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31.徹夜して3日目朝


 朝日が差し込む。


 あれから夜通し襲ってくるゾンビ達をツバサさんと2人で対処して、どうにか日の出まで耐え切ることができた。

 周りが明るくなってからはゾンビ達の動きは鈍り、襲ってくる数も減った事で殲滅に畳みを掛ける。

 そうして最後の1匹を始末し終わると、俺は大きく声を上げた。


「かぁーーーー疲れたあぁ!!!」


 一晩の苦労を言葉にして吐き出す。

 寝れないのもそうだが、あの活発なゾンビを絶え間なく相手するのは集中させられ続けて精神的困憊がすごい。

 待ちに待った朝日を浴びて目一杯伸びをする。

 夜通し稼働し続けた体に太陽の光が染み渡る様だ。


「お疲れさまアズマくん」


 ツバサさんも疲れ顔で声をかけてくる。

 憑依は解除して、ホムラも一緒だ。


「ツバサさんこそ、お疲れ様です。動き回る分、僕よりも大変だったんじゃないですか」


「そこは犬並みに強化されるみたいだから多少は緩和されているけど、やっぱり徹夜は堪えるね」


 そうして2人して大きなため息を吐いた。


「終わったの……ツバサ?」


 朝日を目にして、ドームから避難民たちがゾロゾロと出てくる。

 その中からミズキさんが此方に声を掛けてきた。


「一先ずここに集まってきたゾンビは倒せたみたい、そっちは大丈夫だった?」


「私達は引き篭もってただけだから何も無かったよ。それより少しは休んだ方がいいんじゃない?」


 ミズキさんが心配の声を掛けてくれる。


「ああ、けどせめてどこか屋内に入らないと。まだ動けるうちに民家の方に移動しよう」


 たしかに野晒しののドームじゃ休むに休めない。

 とにかく休憩をしたかった俺は、2人を急かす。


「今はハイになってますけど、座りでもしたらそのまま寝ちゃいそうです。早めに移動しましょう」


 俺たちは避難民を連れて住宅街へと移動した。



 ✳︎




「ーーズマ」


 誰かに呼ばれる声が聞こえる。


「ーーろーーきて」


 まだ眠い。

 もうちょっと寝かせてくれ……。

 俺は声を無視して寝入る。



「……そろそろ起きてアズマ!」


 ぐぃーん。


「痛でででぇ!」


 急に耳を引っ張られ大声で起こされた。

 強制起床に起き上がると、目の前でフィーが両手を差し伸ばして飛んでいる。


「……なにしてるのフィー。寿司まみれみたいなポーズして」


「お腹空いたわ! 何かちょうだい!」


 フィーが食事の請求をしてくる。


「俺の貴重な睡眠は腹の虫によって邪魔されたのか……」


 不服。


 俺たちはあの後、それぞれ手頃な民家に入り休むことにした。

 ツバサさん達は心配だからと避難民たちについて行ったので、俺は1人で寝かせてもらっていた。


「何が食べたい?」


 フィーのご要望に応えるため、俺は鞄を寄せてガサゴソと手を突っ込む。


「昨日の怪しい奴が食べていた棒が美味しそうだったから、あれがいいわ!」


「フィーてつられやすいタイプでしょ」


 まぁ、人が食べてると美味しく見える現象はあるが。


 フィーにカロリースティックを渡し、自分も同じ物を手にとる。

 2人で袋を開けてモソモソと食べだす。


「どれぐらい寝てたんだ?」


「結構長い時間寝てたわよ」


 俺は携帯を取り出して時間を確認する。


「げ、16時」


 8時ごろには寝始めていたから、たっぷり8時間も睡眠を取っていた。

 そりゃあお腹も空く頃合いだ。

 外の明るさは既にくもり始めている。


「これじゃあ、すぐ暗くなるだろうし今日も引き篭もって終わりそうだな」


「休める時には休む! 食べれる時には食べる! それでいいんじゃないかしら? というわけでもう1本ちょうだい」


 2本目の要求に無言で渡す。

 フィーの食い意地にはもう慣れてきたな。

 呆れ顔で眺めていると、携帯が受信ライトが光っていることに気づく。


「ん? 何か来てるな」


 俺は手に持っていた携帯にメッセージ受信の履歴を見てみる。

 ゾンビ発生以後、此方からは生存報告と助けに迎えれるぞと家族や友人には返事を送っていた。

 誰からも返信が返ってこなかったが今になって受信が来るとは。

 携帯を操作し、メッセージの主を見る。


ーーーーーーーーーーーー


 宛名:『伊吹 イッセイ』


 兄貴 ヘルプ 中学校


ーーーーーーーーーーーー


 メッセージは端的に書かれていた。


「どうしたの?」


「弟が生きてた。助けてくれって連絡が入ってたよ」


「家族が? 良かったじゃない!」


「けど、あんまり状況はよろしくないのかも」


 生きててくれて一安心だが、弟からのメッセージは短く、また日が開いてからの返信にあまりよろしい状況では無さそうだと感じた。

 こっちには魔法があるし合流さえ出来れば何とかなるかもしれない。

 出来るだけ早く向かってあげたいが……。


「ツバサさんと相談は必要だよな」


 こちらの事情もある。

 避難民達をゾロゾロ連れて歩くわけにもいかないだろうし。


「また暗くなる前に、ツバサの家まで行った方がいいんじゃないかしら?」


「そうだな。食事はもういいか?」


「食べながら行くからもう1本ちょうだい」


「…………」


 懐の食糧事情が心配になってきた。

 まぁ、一先ずフィーの胃袋問題は置いておこう。


「出るぞ」


 家の移動が出来るうちに、ツバサさん達のいる家へと向かった。

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