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29.交戦して荒居討伐戦


 戦いが再開された。


 荒居は先ほどよりも顔を歪め、憎しみの篭った表情で此方を見ている。


「先に行くよ!」


 ツバサさんが飛び出す。

 まるで犬その物になったかの様な低い姿勢で、両腕に炎を灯し肉薄して行く。

 俺はツバサさんの行手を阻むゾンビ達に落雷を落とし、その進路を開けて行く。


「うおお!」


 ツバサさんが荒居の所まで到達する。

 右手の炎が燃え盛り斜めに腕が振り下ろされる。

 炎を受けた荒居は臆する事なく受け止めると、同時にカウンターのように腕を振り回した。

 ツバサさんは低い姿勢を更に低くし、地面すれすれの位置で攻撃を避けると、そのまま荒居の後ろへと周り、体の回転を掛けたまま荒居の足元へ蹴りを放つ。


 膝カックンの様に足を蹴られた荒居はその場で体勢を崩して膝をつくも、崩れる勢いのまま両腕で地面を叩き割り、ツバサさんごと周りを吹き飛ばした。


「ツバサさん! 大丈夫ですか!」


 吹き飛ばされた先にいるゾンビを蹴散らしてツバサさんへと駆け寄る。

 受け身を取っていた様で、致命傷の様な傷はない。


「大丈夫だよ。けれどあのゾンビ、さっきよりも動きが良くなっている気がする。攻撃をしっかり防がれたりカウンターの様な反撃までしてきた」


 たしかに、荒居の奴は先程よりも強くなっている気がする。

 意識のないはずのゾンビなのに、その動きが洗練されて行ってる様に感じた。


「たぶん、あのゾンビも徐々に成長しているんだわ。肉体の強さと相手を殺すという意志が統一されて来ているのよ」


「ゾンビのくせにそんなのありかよ」


 ただでさえ普通のゾンビよりも頑丈で厄介なのに、これ以上強くなられたのでは倒せない。

 荒居の事を完全に倒せなくなる前に此方が手を打たなければ。


「炎も効かない、風も雷もだめ。あと出来るのは土の操作ぐらいだが、岩針で荒居の皮膚を貫けるか怪しい……」


 自分の使える魔法を羅列して行くが決定打になるような魔法が思い浮かばない。


「単体で使おうとすると視野が狭まるわ! 1つの属性でダメなら複合も視野に入れるのよ」


「魔法の合わせ技か……」


 俺の手持ちの魔法を頭の中で組み合わせてみる。

 炎と雷が合わさると……いや、前提条件を変えよう。

 荒居を倒せる魔法を思い浮かべて、それをするにはどうすればいいか考えたほうがいい。


「あれならいける気がする」


「何か思いついたのかい?」


 俺の中で1つだけ荒居を倒せるイメージの湧く魔法を思いついた。

 しかしそれをするには周りのゾンビ達の邪魔が入らない様にしたいし、荒居の動きを止めておく必要もある。

 ツバサさんの姿を見る。

 服がちょっとセクシーな破け方をしているが、大きな怪我はない。

 しばらくは持ち堪えて貰えそうだが、直に限界は来るだろうし……。


「ツバサさん、荒居を倒せる魔法を1つ思いついたのですが、周りのゾンビの殲滅と荒居の足止めを同時にやる必要があります。周りのゾンビは僕が蹴散らしますのでもうしばらく耐えててください」


「了解した。耐えるだけならばまだしばらくは問題ないよ」


 そう言ってツバサさんは走り出した。

 やはり、ツバサさん頼りになってしまうがやるしかない。


 俺は一旦荒居の事は任せて、周りのゾンビ達に意識を向ける。

 まずはコレ以上増えてこない様に策を作ってしまおう。


 俺は駐車場の外周を走り、岩針の策を次々と作っていく。

 その場にいたゾンビ達は巻き込まれながら動かなくなり、それよりも外にいたゾンビは策を越えられずに足止めされた。

 数が増えれば重なってよじ登ってくる可能性はあるが、10分も足止めできれば十分だ。


 今度は駐車場内のゾンビ達。

 元々雷雲を放っていたお陰で、場内に動くゾンビ自体は少なくない。

 此方はすぐに処理が終わりそうだ。

 バールを使うと討ち漏らした際に厄介な為、普通の風の刃を使って首を切り離し、着実に数を減らしていく。


 これでしばらく邪魔は入らない。

 荒居とツバサさんの方へ目を向けると、変わらず同じ場所で攻防をしてくれていた。


「ツバサさん! 合図するまでその場所から荒居が動かない様にしててください!」


「分かった!」


 ツバサさんにその場を頼み、俺は荒居を倒す為の準備に入る。


 荒居のいる方向を見ながら地面に手を付けると、俺は土魔法を使って目の前の地面に1つの建造物を作っていった。

 今までは単純な形の物を突起させるぐらいにしか使ってこなかったが、フィーの魔法ならば、想像を上手くすれば形も整えられるはずだ。

 細部までこだわる必要はない。

 大体の大きさと、目的の為の形状さえ想像出来れば大丈夫なはず。


 まずは三脚架を生成し、目的のそれを置くための足場を作る。

 上にはある程度照準を合わせられる様に回転台を。

 土台の準備が終われば、その上に先端の長い砲台と引き金となるトリガーを取り付けた。

 土で出来た簡易な重機関銃の様なそれを荒居に向けて照準を定める。


「全部消しとばすってなると、これしか思いつかないよな」


 俺はこの世界が変わった初日に、初めて使った魔法を思い出していた。

 何棟にも連なるマンションに穴を開け、通った道の全てを消滅させていた魔法を。

 発射台が無ければ使えないつもりでいたが、無ければ作ってしまえばいい。

 土魔法で生成した物であれば、撃つ度壊れてしまっても使い捨てで問題ない。


 俺は銃口を荒居へと向けて妖力を土機関銃へと込めていく。

 あの時の要領を思い出し、左手の紋章を光らせる。

 指先を伝って妖力が流れていくのを感じ、銃身が輝きだした。

 あの時のモデルガンと違い、今はさらに大きな銃を使っているせいか、妖力の充填が長く感じた。

 銃が爛々と輝き準備は整ったと感じた時、引き金に指を添えた。


「ツバサさん! 準備出来ました! 思いっきりそこから離れてください!」


「分かった! 頼むよ!」


 ツバサさんは炎を放ちながら後退していく。

 荒居がツバサさんへと手を伸ばすが、俺は荒居を止める様に落雷を落とす。

 落雷を落とされた事で、荒居の身体が一瞬痙攣し、追い討ちのように岩針を突き刺し動きを止めた。

 やはり岩針の尖端は荒居の身体を貫く事なく半端で折れていたが、今は一瞬動きを止められればそれでいい。


「倒れてくれよ」


 動きを止めた荒居に向かって、俺はトリガーを引き絞った。

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