親と子
小説っぽくない小説です。スピーディーに読めるようになっています。
誤字警察の方々宜しくお願いします!
ドーラ父が目を覚ますと、彼は柱に縛られていた。
「恋とはなんじゃ?」ドーラがジルの眼を真っすぐに見る。
「知るか!」とジル。
「外の人間のくせに何も知らんのか!」
「あのな、俺達は親から愛しか教わってないの! 義務教育でもエッチは教えても恋は教科書には載ってませーん!」
不満げのドーラ。
頭を掻くジル。
「まあ、なんだ。俺の師匠は、恋は芽吹くものだと言ってた」
「芽吹く?」
城下の夜桜を眺めながらジルは続ける。
「恋が芽吹くとき、世界が美しく見えるらしい。俺もまだ芽吹いてないし、というか芽吹きそうにないけど、お前はいつか芽吹くといいな」
「童は恋がしてみたい……」
ドーラの切実な姿にドーラ父は不意に妻を重ねてしまった。
「約束を破るところだった……」
ジル達はドーラ父に視線を向けた。
「頭を冷やさねばな……」
ドーラ父はブツブツと何か言っている。
「自己完結型なのかな?」とジル。
「もう敵意を向けはせん。縄を解いてくれないか?」
ジルは柱に短剣を投げつけ、縄を斬った。
暫くして、ドーラ父は語り出した。
「娘は、全てを可能にする。ワシに魔法が効かないのも娘の妖術によるものだ。娘がまだ幼少期の頃、娘がワシにかけてくれたものだ。だが、万能な能力には、やはり代償があるものだ。娘の代償は死だった。だが、ワシの妻が妖術で娘から自身に死を移したのだ。以来、この噂を聞きつけた者は娘を利用しようとし、守るためにはこれしか思いつかんかった。娘が窮屈しているのは理解している。だがこれしかないのだ。だから娘を外に連れ出さないでくれ」
ドーラ父は、頭を畳に付けた。
タナカとカキとアッキはジルを見る。
え、俺が応えるの?
ジルは深いため息を吐いた。
「まず頭を上げてください。俺達はドーラを連れ出す気はありません」
ドーラ父が頭を上げると、ジルは嫌そうな顔をしながら頭を掻く。
「ドーラ。お前は父を納得させる、心配させない努力をしろ。お前は一度でも自分の妖術について研究したことはあるのか?」
「し、調べてはおるぞ! 代償の少ない妖術なら何度も————」
「足りない足りない。努力が足りない。勉強して自力で出れるようになれや。
それと、外の世界は残酷だ。お前の能力を知った途端に手の平を返すのは当たり前。日常茶飯事だ。お前が本気で外に出たいのなら、お前を唯一裏切らない父を裏切るな」
言ってて嫌になる。努力そんなしてない人に努力しろって言われるのブチギレ案件なんだが。
黙り込むドーラ。
「じゃ俺達は宿に向かうんで」
「待つのじゃ」
ドーラがジルの袖を掴んだ。
「褒美をやっておらん」
「いや、俺ら何もやってないし」
「つべこべ言わず受け取るのじゃ」
「はいはーい」
タナカ、カキ、アッキ、ジルの順に横に並んだ。
「ちゃんと自分の妖術について調べておるわ」
ドーラはジルに対する文句を垂れ流しながら、一人ずつ頭を触れていく。
タナカ、カキ、アッキは同じ間隔で妖術を施していたが、ジルへの施しがやけに長い。
「バンダナをとれ。ちゃんとできん。後、おでこを見せんか」
ジルは言われた通り、バンダナをとって前髪を上げた。
「うん? その年でハゲ始めて————」
「遺伝なんだよ!!」
「すまんすまん終わったのじゃ。お前たちにはセンス向上の妖術をかけた。魔法使いはより効率良く魔法を、狩人はより洗練された命中率と身体能力を、タンクのアッキじゃったか? 次は父上と良い勝負ができるくらいには強くなるだろう」
沈黙が流れた。
え、終わり?
一人だけ何も言われないジル。
ドーラはスマホを出し、ジルに向けた。
「連絡先を貰ってやるぞ」
「次のデートでも決めるのか?」
「其方を男として見た覚えはないぞ」
「めっちゃ泣かせにくるじゃん。じゃ連絡先交換しなくても良くない?」
「聞いておかないと後悔するぞ?」
まあ減るもんじゃねーし、いっか。
ジルはドーラと連絡先を交換した。
「じゃぁ、これから毎晩ビデオ通話じゃからな」
「…………は?」
「童は妖術を使いすぎた。眠いので寝る。」
ドーラは半壊している部屋で布団を敷いて爆速で寝だした。
「おそらく三日は目が覚めないだろう。代償が幼少期より低レベルになっておる。本当に努力をしていたようだ」
ドーラ父は至って真顔でそう告げるのだった。
という事は、鬼の都には一泊、帰るのに二日だから、ニューラインランドで強制ビデオ通話か。
嫌な予感しかしない……。
明日も18時頃に更新します。