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13.見つかって調達班

 瀬川さんに連れられて避難民達と合流した。


 居住スペースでは、時間がたったからか今は皆が起き上がっている。

 不安そうな顔色に違いは無いが、彼らは皆同じ方向を向いていた。

 視線の先に目を向けると、先程すれ違った訛りのある男性が居り、避難民達に向けて何やら話をしていた。


「戻りました荒居さん」


 瀬川さんが名前を呼ぶと、視線の中心にいた男性がこちらへと振り向き、柔やかな顔で声を掛けてきた。


「おうミズキちゃん待っとったよぉ。これから今後の事を皆んなと話そうゆう所だったんよ」


 たしか先程ショウスケと呼ばれていたおじさんだ。

 彼は瀬川さんを見た後、俺へと視線を向けると訝しげな表情を作る。


 施設に居なかった奴が紛れているとバレたか?

 強張って肩に力が入る。


「えーと後ろの……後ろのあんちゃんもはよ座りなさい」


 しかし荒居のおっさんはすぐに柔やかな表情に戻ると、何の気ない様子で声を掛けてきた。


(あのおじさんにはアズマが前から何となくいた様な気がするって認識阻害の魔法かけといたわよ)


 頼れる相棒様が脳内に直接声を掛けてきた。

 フィーちゃんは有能だなあ。


(褒めてもいいのよ!)


 俺は脳内で拍手喝采のイメージをフィーに向ける。意味あるのかは知らんけど。


 俺と瀬川さんが適当な場所に座ると、それを見計らって荒居は口を開いた。


「えー皆さん聞いてくんなはれ。建物内の水と食料は全部確認ができました。けれども今ある在庫だけやとこの人数で分け合えば2日と持たんことが分かった」


 生命線とも言える食料の現状を伝えられ、避難民達はざわつきだす。

 皆一様に不安に襲われている様だ。


「落ち着きんさい。幸いにも昨日、私らが建物周りの奴らを追っ払う事に成功しましたさかい、今のうちに外へ出て食料調達に行こう思うんや」


 周りからは「さすが荒居さんだ」「それなら安心ね」と荒居を褒め称える言葉が聞こえてくる。

 称賛の言葉を浴びて荒居はにこにことしていた。


 自分達が追い払ったって、俺に押し付けただけじゃねーか!

 というか屋上から防犯ブザー投げてきたのはこいつか!

 昨日のことを思い出したらムカついてきた。


「そんで、これから拠点防衛班と食糧調達班に分かれよ思いましたんやが、そのメンバー振りはこちらで決めさせてもらいました」


 先程の言葉で希望を見出したような避難民達であったが、荒居がメンバーを勝手に決めたと言い、またも不安げな表情が広がる。


「安心しください。基本的に女性や子供は防衛班に行ってもらい、体格の良い男性陣には調達班へ回ってもらいたい思うてます。もちろん私も調達班に行きますさかい」


 荒居が言い聞かせる様に避難民達へと説明していると1人の男性が前に出てきた。


「待ってください! いくら体格が良くてもあんな事が起きたばかりなんです。既に大切な人を、目の前で奴らに奪われた人だっているんですから、勝手に選別をされても精神的に外に出れない人がいるかもしれないじゃないですか」


 荒居の身長が大きいせいもあるが、男性はあまり体格は良く無いため見上げる形で抗議をしている。勇気あるな。

 彼は瀬川さんと同じ従業員のエプロンを付けていたので、ここの店員なのだとわかる。


「櫻井さん、そうも言ってられないのが現状なんよ。精神的になんて気持ちの問題出してる場合ちがうねん。私だって子供は連れてこれたが、仕事に出てた嫁さんの安否は分からず不安なのを、精神を奮い立たせて頑張っとるねん。皆陥っている状況は同じ。今は耐える苦しみの時! 耐えられんなんてのは気の持ち様や!」


 このおっさん、精神的にだの気持ちの問題だの言っておきながら、最後には自分も精神論を語り出してる。何言ってんだ?

 自分の言葉の矛盾に気付いて無いのだろうか。


「でしたら僕は調達班に回してください! それで1つでも多く持ち帰りますから、希望しない人は出来るだけ防衛班に回してください」


「ほんまかいな? 櫻井さんは防衛班に回す予定にしてましたんやが、その助け合いの精神は大好きや! 分かった。そんなら今から呼ぶ中で防衛班希望の人は残ればええ。あとは調達班をお願いしんます」


 そうして荒居は次々と食糧調達班の名前を呼んでいく。

 櫻井と呼ばれた男性の話を聞いて何人かは防衛班への希望を出していたが、そうした人達には荒居の激励の言葉が送られ、結局は調達班に参加していた。


 これじゃあの人、参加し損だな。


 そういや俺は名前を呼ばれなかった。

 そりゃそうか、名前知るわけがないのだから。


 けれども、ここを抜け出すには調達班の方が都合がいい。

 手分けする際にそれとなく離脱すれば良いわけだからな。


「すいません。僕も調達班に参加させてください。この中では僕が動ける年齢で1番若いはずですから頑張りたいんです」


 それっぽい事を言いながら俺も手をあげて調達班への参加を志願した。


「そんな! 君はまだ子供なんだからここは大人に任せて」


 櫻井さんが止めに入ろうとするが、荒居が言葉を断つ。


「そうか! 若いのに立派やないか! 君みたいな少年は大歓迎や!」


 そうしてメンバーに混ざる。

 集まった調達班の面々を見ると、大食漢そうな人ばかりが集められていた。

 中には体格が良いというより、ただ横に大きいだけのおっさんも混ざってる。


 こりゃ明らかに建物内でよく食べそうな人達を減らそうとしている。盗み聞きした通りか。

 にこにこしているが、やはりこのおっさんは信用出来ないな。

 離脱する際にも、荒居のおっさんには注意を払っておこう。


「それじゃあメンバーも決まった事やし、出よか!」


 抜け出す算段を立てながら、俺達は車に乗りホームセンターを出発した。

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