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10.確認して収穫整理

「はぁ……はぁ……」


 俺は自宅のソファに沈むように腰かけて息を整えていた。

 いたるところに痣の増えていた俺は先程のことを思い出す。

 あの後部屋をぶち抜いて開けられていた大穴に向かって大ジャンプをし、一か八かで吹き上げるように風を全身に当てて飛んだ。


 目的地に向かって身体を吹き上げる事には成功したが、急速に迫ってくる家に着地は上手くいくはずもなく突っ込むように突撃帰宅。


 本当にヤバかった。


「けれどあれで失敗していたら、ゾンビのプールにダイブだったわけだから、我ながら危機一髪だったな」


「直前に風を使った魔法いっぱい練習しててよかったわね」


 本当だよ。

 

「しっかしあの人達、何考えてこんな事しやがったんだ! 魔法が無かったら死んでたぞ!」


 まさか襲われているゾンビを押し付けられるとは。

 俺は先程の人達の事を思い出しイライラが募る。


「妖精族にはやられたらイタズラ返しって言葉があるわよ! やっちゃいましょうよ!」


 俺の気持ちに呼応するようにフィーもプリプリしだしたが、こいつの場合、面白半分で言っている気がする。

 というか、妖精のイタズラって噂を広めたいだけか。

 フィーの姿を見ていると、だんだんと冷静になって来たな。


 言われてどうしてやろうかとも考えたが、冷静になると単純に関わらない方がいい気がしてきた。


「シャワー浴びる!」


 この事は一旦忘れるよう。



 ✳︎



 汗を流しリビングで一段落して、今日の戦果を確認する。


 食料品は缶詰や乾麺、パンにお菓子に乾き物、一応まだ食べられると思い弁当類も少し持ってきた。

 飲み物もスポーツ飲料からエナジードリンク、ジュース類に酒まで手当たり次第に詰め込んできたので、娯楽としての担保も十分できそうだ。


 食料を見ていたら空腹を感じてきた。

 そういえば、今日はまだ何も食ってなかったっけか。

 俺は炭酸ジュースと弁当を取り出す。

 1人の食事は物寂しいのでフィーの分も聞いてみる。


「フィーも何か食べるか?」


「アズマのそれ美味しそうだから、あたしにも頂戴!」


 俺の取り出した弁当に興味があるようだ。


「分ければいいのか?」


「そうじゃなくて、同じ物をあたしにも1つほしいわ!」


 小さな妖精は食い意地を見せてくる。

 この弁当、フィーの体積の2倍ぐらい量ないか?

 食べきれるのかと思いつつ同じ弁当を取り出してフィーに渡す。


「いただきます」


「いただくわ!」


 妖精にも食事前の挨拶あるんだな。

 フィーと一緒に弁当を食べ始めた。


「ふう。やっと一息つける」


 戦果といえば、今日覚えた魔法も整理しておいた方がいいか。

 弁当を食べながら、覚えた魔法を思い出していく。


 身体強化

 風魔法:風の刃、浮遊(吹き飛ぶだけ)

 炎魔法 弱

 収納拡張

 空間収納


 あとは妖力放出ビームか。


 こうして羅列してみると、まだ細々とした魔法ばかりだな。

 ゾンビに囲まれた時、一気に突破するような魔法が無いので、さっきみたいな状況になると逃げるしか無い。


 今使える魔法で1番強力なのは妖力放出だろうが、これは武器が無いと撃てないし、手から出そうものなら龍魔人や戦闘民族じゃ無いので腕ごと吹き飛びそうだ。


「まだまだ魔法を使いこなせてはないんだろうなあ」


「契約ひはほの日にほへはけ使へえば、十分はほ思うわよー」


 フィーがハムスターのようにモシャモシャと頰張りながら、フォローを入れてくれる。


 たしかに、まだ異変が起きてから1日目なんだよな。

 電気はまだ通ってるし、お湯も出てきた。

 ゾンビがうろついている以外は普通に過ごせているのだ。


 時間としてはそんなに経っていないはずなのに、体感が濃すぎてずいぶん長かったように感じる。


 思い出すと、どっと疲れが押し寄せてきた。


「寝ちゃう前に、壁の穴塞いでおかないとな」


 疲労を感じると眠気が押し寄せてきたので、食べかけの弁当を置いたまま俺は立ち上がる。


 壁のあいた部屋にやってきた俺は、穴から外を覗いてみる。

 案の定ゾンビ達はまだウヨウヨと歩いていた。


「明日はこいつらの事も考えなきゃなあ。これじゃ誰も戻って来れないだろうし」


 結局、家族どころか生きている人達がここに帰ってくる事は無かったが、それでも家の周りを歩かれているのでは、都合があまりよろしくない。


 明日のやる事を考えながら俺は横の壁に手を当て、壁の修復に入る。


 修復方法は、無事な壁部分の増殖。

 穴に向けて周りのコンクリートが増殖するようにイメージをしてみた所、壁はみるみると塞がっていった。

 無機物だしこんなもんだろうでやってみたが、簡単に出来たな。

 物のイメージが上手くなってきたのではなかろうか?


 修復が終わり、なかなか綺麗に塞げたのではと自画自賛しながら残こりの弁当を食べにリビングへと戻ると、フィーの上機嫌な声が聞こえてきた。


「アズマ! 要らないのかと思って食べちゃったわよ!」


 満足げな顔で頬に米粒をつけた妖精に、綺麗に平らげられた弁当の空を見せられる。

 弁当の容器は2つとも米粒1つ残っていなかった。



 寝るか。


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