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鬼の都、決戦の夜 後編

真面目回におふざけは付き物。楽しんでいただければなぁと思います!


誤字あったら誤字警察の方々宜しくお願いします!

「そこを止まれ!」


 天守閣の門番に囲まれるジル。

 ジルは大人しく手を挙げて投降している。


 ジルは城の内側へ連行されていった。


「あいつ本当に捕まったけど大丈夫か?」


 アッキは不安そうである。


「盗賊のジルが1人で入った方が確実なんだよね。俺たちはそういう技術ないから一発でバレちゃうもん」


 タナカがカキとアッキと風魔法で浮遊させながら説明する。


「うまくやれよジル」アッキは呟いた。



 広い城内の天守閣から離れた地下牢に閉じ込められるジル。


「ここで明日まで大人しくしてろ」


「へーい」


 はい。とは言っていない。へーい。である。


 看守の姿が見えなくなって、ジルは当たり前のように手錠を解錠した。牢屋の鍵も事前に看守から盗っていたため、すぐに牢屋を出れた。


「さて、行きますか」


 ここからはスピード勝負である。


 次に看守が見回りで牢屋に来るのが30分後。

 それまでに鬼姫ドーラを連れ出さなければならない。


 ジルは天守閣に着くと、城壁を重力に逆らって歩き出した。

 楓恋流歩行術————————スパイダー


 あっという間に天守閣最上階である。


 一応レディだし、ノックはするか。


 コンコンコン。


「入って良いぞ」


 中から女性の可愛らしい声が聞こえてきた。


 丸窓を開けるジル。

 月夜に照らされた鬼が目に入った。


「お前がドーラか?」


「いかにも」


 鬼姫ドーラは、絶世の美女であった。

 肌は艶やかな薄ピンク。頭に桃色の角が二つ。髪はストレートの銀髪で腰まで伸びていた。


 ナニコレカワイイ!!

 え、こんな可愛いの姫って!!

 どうしよう緊張しちゃう!!


「実物より写真の方が良いな。写真もイマイチではあったが」とドーラ。


 こいつ助けるのやめようかなぁ。

 ジルの先程の緊張は完全に解けてしまった。


「で、ここから出たいんだろ?」


「うむ。頼んだぞ」


「条件がある」


「なんだ? 童はこの国の姫じゃ。褒美くらいはくれてやる————」


「親からの許可をもらってこい」


 ドーラの表情に雲がかかった。


「それは、童にここから出るなという解釈で良いか?」


「許可取れたら連れ出してやる」


「それじゃ意味ないだろ!」


 ドーラは自室の丸テーブルを叩いた。

 この悲痛な音を最後に部屋に沈黙が流れた。


 外から警備隊の騒がしい声と警報が鳴り響いた。

 もうバレたのか。早いな。


「同情はしないぞ。お前がたとえ一人でここを出ようと、俺以外の誰かにまた頼ろうと、お前は外では生きれない。自力で運命に抗えないなら運命に従え」


「其方は本当に人間か?」


「半分はな。なんだお前、人間が皆お前に優しいと思ってたのか?」

 

「其方よりはな」


 心外な。お前をここで勝手に連れ出すのは優しさじゃない。


「お前は『恋来い!!』で毎日のように誰かにメッセージを送り付け、数々の男をここに呼び寄せたはずだ。そいつらはどうなった?」


 ドーラは少し黙って、それから躊躇うように語り始めた。


「多くは来なかった。門まで来たのが5人。城の内部に侵入できたのは4人。けれど、全員父上に殺されたわい。ここまで来れたのは其方1人じゃよ」


 よし、連れ出すのはやめよう。今ならまだ見逃してくれる。


「多くは多分、都で鬼に絡まれて痛い目見たんだろうな。盗賊をパーティーに入れた奴らだけ城まで来れた感じだろうな概ね」


「来てくれて嬉しかったぞ。誰かと話せたのは久しぶりじゃ。少しの間だったが楽しかったぞ」


 月夜に照らされたドーラの瞳が潤んでいた。

 無理に笑おうとするドーラ。


 ああ、マジでそういうの困るって! 良心痛むんですけど! キレそう!

