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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第4章 魔王と呼ばれているなんて知らなかったよ⁈
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54話 村からの旅立ち

ソーリンがデピッケルに戻って二週間後、彼が再びヤブネカ村にやって来た。

今度は、1頭の馬に乗馬してではなく、4頭立ての4輪大型幌馬車でだ。


「凄い大きい馬車だね」


馬車には、なんと個室 (更衣室)や寝台まである。わざわざ改造してくれたのだろう。

村の人達も、見た事のない大きさの馬車に驚いている。


「交渉用の積み荷がありましたので、これが精一杯のスペースでした。申し訳ないです」


「充分だよ。俺が居るから積み荷が増えても心配いらないからね」


「はい?」


「ああ、気にしないで。道中で話すよ」


「それで、お二人は?」


「ああ、しばらく帰らないから今、皆んなに別れの挨拶をしてきてる。あ、来たみたいだね」


噂をすれば、なんとやらで二人が駆けてくるのが見える。


「お待たせ。食堂から、ちょっとだけ調味料を貰ってきたよ」


「私の方も、今後の課題やらの引き継ぎは終わりました。心置きなく出発できます」


車高も普通の荷馬車より高いので、折り畳みできる踏み台を取り出して、三人は馬車に乗り込んだ。


「それにしても、かなり大きい馬車ね。まるでバスだよ」


「ええ、流石はバルグ商会、ソーリン君の本気度の高さですね」


「アラヤさんならと、父が許可してくれたんですよ。私が結果を出さないと、周りから親バカと言われそうですね」


御者台にソーリンも座り、手綱を取って馬の操縦を始めた。村の皆んなが、手を振って見送ってくれる。


「ここはお前達の故郷だ。たまには帰ってこいよ!」


「ライナスさんも、帰って来た時にまだ式を挙げてないなんて事にならないようにね?」


「うぐっ、…おうよ!」


ベスさんにプロポーズをしたのに、なぜ挙式を未だにしないのかは分からないよね。このままじゃ、ベスさんが可哀想だし。


「「「気をつけてね~!いってらっしゃ~い!」」」


見えなくなるまで、子供達も元気に手を振ってくれていた。お土産を沢山持って帰らないとね。


馬車は、段々とスピードを上げ、あっという間に光の丘の近くまで来ていた。


「ソーリン、行き先は決まってるの?」


「はい。最初に向かうのは、ポスカーナ領の最西部にある港町、カポリです」


「港町!久しぶりの海魚が食べられますね!」


「塩焼き、刺身、寿司、海老天、蟹…ああ、思い出しただけでよだれが出てくる!」


脳裏に蘇る海の幸の料理に、三人は想いを馳せる。


「あの…皆さん、大丈夫ですか?」


「ん?ああ、大丈夫だよ。ちょっと皆んなのモチベーションが上がっただけさ」


そう言うと、4頭の馬の操縦を一人で熟すソーリンの隣にアラヤも座る。


「その港町町まで、どれくらいで着く予定?」


「えっと、早くて8日ぐらいですね。途中、森林地帯がでありますので速度が落ちますからね」


「そっか。なら、今の草原地帯のうちに時短をしよっか。ムーブヘイスト!と、グラビティ!」


「え?うわっ⁉︎」


4頭の馬の速度が、突然ぐんと上がる。通常の倍近い速さだ。


「な、何をしたんですか?」


「無属性魔法のムーブヘイストとグラビティだよ。馬には移動加速と、馬車には軽量化を掛けたのさ。これなら、かなりの時短が可能だよ」


「そういえば、アラヤさんは魔法剣士でしたね。こんな魔法があると、物流は更に増えますね!」


「ソーリンは、俺達のステータスをガルムさんから聞いてる?」


「はい。皆さんの大体のステータスと職業は伺ってます」


アラヤは、アヤコさんとサナエさんを見ると、二人は軽く頷く。アラヤの技能は元々少しは教える予定だったけど、ある程度なら二人の技能も教えても構わないという判断だ。


「ソーリンとは長い付き合いになるだろうから、俺達の技能(スキル)を教えておくよ。後から人が多い時に驚かれても困るからね」


技能(スキル)ですか?」


「ああ。先ず、俺達は三人共に魔法が使える」


「ぶっ!さ、三人共ですか⁈」


吹き出して、危うく手綱を落としそうになる。頼むから、操縦は間違わないでね?


