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「僕のポケットからも出してー」

 と白い何かを持っているペンコルドが言う。


「あ、ごめんね、このお皿に置いて」

 私は大きめのお皿を下に置く。


「ありがとう。これ、洗うの難しいね」

 ペンコルドは首を傾げている。かわいい


「いつもはどうしてるの?」


「ほとんどが魚だから丸呑みが多いんだけど、大きな魚だと軽く血を抜いてからみんなで突いていくよ。わざわざ洗わないかな。こういう食べられないところは海に還したり、遠くに埋めに行ったりかな」

 ペンコルドは手を洗いながら教えてくれる。


「そんな事より、僕たちもこれ食べてみたい!美味しそうな匂いがするもん」

 別のペンコルドが話に割って入ってくる。


「こら!これはお嬢ちゃんの分だぞ。俺たちはコレを貰っただろう」

 他のペンコルドがそう言って心臓と肝臓を指差す。


「いいよ、みんなも食べる?」

 私は人数分お皿を用意してお皿に盛っていく。多めに作ってて良かったよ。


「はい、どうぞ」

 とりあえずリーダーから順番にお皿を渡していくとみんな嬉しそうに受け取る。



 コツコツ カツカツ


 お皿に嘴が当たるみたいで顔を横にしたりして必死に食べている。顔がエグい。可愛くない。


「フォーク使う?」

 私はみんなの分のフォークを出してあげて、お皿を机に置くように促す。

 ペンコルド達はフォークを握りしめてお肉やキノコに突き刺し、口へ運ぶ。


「う、うまっ」

「美味しい」

「ちょっと辛いかな」

「そのピリッとしたのが良いんじゃねえか」


 みんな必死に食べている。


「いるかどうかわからないけどお水もどうぞ」

 私がコップに水を入れると


「ありがと」

 ちょっと辛いと言っていたペンコルドが急いでコップに嘴を突っ込んで水をチューチューペロペロ飲む。かわいいかわいい


「おかわり」

「あ、俺も」

「僕ももうすぐ食べ終わるから」


 辛いと言っていたペンコルド以外がお皿を差し出す。


「僕ももう少しだけ。お水も欲しい」

 そう言って嘴を赤くしているペンコルドがお皿を出す。


「ふふっ美味しかったの?全部食べて良いからね」

 私が全部のお皿におかわりを入れてあげるとペンコルド達はまた食べ出した。



「美味しかったよ」

「もう食べられないよー」


 ペンコルド達が河原に横になってゴロゴロする。かわいいな


「そろそろ戻らないといけないんじゃない」

 ゴロゴロしているペンコルド達に声をかけるとお皿やフォークにクリーンをかけて片付ける。

 白っぽい何かはまな板の上に置いて磨製石器ナイフで白い部分(たぶん脂)を切り離し、小腸と盲腸、大腸っぽいところで切り分けて縦に切って開いていく。


「あー流石にちょっと臭いかな」

 中から水っぽい何かが流れてくる。

 コレって魔法で中に水入れて洗浄したら綺麗になるんじゃない?

 私は途中まで開いた腸をそこで切り落とし、川へ運ぶ。


 川の水を少し浮かせて大腸の端から押し込む。


 ブボボボボ


 反対側から赤や青、紫や緑色の何かが噴出し、川へと飛ばされていく。匂いさえ無かったら綺麗だったのに。あんな色してるけど大丈夫なのかな?今度観察してみようかな?

 私が色々な事を考えながら小腸でも試してみると、穴が開いているのか水があちこちから出てくる。洗ってくれてたからあまり汚れてないのかな?穴が開いてると腸詰にするのは難しいかな?


「そうやって洗うんだったんだね。外側しか洗って無かったよ」ペンコルドが言う。


「いや、ちょっとやってみただけ。長いのを開いていくのは大変だったから」


「そうなんだ。僕たちはもう帰るけどお嬢ちゃんはもう少しここにいるの」


「私も一緒に帰るよ」

 私は急いで片付けてクリーンをかける。匂いは取れたかな?





 帰宅中、変なのがいる


 ゴロゴロ ゴロゴロ ズズー


 ペンコルド達が雪の上を転がったり滑ったりしている。


 様子がおかしい



「歩かないの」

 私は声をかける。


「うん?帰ってからも仲間が残して置いてくれてる筈だから少しお腹を空かせておこうと思ってね。それに僕たちだけあんなに美味しいものを食べたなんて知られたら恨まれちゃうし」

 嘴の周りに食べカスを付けているペンコルドが答える。


 バレると思うけどな。


 私はそう思いながら、両手でお皿を持って心臓と肝臓をキラキラした目で見ながら隣を歩いているリーダーに話しかける。


「リーダー、足元見ないと危ないよ」


「大丈夫だよ」


「雪だよ?滑るよ。それにボコボコしてるし躓いたらどうするの」


「大丈ーー」

 先ほどの返事と同じ返事をしようとしたリーダーは何かに躓くーーと同時に体を反転させ、体を上下に伸び縮みさせて器用に心臓と肝臓を嘴でついばむ。


「はっはっはっはっはっはぐ、ぐぇ」


 最後の一欠片を嘴に咥えた瞬間、木皿がリーダーのお腹に当たり、リーダーは雪に叩きつけられ滑り落ちていく。

 木にぶつかり止まったが動かない。

 心配になった私は急いでリーダーに向かって駆けていく。


「リーダー!大丈夫?」


 リーダーはのっそりと起き上がり、

「大丈夫って言ったでしょ。僕のお腹の皮、さっき見たでしょう?お嬢ちゃんの作った料理に比べると劣るけど、やっぱり生の臓器は美味しかったよ」

 口の周りをペロペロしながら満面の笑顔でリーダーが答える。



 こいつ、馬鹿じゃねぇの。



 本気でそう思った瞬間だった。






 

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