 頭を掻くジル。


「門で死んで、城内で死んで、今度は天守閣最上階まで来て会話。良い進歩じゃないか。次は、お前を連れ出せるほど強い男に出会えるといいな」


「そうだな。そうだと良いな」


「そんな日は二度と来ない!!」


 ふすまが突き飛ばされた。


「父上!!」


「父上!?」ジル、現れた大男にビビる。


 薄ピンクの肌に黒く禍々しい刺青が複雑に描かれている。

 間違いなくヤバい!!


 ジルは、タナカに光で信号を送る。


「カキ!!」とタナカ。


「はいよ」カキは弓でジルの短剣を射る。


「死ね!! 子ネズミが!!」


 ジルに大剣が降りかかる。

 ジルは身を翻し、紙一重で躱した。


「怖っ……」

「小賢しい」


 振り切られた大剣は部屋の壁を消失させた。


 月夜に紛れ、ジルの短剣がジルの頭目掛けて迫ってきた。

 ジルはこれを頭を逸らして回避し、ドーラの父に流す。

 しかし、流石この国のトップ。短剣を簡単に避けた。

 ここまではジルの想定内ではあるが。


 楓恋流奇術改良版————蛇猿ヘビザル

 ジルはドーラの父が躱す瞬間に、短剣を手にとって身体を回転させながら3連続でドーラ父を斬った。


 8つに割れたドーラ父の腹筋に切り傷が3つでき、赤い血が流れている。


「落ち着きましょうよ、お父さん。僕は娘さんを説得しに来たんですよ。攫いに来たわけではありません」

「信用できるか!!」


 先程より豪速で振り下ろされる大剣。

 短剣を逆手に持ち、構えるジル。


 だが、その大剣はアッキによって止められた。


「待たせたな!!」とアッキ。


 頼もしすぎる。


 タナカとカキも天守閣最上階に到着した。


「ほう、ワシの剣を止めるとは! その黒い角、デストロイ家の者か!」


「カキ、3分持たせる! その間に残りの家来2人を!」


「了解!」


 アッキはドーラ父と一騎討ち状態だ。長くは持たない。

 というか3分も持つのか?


 カキは家来の1人に矢を連続射撃する。

 タナカはもう1人の家来を魔法で拘束する。


 楓恋流奇術————毒壺

 タナカが拘束した家来は、ジルに首を指圧され、泡を吹いて気絶した。


 ひたすら弓を射るカキ。家来に矢を躱され、弾かれてどんどん距離を詰められていた。

 カキはまた、もう1本のジルの短剣を取り出し、家来に向けて発射した。

 家来は一度この攻撃コンボを見ている。

 にやっと笑みを浮かべる家来。

 家来は、短剣を躱しつつ、自身の背後で短剣を掴んでいるジルに斬りかかった。

 だが、タナカが拘束魔法でそれを阻止する。

 

 楓恋流奇術改良版————蛇猿

 ジルの回転3連撃で倒れる家来。


「ジャスト1分倒し————————」


 ジルの腹にドーラ父の拳がめり込んだ。

 ジルは突き飛ばされ天井に突き刺さった。


「ジル!!」とカキ。


 タナカは倒れているアッキに回復魔法をかける。

 

