたから、僕は、素直になることがプライドを傷つけると思っていた。
でも、そうじゃなかた。相手と向き合って、そして、自分と向き合う。その心が自分にとって大事な事だったんだ。いつも自分の事しか考えてなかった。
長い間、子供達の体を支えていた僕の心は、やがて、子供達の体から汗となり蒸発し、空に舞い上がった。今度は、空の空気と一緒になり、地球と一緒になった。
また、生まれ変わる時、この思いだけは、忘れない。相手と向き合い、自分と向き合う。ありがとう。僕と出会ってくれた全ての心ある民よ。ありがとう。
こうして、じゃがいもは、この星の一部となり空から、子供達の成長を見守るのでした。
やがて、雨となり種芋の兄弟と再会するのは、また次のお話です。
ありがとうございました。
完。