「アヤコさんは無属性魔法、サナエさんは光と闇属性魔法、俺は全属性魔法を使える」


「うわぁ…全属性持ちって、王国上級魔道士しか知りませんよ?」


「それと、アヤコさんは技能で念話やコールという遠距離通話可能な技能を持ってる。サナエさんは、舞によってバフ、デバフを引き起こせる。そして、俺にはガルムさんにも秘密にしている特殊な技能がある」


「父にも秘密にしている技能⁈」


「亜空間収納だよ」


「あ、亜空間収納~‼︎⁉︎」


驚きのあまり、馬達の手綱を引っ張りブレーキを掛けてしまう。馬車は土煙を上げて何とか倒れずに止まった。


「急に止めると危ないよ、ソーリン」


「いやいやいや、アラヤさん、貴方は分かってない!亜空間収納なんて超希少な技能、バレたら大変な事になりますよ⁉︎」


「分かってるよ、だからガルムさんにも黙ってたんだよ。教える相手は選んでるよ。この意味は分かるよね?」


父 (ガルム)には教えなかったのに、ソーリンには教えてくれた。それは、これから先、信頼できるパートナーとして選ばれたという事だ。


「分かりました。信頼してくださったのは、本当にありがたいと思います。しかし、他人に絶対にバレないように使用して下さいね?」


「いろいろ考えて、一番自然な使い方は、箱や袋の中から取り出すように見せるのが良いと分かったよ。あと、熟練度がまだ1だから、収納できる量に限界があって少ないんだ」


「水と砂を用いた実験を行った結果、亜空間収納には重量や形状は関係ない事が分かりました。ただ、体積量によって収納スペースが減ると分かり、今のレベルだと砂を詰めた40センチ四方の木箱が、60個程度しか入らないというのが現状です」


冷静に、アラヤの技能実験結果を話すアヤコさんに、ソーリンはいやいやと手を振る。


「それだけ入れば充分ですって!」


「とにかく、バルグ商会の一員として、恥じない働きができると思うよ」


「恥じないどころか、バレるのが怖いですよ。でも、確かにそうですね。これからの私達の頑張り次第で、デピッケルの商工会会長であるヴェストリ商会に勝てるかもしれませんね」


少し落ち着いたソーリンは、再び馬車を動かし始めた。


「その、ヴェストリ商会って、かなり大きいの?」


「そうですね。最近までうちと同等くらいの商会だったのですが、1、2ヶ月前くらいから急成長しましてね。何でも、新たに入った人間のおかげだって聞きました」


「新たに入った人間?」


「とても狡猾で強欲な人間らしいです。名前は確か…ヨウジ=ゴウダだったかな?」


「「「郷田⁉︎」」」


三人は、あの郷田洋二を思い出した。いつも荒垣の後ろにいたキツネ目のクラスメイトの男だ。


「まぁ、表立って出てこない人物みたいですよ。やり方が汚いらしく、多方面から命を狙われているのかもしれませんね」


郷田が命を狙われているのは自業自得だろう。別に助けたいとは微塵も感じないな。しかし、あんな奴も生きていたとはね。


「まさか、大罪の魔王だったりして…」


「ああ、そんな噂もありましたね。しかし魔王なんて居ませんよ。あんなの、ただのお伽話ですから」


噂はあったのかよ!それなら、勇者に狙われてるんじゃないのか?

そんな噂が立たないように、俺も気を付けないとね。


「隠れているなら、今こそ巻き返しの時ですからね。アラヤさん、私達の頑張りで追い抜いてやりましょう」


ソーリンのやる気に頷きながらも、目立ち過ぎには注意しようとアラヤは思った。これからの旅は、どこに勇者がいるかも分からないから。でも、ソーリンの仕事はちゃんと協力はするからね?

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