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「キュキュキュキュキュオキュオ‥」
リーダーらしきペンコルドは何やら語り出す。
簡単に言うと、ペンコルドは元々毒の息は使えなかったらしい。
突っ込んでいくしか攻撃手段を持っていなかったご先祖様は、初撃で敵を倒せなかった時は一方的にやられるだけなのを危惧して他の攻撃手段を研究したそうだ。
色々と研究した結果、毒の海藻や貝、草などを一度体の中に取り込み分解してから放出することに成功したらしく、その副作用みたいなものが体臭となって出てくるらしい。
命には代えられないと言ってもみんな嫌なものは嫌なので基本は交代制で毒(体臭)を保持しているらしい。
「ご、ごめんね。自分達の身を守るための結果だったのに。」
「キュオキュオッチイサナオンナノコニ クサイトイワレテスコシ悲しかっただけだから」
「ん?」
ペンコルドの言葉がおかしい。さっきまで普通に言っている意味はわかっても、鳴き声にしか聞こえなかったのに聞き取れるようになった?
涼子は自分より大きなペンコルドを見上げて首を傾げる。
「どうしたの」
ペンコルドも首を傾げながら訊ねる。
「いや、なんか、ペンコルドさん達の言葉が耳で聞き取れるようになったなーと思って」
私は答える。
「じゃあお嬢ちゃんはテイマーの素質があるのかもしれないね。確かにさっきから言葉が通じていたみたいだったものね。」
ペンコルドの言葉にハッとしてステータスを確認する。
ステータス
※※
テイマー (12)
※※
確かにレベルが上がっている。かなり。職業はモンスターを倒さなくてもレベルは上がるみたいだ。ある程度までは上げておいた方がいいよね?固有スキルとかあるかもしれないし。
まぁつまり、何かしらの要因でレベルが上がったから意味がわかる程度だった言葉が聞き取れるようにまでなったわけだね。
「なるほど」
私よりもモンスターのペンコルドの方がよく知っているみたいだ。
「ペンコルドさん達はステータスって自分達で見れるの?」
人間には怖くて聞けないからとりあえず安全そうなペンコルドに聞く。
「自分のステータスは誰でも見れるよ。相手のステータスは相手に開示してもらうか、『鑑定』というスキルで無理やり見る事ができるよ。レベルによっては相手に不快感を与えるみたい。まぁ、モンスター固有のスキルなんかがあったりはするし、魔法なんかは苦手だったりするけれど人間が出来ることと大差無いよ。少し不器用なだけ。もちろん知能の低いモンスターは自分のステータスを見たりはしないよ。魔法は本能で使ったり、群れの仲間たちがするのを見て真似するみたい。」
「そうなんだ。知らなかった」
モンスター達もステータス確認とかするんだな。会話もできるって事はペンコルドさん達の知能はかなり高いのかな?
「知らない事はなんでも聞いて!僕たちが教えてあげるから。あ!あそこのキノコは美味しくないけど毒は無いよ。人間の子の味覚はわからないからもしかしたら美味しいかもしれないから、味は考慮せずに毒のある無しで教えてあげるね」
一本の木の下の雪に埋もれて盛り上がっている場所を指差しペンコルドは言う。
「ありがとう。」
そう言って雪が盛り上がっているところまで行ってみる。
「キノコ無いよ?」
盛り上がっている周辺を見回して見るけどどこにも何も見当たらない。
「ふふっここ優しくこれで掘ってみて」
ペンコルドはそう言って木の棒を渡してくれた。言われた所をよくみて見ると少し盛り上がっているようにも見える。私は優しく雪を掻き分ける。
「あっ!松茸だ」
雪の中には大きな松茸が隠れていた。お前は筍か!
鑑定
※※
カオリダケ
焼くと変な香りがする。美味しくない。
※※
鑑定してじっくりとみていると
「俺は先に報告に帰ってるよ」
リーダーのペアだったペンコルドが言う。
「わかった。じゃあ俺たちは食材を集めながら帰るよ」
と他のペンコルド達が答える。
リーダーのペアだったペンコルドは先に帰り、他のペンコルド達は先程と同じ2匹1組になり、食材探しを始めた。
私は鑑定で美味しくないと出たカオリダケを収納庫に入れてリーダーに言う。
「美味しく無くてもいい!食べられる物はたくさん欲しい」
と。
自分でもサーチをしつつ探す。まあ、ペンコルドさん達の方が探すのが上手みたい。しばらく進むと砂浜と海が見えて来た。砂の上には植物が枯れたような跡がある。
「あっち!あれ、食べられる?」
もしかしたら根菜かもしれない。砂で育つとは思えないけど、遠すぎて鑑定が届かないから指差しながらリーダーに聞く。
「うーんアレは美味しいけど食べたらお腹が痛くなるよ。毒はそんなにないから僕たちも食べたりはしないんだよ。気になるなら行ってみる?」
リーダーは歳の離れた兄妹に接するみたいに優しく訊いてくれる。
「うん!」
そう返事をして駆け出す。
そこは枯れた草がどこまでも続いているようだで、見渡す限り海に並行に続いている。とりあえず引っこ抜いてみる。
「ギャーーーーー」
引っこ抜いた草が悲鳴を上げる。私はびっくりしてその草を放り投げて両手で耳を塞ぐ。放り投げられた草はギャーギャー言いながらわさわさと動き回る。
「マンドラゴラだ!」
悲鳴を聞いたら死んじゃうやつだ!どうしよう!
私が一人焦っていると、リーダーが落ち着かせてくれようと背中を優しく撫でながら言葉をかけてくれる。
「どうしたの?大丈夫?」
「だ、大丈夫だと思う」
私は瞳に涙を溜めながらそう答えるのが精一杯だった。とりあえず落ち着いてさっきのマンドラゴラを見てみる。
「‥ってジャガイモかよ!」
そこにはさっきまで人型でわさわさと動いていたはずのマンドラゴラの姿はなく、大量のジャガイモが落ちていた。