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23.憑かれて狼炎変異

今回はツバサさん視点です。

 突然の出来事に目を丸くする。

 ミズキなんかは尻餅を着いて放心していた。

 目の前の燃える子犬とゾンビを見る。

 子犬は炎を纏ってはいるが、先程まで抱えていたホムラの様に見えた。


「ホムラ……?」


 目の前に立つ子犬の名前を呼んでみる。

 子犬は此方に顔を向けて「ワン!」とひと吠え返事を返して来た。

 ミズキの腕の中からも居なくなっているし、炎を纏った子犬はホムラで間違いないようだ。


「体燃えてるけど、それ大丈夫……?」


「ワン!」


 独り言のように聞いたつもりだったが、ホムラは問題ないとでも言うように返事を返して来た。

 言葉が分かっている……?


「あ゛あ゛ぁ゛ぅぇぁ」


 ゾンビの方も声を上げだしたので、今度はそちらに目を移す。

 肩口に燃えていた炎は着ている服に燃え移っており、少女のゾンビは全身を焼かれ始めていた。


「ホムラが守ってくれたのか?」


 ホムラはやはり此方の言葉が分かるのか、またもワン! と返事を返してくれた。


「はは、すごいなお前」


 思わず撫でそうになるが燃えている事に気付き手を引っ込める。

 すると撫でて貰えなかったホムラは不満なのか、此方の懐に飛び込んできた。

 燃えたまま飛び込んできたため思わず引いてしまう。


「わ! ホムラ熱っ……くない?」


 抱き抱えたホムラは相変わらず燃えていたが、ゾンビの様に自身の服が燃え盛る事は無かった。

 その不思議な炎を見て、アズマくんにくっ付いている妖精を思い出した。


「ホムラ、もしかしてフィーちゃんと関係ある……?」


 不思議な炎を纏うホムラの事が気になったが、ゾンビが再度声を上げたため視線を向ける。


「う゛ぅ゛ぇぇ」


 目の前のゾンビは燃えながらも立ち上がりだしていた。

 燃えてなお動き出すゾンビに警戒をしようとすると抱えていたホムラの炎が一段と燃え盛る。

 視界が真っ赤に染まり僕はホムラの炎に包まれてしまっていた。


「ツ、ツバサそれ大丈夫なの!?」


 ミズキが心配の声を上げるが相変わらず熱さは感じない。


「大丈夫。燃えてる訳じゃないみたい」


 事前にアズマくん達を見ていたせいかこんな状態でも不思議と焦る事は無かった。

 次第に包まれる炎に心地よさを感じ出すと、炎が取り払われた。

 腕の中の重さが無くなり目を向けるとホムラが居ない。


「ホムラ……?」


 (ワンー)


 頭の中でホムラの吠える声が聞こえた。

 びっくりして頭を触るとなにやら触り慣れない物を感じる。

 なにこれ……耳?

 頭に付いたそれからは触られている感覚があり、自分の頭から生えているのだと分かる。

 そしてそれを触る手にも違和感を覚え見てみると、手首から先が黒い毛むくじゃらに包まれて、動物のような肉球と爪が伸びていた。


「何だこれ……?」


 突然変わった身体の一部を凝視しているとミズキが声を上げてきた。


「ツバサ危ない! 前! 前!」


 ミズキの注意に前を見ると燃え盛るゾンビが飛びかかって来ていた。

 咄嗟の事で、僕は思わず腕を払うように振るった。

 すると腕の起動に合わせて目の前に炎が横一線に現れ、炎に触れたゾンビはゴキリと音を鳴らし吹き飛んだ。


 その出現した炎は、今しがた見覚えがあった。

 え!? この炎ホムラの……?


 突然生えた耳と手や出現した炎に既視感を覚える。

 吹き飛んだゾンビに目を向けてみる。

 ゾンビは今の炎で完全に動かなくなり全身を焼かれて倒れていた。


「倒した……のか?」


 頭の中でワンーとまた声が聞こえると、一瞬体が炎に包まれ、気がつくと目の前にホムラが現れる。

 手を見ると毛むくじゃらは無くなっていた。


「ツバサ、今の何……?」


 ミズキが聞いてくるが自分でもまだ整理が出来ていない。

 何となく見当は付いているがどう話そうかと悩んでいると誰かの走る足音が聞こえた。


「アズマくん?」


 先程別れた少年の名前を呼ぶが、現れたのは息を切らしている荒居だった。

 荒居は切羽詰まった様子で声を上げる。


「おい! ショウコを見いひんかったか!? 首輪が千切れて居なくなってたんや!」


 娘を探して焦っていたようだった。

 荒居の言葉に、目の前で燃えているゾンビに目を向けてしまう。

 視線に気付いた荒居はその燃えているゾンビを凝視し、目を見開く。


「シ……ショウコ……?」


 炎に纏われているが、直ぐに自分の娘だと気付いたのだろう。

 燃え盛る我が子を目にして叫び出す。


「お……お前ら何してくれとんねんんんんんん!!!!!」


 荒居は燃え盛るゾンビへと駆け寄った。


「あぁぁショウコ……今火ぃ消したる。消化器……いや上着でも……!」


 荒居は羽織っていたジャケットを脱いでゾンビの火を消しにかかる。

 必死にジャケットで仰ぐと、どうにか消化が出来たようだが、そこには皮膚は焼け爛れ動かなくなった女の子が横たわるだけだった。

 動かなくなった我が子を見て荒居はワナワナと震え出す。


「何でじゃ……! お前ら何でこんなことを……」


 荒居は怒りの矛先を此方に向けてくる。


「荒居さん、やっぱりショウコちゃんはゾンビになってたんですよ! 僕もこの目で見ました。」


「だから違うって言ったやろ! どこも怪我なんてしとらんねん! お前らは人殺しじゃ!」


 荒居は娘の死に何も聞かなくなっていた。

 その目は家族を失った憎悪で染められている様に見える。


「許さんからな……」


 荒居は娘の死体を抱えて立ち上がる。

 怨嗟の言葉を一言呟くとフラフラと1人何処かへ歩いて行った。

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