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愛に縛られて  作者: ライム
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凛の過去

好き。愛してる。世の中にはそんな愛の言葉が広がっている。

 恋愛ができないともったいないと言われる。付き合っていると羨ましがられる。

 こんな世界にいるのに俺は愛が気持ち悪い。


そんな俺は自分に好意を向けられないように人との関わりを絶っていた。

友達も作らず、教室の隅で音楽を聴いている。周りからついたあだ名は根暗くん。

俺は元々明るい性格だった。けど、ある日から愛が怖くなった。


小学4年生のときだった。家に帰ると中から争うような声が聞こえて、興味本位で部屋を覗くと、両親が口喧嘩をしていた。

「なんでだよ。おまえは俺が嫌いになったのか?俺はこんなにお前のことが好きなのに。」

そう言って父は母を殴っていた。俺は怖くなって逃げた。リビングからはまだ争う声が聞こえる。

父は母に好きだと言っていたが、俺はそれが好きな人にする行動だと思わなかった。


それから、両親はよく喧嘩をするようになった。俺は両親から貰えなくなった愛を本の中に求めるようになった。

たくさんハッピーエンドの本を読んだ。しかし、我が家にハッピーエンドは訪れなかった。


いつも同じ場所で恋愛小説ばかり読んでいる小学生が気になったのか、ある日一人の男が話しかけてきて、オススメだよ、と本を1冊置いていった。

男は面白がっていたのかもしれない。俺は数日かけてその本を読み切ろうとした。しかし、できなかった。話の一部で女が男を殺していた。自分を愛してくれないからという理由で、それが本当に怖かった。愛が人を殺すのだということを初めて知った。


俺はそれを読んでから母が心配になった。だから母に早く離婚するように言った。でも、母は聞き入れてくれなかった。

「あんな人でもいいところがあるし、私は彼のことが好きだから。」

そう言った母はとても疲れているように見えた。母も父も愛に縛られているように感じた。


1年後、母は死んだ。父に殺されて。俺は母方の祖父母に引き取られた。


母の法事のとき、母方の親戚が話しているのを俺は聞いてしまった。

「凜とかいうあの子供を引き取るなんておかしいんじゃないの」

彼女たちは祖父母をバカにしているようだった。聞いていたくなくて、そこから立ち去ろうとしたとき

「人殺しの血を引いてるなんて穢らわしい。」

そう言う彼女の口は俺を心底軽蔑しているようだった。俺は怖くなって逃げ出した。

それからずっと人と関わるのを避けてきた。


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