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4.飛び出して妖精少女


 異霊界


 そこは精霊や死霊など、ありとあらゆる霊的な存在達が集まる世界。


 その世界に住む者達は、地球に住む人間達と密接な関係があり、彼らに噂や伝承、はたまた崇拝や信仰の対象として認識される事により、存在の力を強め生きて行くことが出来る。



 ここは異霊界にある小さな妖精の里。

 里では今、とある話し合いの為、里長の家へと妖精たちが集まっていた。


「此度の異界渡り、我が妖精の里からはフィーが選ばれた」


 老齢の男性が1人の名前を呼び声を発すると、周りに集まった者達がざわめきだす。


 異界渡り


 この世界に住む霊達は、異霊界と地球が繋がる特別な時期に、人間達の世界へと渡る行為、異界渡りをする。

 そうして異界に渡った霊達が地球で活動をする事で、残った足跡が伝承や信仰などの形となって人間達に語り継がれていた。


 そうして今この里では、今回の異界渡りをする者を選出する為に妖精達が集まっていたのだった。


「長老様! 失礼ですがフィーはまだ幼く、異界において適切な判断ができるか……」


 周りがざわつく中、1人の妖精が喋り出した。

 妖精は呼ばれた名前の者に不満がある様で抗議の声を上げる。


「仕方あるまい。大ババの水晶にはくっきりとフィーが映っていたのじゃ」


 種族や里によって選出方法は様々ではあるが、妖精の里においては、その力と適正で決められる。

 集まった者たちは、フィーと呼ばれた妖精を思い浮かべ不安げな顔をしつつも、里の中では誰よりも多い妖力量を持つ彼女のことを考え、納得の表情も見せていた。


「何も妖精の里はうちだけではない。他の里の代表たちだっているのじゃ。うまいことやってくれるじゃろう」


「我々は幻想の里の妖精なのですよ! それでは自然の里出身の妖精達に申し訳が……。それに異界には妖精族だけではなく様々な種族の霊が渡るのです! 種族によっては存在を広めるために見境のない争いが起きる可能性も」


 妖精はまだ不安材料がある様で異論を続ける。

 この異界渡りでは、様々な種族が地球へと渡るが、それぞれが得意とする方法で自分達の存在を開示する。

 その方法は、些細なイタズラから人間達や他の種族までもを巻き込む大規模なものまで、多岐に渡るのだ。


 いまだ妖精は抗議を続ける様子であったが、続く言葉を断つように バン! と入口の扉が開かれる。

 扉から一人の少女が入って来た事により場は静まり返った。


「おじいさま! あたしが異界渡りに選ばれたって聞いたわよ!」


 少女はその場で背の薄い4枚の羽をピンと張り、ウェーブのかかった金髪をなびかせて仁王立ちになると、元気はつらつと言った声量で入口から家中に声を発した。


「フィーよ。来るのが早かったのう。聞いての通りそなたが里の代表として異界渡りに選ばれた。そなたの妖力量は間違いなく里一番じゃし、選ばれるのも不思議ではない」


「ふふーん! まぁまかせなさい! あたしの存在を人間界中に伝説として刻み付けてくるわ!」


 選ばれたからにはと張り切り、フィーと呼ばれた妖精の少女は、その胸を大きく張り萃色の瞳をキラキラと輝かせて高らかに宣言をした。


「頼もしい限りだねフィーちゃん。せっかく来てくれたし、異界渡りにあたっていくつか説明をしたいのだけれど」


 自信満々の少女へと別の妖精が声をかける。

 地球に渡る際は様々な状況や向こうでの注意事項などがあり、そうした異界渡りに関する説明をしようとしたのだ。

 が、少女は止まらない。


「知ってるわよ! まずは地球でパートナーとなる妖精術士を探すんでしょう! こうしちゃいられないわ!」


「ちょ! フィーちゃんまだ説明が終わって……!」


 フィーの頭には、もはや異界渡りへのわくわく感で溢れていた。

 妖精の説明を聞く暇もなく、少女はビュンと飛び出して行ってしまう。


 嵐のように飛び去っていく少女を見て、静まり返っていた辺りからは深いため息が聞こえる。


「やっぱり心配になってきたのう……」


 長老は心痛を覚え、憂鬱になっていた。

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