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花火

「ねえ、莉緒りお。打ち上げ花火って知ってる?」


 幼馴染みの勇樹ゆうきが得意気に話してくる。


「花火ってね、作った人の魂がこもってるんだって。だからあんなに綺麗なんだよ」


 そうなんだ。

 夏の夜空に広がる花火は綺麗だもんね。


「今夜の花火大会は僕の作った花火も上げるから絶対に見て欲しいんだ」

「あれ? 勇樹って花火なんて作れたの?」

「作ったのはプロの人で、僕は魂を込めただけなんだけどね」

「あはは、なにプロよりもプロっぽい事言ってるのよ」


 私は勇樹の言葉がおかしくて思わず笑ってしまった。

 線香花火ならともかく、打ち上げ花火なんて学生の私たちに作れるわけがない。

 話半分で聞いておこう。


 夜になったので私は勇樹と花火大会に行った。

 こうして二人で花火大会に行くのは小学生以来だ。

 この花火大会で私は勇樹に告白するつもり。

 きっと勇気も告白を受け入れてくれると思っている。

 でも、断られたら……いや、そんなことは考えるのをやめておこう。

 終盤に差し掛かった時に勇気が声を上げた。


「莉緒、次が僕の花火だよ。僕の気持ちが伝わればいいんだけど」

「気持って?」

「花火が打ちあがるまで、ないしょ」


 そして夜空に大輪の花火が打ち上がった。

 そして大輪の花火からは勇樹の気持ちが伝わって来た。


『莉緒、キミのことが好きです』


 もちろん私は勇樹の事が大好きだ。

 両想いだったんじゃん!

 悩むことなんてなかったよね。


 私は勇樹に告白しようとした。

 だけど、勇樹は地面へと崩れ落ちた。


「最後に告白出来て良かった。もう思い残すことは無いよ」


 そう言って勇樹は夏の夜空に消えた。


 花火には作った人の魂が籠もっている。

 大輪の花火が打ち上がると同時に、作った人の魂が弾け散るのを私はしらなかった。

 私は勇樹に泣きつきながら、今まで彼の気持ちを察せなかったことを後悔した。

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