10
「続けて同じ系統の野菜なんかを育てていると、病気になりやすくなったり、虫が湧いたり、土にある栄養素が偏ったりして上手く育たなくなるらしいんだけど、それを連作障害って言うらしいの。ゴラ芋がずっとここにいるって言う事は、大丈夫なのかな?実りが悪かったりするの?雪の中よりはましなのかな?」
「なるほど。長い間ここにいるけどどうなんだろうね?前に雪の上に投げた時はキャーキャー言って雪の中に埋まってたけど、そのあとは知らないな。そこにはいつのまにか変わった木が立ってるから。」
そういってリーダーは近くの木を指差す。そこには確かに変な木が立っている。さっき走り回っていたゴラ芋みたいな、木の根元が二股に別れていて、全身、葉に至るまでジャガイモのような色をした木が。雪は積もっていないようだ。
「ちょっと近くで見てみたい」
子供は好奇心旺盛だからね。雪の中でも育つ芋って気になるよね。
「わかった。ちょっと行ってみようか」
二人は並んで歩き出す。
木の前に到着すると
「わあーゴラ芋と手触りが同じだ。この木も食べられるのかな?太陽が当たっているのに緑色になってないって事は別物なのかな?」
鑑定
※※
ゴラ芋の木
環境の悪い場所に埋められると一定の確率で変異する。近くのゴラ芋の数が減ると実を投げて増やそうとするが場所によっては育たない事が多い。
※※
「やっぱりゴラ芋の木だって。一定の確率で変異するらしいよ。周りのゴラ芋が減ったら実を飛ばすって」
私は鑑定で見た事を言う。
「へえーじゃあ向こうのゴラ芋が全滅した時のためにこの木はこのままおいておいた方がいいね。」
「そうだね。次に行こっか」
私は興味を他の事に向ける。
「次は僕たちの集落だよ。集落って言っても砂浜に群れてるだけなんだけどね。もう少し歩いたらあるけど、疲れたなら抱っこしようか?」
抱っこだと!?いくらペンコルドが大きいと言っても、120〜130くらいだ。私はたぶん100センチあるかないかぐらいだと思うから‥
「自分で歩けるよ」
生臭いとはいえペンギンに抱っこされるとはとても魅力的なお誘いだ。それでもやっぱり中身が30才のおばさんにはちょっときついかな。
「そういえば上から見た時にこう、上だけわさっとした木を見たんだけど、どこにあるかわかる?」
私は手振りを加えて話す。
「うん、帰り道にあるよ。あの崖の向こう側だから隠れてるけどすぐそこだよ。あの木は上の方に実がなってるんだけど、僕たちじゃ取れないから食べられるかどうかはわからないんだ。それに魔法の力が働いてるのか、実の近くに投げた小石が弾かれてね、実に近寄ろうとした他のモンスターたちも見えない壁があるかのように弾かれるんだ。前に馬鹿な仲間が下から突っ込んで行ったんだけど、実に到達する前にやっぱり弾かれて海まで吹っ飛ばされてたよ。嘴が折れる以外は大した怪我がなくて良かったよ」
「私も試してみたい。魔法も弾くのかな?そのペンコルドさん、今はどうしてるの?嘴が折れると不便だよね?」
「そういえばさっき風の魔法使ってたね。小さいのに収納庫を持ってて、魔法も使えて、鑑定スキルも持ってるなんてすごいね。僕たちは魔法が使えないから羨ましいよ。それと、そのペンコルドは嘴が折れると生え変わるまでは少し不便そうだったけど、今は普通に生活してるよ。ほら、さっきいた1匹だけ毒状態にならなかった僕のペアのやつだよ」
「えへへ、神様からの贈り物だよ。嘴って生え変わるの?一生物じゃないの?そんなにお馬鹿そうには見えなかったけど」
そう、神様からの贈り物だ。大切に使わなきゃ。まあ減るものじゃないけどね。
「まあ子供の頃の話だよ。今では立派な副リーダーさ。神様からの贈り物かあ。そういえば7才になる頃に人族には職業が与えられるって聞いたなあ、その時にスキルとかもくれたりする事があるって。稀に加護とかも貰えるみたいだけど、お嬢ちゃんはまだ7才じゃないよね?エルフの血が入ってるから小さく見えるの?黒髪だから魔力が多いからかな?」
「5才だよ。エルフは入ってないと思う。黒髪って魔力が多いの?」
リーダーは私の頭に短い腕を乗せるとなでなでしながら答えてくれる。
「今は年齢より少し幼く見えるくらいだね。魔力量の増え方次第でもっと見た目と実年齢に差が出るかも知れないね。純粋な人間は黒髪だと魔力量が多いらしいよ。獣人とかは種族によるし、エルフなんかは逆に白に近い方が魔力量は多いみたい。まあ多いと言っても種族によっては天と地程の差らしいけど。髪の色と言えば、毛色で得意な魔法が変わる種族なんかもいるらしいよ」
「へーリーダーは物知りだね」
「まあ、伊達に20年も生きてるわけじゃないからね」
そうこうお話している間に絵で描いた椰子の木っぽい木のところまできた。
「本当に実が付いてる。5、6個はあるかな?」
とりあえず風の刃で実を落とそうとしてみる。
風こい!
風の刃が椰子っぽい木の実を落とそうと襲いかかる。
「シュンッ」
風の刃が消滅した。
「え?」
風、風、風風!
次は複数の風の刃が椰子っぽい木の実を落とそうと襲いかかる。
「シュンッ」
一気に全ての風の刃が消滅した。
土、風、水、光、闇!
思いつく限り適当に属性をぶつける。
「シュンッパリン、パーン」
土と風と水が同時に消え、闇は弾かれる。光は貫通したのか実が少し揺れている。
上から砂が降ってくる。
「びやー風!」
落ちてきていた砂を遠くへ飛ばす。
「リーダーごめんね、目に砂とか入らなかった?」
「入ってないよ。このくらいの砂、ここに住んでると日常茶飯事だから大丈夫。鑑定は使わないの?」
リーダーの言葉で思い出す。
鑑定
※※
ヤッホーの木
ヤッホーと言うと実をくれる。実はほんのり甘い。
※※
「なるほど、ヤッホー」
少し声を大きくして言う。
すると、上からヤッホーの実がふわふわと降りてきて目の前で止まる。私が両手を出すと、ヤッホーの実が両手に乗る。とりあえず振ってみる。
たぷんたぷん
中身は液体みたいだ。
うん、やっぱり君は椰子の木だな。知ってた。そう思いながらヤッホーの木を見上げる。