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ふわふわでサラサラで温かい、素晴らしい毛布だ。もう少し寝ていよう。よし、今日は仕事も休もう。もちろん仮病を使う予定。仮病でも使わないと有給を使わせてくれないからね。ふふっ
太陽の光が顔に当たる。
「今何時!」
私は飛び起きると辺りを見回す。太陽が昇って少し経つみたいで高い位置にある。遅刻すると思い飛び起きたがそうだ、異世界に来た事を思い出す。
自分が座っている所を見るとペンコルドのお腹の上で、ペンコルドの腕を体にかけて寝ていたようだ。どうりで気持ちいいわけだ。サラサラと触りその手触りを堪能する。
ここは異世界。私は無職の幼女だ。もう一度寝ようとペンコルドの腕を持ち上げ、頭まで被る。
「おはよう。起きた?体はもう大丈夫?」
最高級の布団が揺れる。
「んーおはよ。大丈夫だけどまだ寝てる」
「ふふふ」
最高級の布団がまた揺れる。目が覚めた私はペンコルドから降りると
「昨日のあの後の事教えてくれる?豚はどうなったの?」
ペンコルドと向かい合って訊ねる。
「豚?昨日の奴らは豚って言うの?昨日お嬢ちゃんが倒れてからは、周りが真っ暗になりかけてたから崖の下に運び込まずに僕たちが交代しながらお嬢ちゃんを温めてたんだ。明かりがなくて真っ暗だったからね。リーダーが言うには魔力の使いすぎじゃないかって。キラキラとしてたのもお嬢ちゃんが魔法を使ってくれてたんでしょ?海に飛ばされて着水に失敗した奴もどこも痛くないって言ってたよ!本当にありがとう」
ベットになってくれていたペンコルドは嬉しそうに言う。
「私が前にいた所では豚って呼んでたの。野生じゃなくて家畜だったけどね。怪我がなくてよかった。こちらこそありがとう。お陰で気持ちよく眠れたよ」
「家畜かあ。あんなに凶暴な奴らを手懐けられるなんて人間はすごいなあ。豚はあっちで吊るして血抜きしてあるよ」
そう言いながら私の手を引く。もふもふだあ。幸せな気分になる。
「僕たちの毛皮は最高でしょ?高く売れるらしくて人間に狩り尽くされた群れも沢山あるんだって」
ペンコルドは喋りながら雪山の中に入って行く。しばらく歩くと川があり、近くの木に豚が三頭吊るされている。頭が見当たらないからか辺りが血生臭い気がする。
「リーダー」
ペンコルドが、吊るされた豚の近くにいるリーダーを呼ぶ。
「おはよう。体は大丈夫?お嬢ちゃんのおかげで大きな被害が出ずに倒せたよ。ありがとう。そこで、みんなで仲良く分けたいと思うんだけど、お嬢ちゃんの意見を聞きたいんだ。どこの部位がどのくらい欲しい?本当は昨日の内に分けたかったんだけど、僕たちには切る事が出来ないから‥いつもは突いて分けるんだけど流石に突いた後の残りをお嬢ちゃんに渡すのは気が引けてね。血を抜いて待ってたんだよ」
「もう大丈夫。ありがとう。」
鑑定
※※
海豚の肉
生前聖魔法が使えた為、臭みは少ない。
※※
イルカに謝れ!確かに遠くの方で犬かきしていた姿は少し可愛かったけど、違うでしょ!大きい方はバタフライしてたよ!泳ぎが得意って事なのかな‥?それにしても海豚はイルカだからね?あなた達は豚よ!ただの豚よ!
鑑定の結果を見て頭の中で罵倒する。
「小さい豚を二頭貰ってもいい?貰いすぎかな?」
私が止めを刺したのは大きいやつ一頭だけだけど、流石に軽自動車くらいはある豚は要らない。解体するのが怖いよ。
「豚?ああ、これは確か海豚って言う種類だったと思うよ。豚の亜種みたいな。見た目はそんなに変わらないけど、泳ぎが得意とか、水魔法に耐性があるとか違いがあったと思う。僕たちは小さい海豚が一頭いれば十分だよ。小さいと言っても僕たちより少し大きい位だし。それに僕たちは生で食べるから今日中に食べ切るつもり。残しておくと別のモンスターが来ちゃうからね」
「生で食べるの!寄生虫とかは大丈夫なの?」
心配で訊く。
「寄生虫?」
寄生虫が何かわからないらしく、リーダーは首を傾げる。今日もかわいいなあ。
「えーっと、豚とか特定の動物の中にいるその生き物に寄生している虫の事なんだけど、生きたまま他の生き物が食べちゃったりしたらお腹が痛くなったり、病気になったりするみたい。私も良くは知らないけど、私が前にいた所では火を通して食べてたから」
そういえば寄生虫ってよく知らないな。
鑑定
海豚の肉
生前聖魔法が使えた為、臭みは少ない。
海豚の肉
生前聖魔法が使えた為、臭みは少ない。大人に比べると柔らかい。
海豚の肉
大人に比べると柔らかい。寄生虫に寄生されている為生食すると寄生される。
※※
「あ!こっちの右の一番小さい子に寄生虫がいるみたい。私は火を通して食べるからこっちの子を貰うね」
正直、虫がいる肉とか食べたくない。でもよく考えてみると秋刀魚とか鯖とかの魚は大体寄生されている。イカもか。まあ、しっかり加熱して食べればいいよね。まずは解体からだ!がんばるぞお。
「そういえば毒を保持した事の無い子ども達は、たまにお腹を壊したりそのまま死んでしまったりするけど、寄生虫が原因だったのかな?たぶん僕たち大人は毒を保持してるから食べても大丈夫だと思うけど今回は小さい子も食べるからこっちのを貰うね」
リーダーが言うと
「じゃあ自分達が先に群れに運んでおきますね」
他のペンコルドが子豚を下ろしながら言う。
「僕たちはお嬢ちゃんの手伝いをして戻るから先に食べててもいいからね」
リーダーが言うと
「わかりました。妻たちに相談して順番に食べ始めますね」
ペンコルド達は嬉しそうに子豚を担いでいく。
「お嬢ちゃん、何か手伝う事はある?」
リーダーが訊いてくれる。確かにこんなに大きな子豚は一人では運べない。私は大きな方の海豚を収納庫に入れて子豚を見る。
解体ってどうするの?