「小賢しい盗賊の次は邪魔な魔法使いだな!!」


 カキ1人じゃ戦力不足である。


「待って父上! この人たちを殺さないで欲しいのじゃ!」


 ドーラが両手を広げて、父の行く手を阻んだ。


「ダメだ! お前が決める事ではない」


「じゃあ何なら自分で決めていいんですかー?」


 ジルが天井から顔を出した。


「ジル! お前俺のバフがなかったら死んでたぞ!」タナカがキレている。


「助かった! ありがと! まじでチビるかと思った!」めっちゃ笑顔のジル。


「やはり魔法使いから殺すべきだったな!!」


 ドーラ父がドーラを押し倒してタナカに真っ直ぐ跳んで行く。


 だが、またもや振り下ろされた大剣は途中で止まった。


「3分は言い過ぎた」とアッキは大剣を止めてみせたのだ。


 上半身がはだけてしまったアッキ。アッキの褐色肌に黒く複雑で、美しい模様が刻まれていた。


「流石デストロイ家。ワシの攻撃を2度も止めるとはな。小鬼の中で唯一大鬼に対抗できる異質の鬼族よ。お前は生かしてやる! ワシの部下にする!!」


「おんんんんもぉおお!!」大剣を耐えるアッキ。


 タナカは魔法で攻撃するが、ドーラ父には魔法が効かないようだ。

 全力で全員のバフ掛けとアッキの回復に専念するアッキ。


 ドーラ父は片手に大剣を、もう片方の腕と脚でカキとジルを簡単にあしらっている。


 これ勝てなくね? バケモンだろコイツ。

 何か策を考えなければ————————。


「ジルといったか!」


 ドーラがジルに近づいた。


「なんだこんな時! こっちとら明日の朝飯何食うか考えてんのに!」


「こんな時に!? ふざけている場合ではないぞ。このままでは父上には勝てない」


「このままでは?」


「私の妖術をお前に掛ける」


「え、それ大丈夫なの? 俺爆発とかしない?」


「せん!!」


「後でお金取るとかない?」


「ないわ!! その代わり、父から許可貰う手伝いを所望する」


「うわぁ、怠っ!」


「それと、許可が取れたら童を連れ出しておくれ」


 背中に温かみを感じる。これが妖術。



 いや、これは————————おっぱいだ!!



 ドーラの豊満な胸を背中に感じたジル。

 なんか急にやる気出てきた。


「よし、勝つならもうあれしかないな」


「勝つ算段がついたのか?


「あぁ。とっておきの最低な方法をね」


 ジルは俊足でドーラ父に駆けていった。


「タナカ!! 『オペレーション:没』だ!!」とジル。


「まじで!! あれをやるの!?」驚くタナカ。


「賭けるしかないか! 男の性に!」活気が戻るアッキ。


「ラストスパートだ!」


 ジルはカキと目で合図し、ドーラ父に攻める。


 カキの放つ弓を背中にジルは突進していく。


「同じ手は通じないぞ盗賊!!」


 ジルは右手の短剣を床に向けて手放した。

 するとドーラ父の視線はそれに吸い込まれていく。

 その隙にジルは左手の短剣を投げつける。

 すかさず躱すドーラ父。

 弓に紛れて、ジルの3本目の短剣がカキによって発射された。

 これも躱すドーラ父。

 今度もジルが短剣を取るかと待ち構えていたドーラ父だったが、急に視界が何かに支配された。


 ドーラ父の視界に現れたのは、服を着た女性のマネキンであった。

 ドーラ父の視線はマネキンの胸の谷間に一瞬吸い込まれてしまった。


 その一瞬の隙をジルは逃さない。

 

 ジルがカレン師匠に、半人前ながらも認められている理由。それはジルの殺人術にあった。ジルはセンスがなくてどうしても殺人術で人を殺せない。カレン師匠の殺人術を模倣しても中々真似できず、だんだんと変な癖が付き始め、殺せない殺人術になってしまった。

 

 盗賊の殆どは逆にジルを真似できない。彼らはどうしても人を殺してしまう。

 殺人術であるため、どれだけこれを加減したところで殺す事しかできないのがプロ達の苦悩でもあった。カレン師匠は数少ない殺さない殺人術ができる人だった。

 だからジルはカレン師匠に気に入られている。


「これで終わりだ」


 楓恋流殺さずの殺人術————スパークインジェクション


 半人前の段階で殺さずの殺人術を習得してしまったジルは、限りなく殺人に近い峰打ちが可能なのだ。

 ドーラ父は、ジルに胸部を強打され、泡を吹きながら倒れた。


「勝てた!」


 満面の笑みのジルであった。

次回もお楽しみに!!

毎日投稿です!! 22時までには出します!!

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