鬼の都、決戦の夜 前編
ちょっと真面目な回に突入していきます。
ではでは。
鬼の都に到着した。
半日で到着した。
本来なら二日かかるはずの距離をたった半日で到着した。
「お前良くあんな運転で免許取れたな!!」タナカ、激怒である。
「良いストレス発散になったぁ」と伸びをするジル。
ハンカチを拾っただけで、ブチギレられたのだからストレスが溜まるのは仕方ない。
だからと言って、直線距離で、しかも時速300キロで、崖や川も関係なしで走るとは、流石のジルの友達3人も知らなかった。
「帰りは運転するなよ。当分お前は運転禁止だ」
タナカ含め3人はヘトヘトである。
「股間が何度もふわっとなって、死ぬかと思った」とカキ。
「一生分は死んだ気がする」とアッキ。
4人は腹が減ったので取り敢えず酒場に入った。
鬼の都。
肌の色が赤、緑、青、黒、肌色と様々である。
鬼の里出身のアッキが言うには、鬼の身体には刺青があり、刺青が複雑な程階級が上である。
なので、男の鬼は皆、基本的には上半身裸で、上着を着ているのは女の鬼である。
男で上着を着ている鬼は女性的と見られ変態扱いされるか下に見られるらしい。
だからといって、ジル達は脱いだりはしない。
観光客だもの。
「見ない顔だな」赤い鬼に話かけられる。
「ニューラインランドから観光で来ました」タナカが受け答えをいてくれる。
テーブルに座り、各々酒を頼むと、鬼たちが次々と絡んでくる。
「おい、財布返せ!」ジルが赤い鬼に眼を飛ばす。
「あん? 何のことだ」
「返さないとお前の財布も返さんぞ?」
ジルは赤い鬼の財布を見せつける。
「チッ!」
赤い鬼はポケットから財布を取り出した。タナカの財布だった。
「いつの間に!?」驚くタナカ。
ジルは赤い鬼に財布を返す。
カキは自分も奪われていないかポケットを確認する。
アッキはずっと左手をポケットに突っ込んでいた。
「やべぇ、俺の財布ないなった」とカキ。
「さっき小鬼に盗られてたぞ。ほらよ」ジルはカキに財布を返す。
「天才か?」とカキ。
「取り返すついでに小鬼の財布を掏ってきた。今夜は俺の奢りだ」とドヤ顔のジル。
「カッコいい」とアッキ。
「おい!」と赤い鬼がジルに向かってくる。
「なんだ? まだ要があるのか?」とジル。
「とぼけるな! 俺の財布の中身が空になってるだろうが!」
「おいおい、最初っから入ってなかったんだろ? 俺のせいにすんなよ」
「お前、俺様を誰だと思ってるんだ?」
赤い鬼には深紅の刺青が広くあった。鬼は強い。ジル1人では到底太刀打ちできないだろう。
溜息を吐くジル。そして赤い鬼の財布を指差す。
普通に、当たり前のようにお札が入っていた。
「チッ! 今回は見逃してやる」と赤い鬼。
赤い鬼がジル達の前から去った後、ジルはニヤニヤし始めた。
「俺は見逃さないぞ。クソ鬼」
ジルがそう呟くと、酒場の入口付近で喧嘩が始まった。
赤い鬼が他の鬼に殴られている。
「お前なんかした?」と呆れるアッキ。
ニヤニヤが止まらないジル。
ジルはこの酒場に入って、座るテーブルを選ぶふりをして、刺青の複雑な鬼の財布を掏った。
盗んだ財布の金だけを引き抜き、お金は赤い鬼の財布に、盗った他の鬼の財布は赤い鬼のポケットに忍ばせておいたのだ。ポケットからはみ出てみえるように忍ばせたため、ジルに財布を盗まれた他の鬼は赤い鬼に盗られたと勘違いしたのだ。
喧嘩に巻き込まれた他の鬼たちも喧嘩に混ざり、酒場は大混乱である。
「とりあえず、モノが飛んでこないようにシールド展開しとくね」とタナカ。
「ご、ご注文のお酒です」
お店のバイトの鬼娘が怯えながら酒を運んできた。
ジルは、『恋来い!!』でドーラに到着したことを報告した。
秒で返事が来る。
都の中心の建物の最上階に来てほしい。
「都の中心の建物?」ジルは呟く。
「天守閣ですか?」と鬼娘。
「天守閣?」とタナカ。
「はい。都の中心の建物は天守閣ですが、立ち入り禁止なので観光はでないと思います。あそこには、この鬼の国の姫様がいるのです」
それを聞いて黙り込む4人。
初耳なんだが……。
「詳しい話いいか?」とジルは鬼娘にチップを多めに渡す。
「こんなに受け取れません!」と鬼娘。
店への迷惑料込です。元凶なのはバレてないけど、一応ね。
「いいから受け取って」
鬼娘は何度もお辞儀をし、大事そうにお金を両手で包んだ。
「姫様は生まれつき妖術に優れていらっしゃって、その妖術を目当てに沢山の悪人が姫を攫いに来るらしいのです。それも毎日のように。なので天守閣は常に厳重な警備体制をとっているんです。だからあそこは観光客の皆様が行くと国際問題にもなりかねないかもしれません」
「おい、ジル話が違うぞ」とアッキ。
「俺も知らない」とジル。
これ助けない方がいいんじゃね?
とは言っても約束しちまったしな。
鬼娘にはお礼を言い、ジル達は作戦を練る。
「俺に無難に済む案がある」とジル。
「言ってみろ」とアッキ。
「アッキ、カキ、タナカは空で待機していてくれ。俺1人で入る」
「それは無茶だろ。盗賊でも入れないくらいガードは堅いだろ」とアッキ。
「うん。それは厳しいかも」とタナカ。
「大丈夫。俺は堂々と正門から入るよ」
ジルは至って真剣な顔でそう告げるのだった。
真面目な回になった理由としては、日本では気が緩んでいるけど、海外では気を引き締めている。そんな感じを出したかった感じです。タイムズスクエアは良く観光客が財布掏られますし、実際に知り合いも掏られてますしね(笑)
今後とも、うちの童貞達を温かい目で見守っててください!(笑)