33話 アラヤ師匠
翌朝、モドコ店長が自らの手で御者をする荷馬車に、フユラ村のタオとハル、護衛役としてアラヤとザックスが同乗した。
「それではお願いします」
二頭の馬に鞭を入れ、荷馬車はゆっくりとヤブネカ村を出発した。向かう先のフユラ村は、ヤブネカ村から西の方にある光の丘方面へと向かい、その手前から北に向かって進んだ先にあるそうだ。
本来なら北の森から橋で川を渡り西に向かう方が早いのだけど、子供達に配慮して遠回しにしたのだ。
光の丘までは至って平和で、時折スライムを見かけるくらいだ。だから、道中の雰囲気が暗くならないように、ザックスが話を振ってきた。
「なぁ、アラヤ。アヤコさんは、何であんなに足が早かったんだ?」
「ああ、あれは無属性魔法ですよ」
「魔法か、羨ましいなぁ。そういえばアラヤも使えるんだったな。俺は走りでアヤコさんに負けた上に、コイツらを助ける際にも、敵を引き寄せる事しか出来なかった」
しかし、ザックスが敵を引き寄せてくれていたおかげで、アヤコさんが動けた事をアラヤは知っている。彼の行動無しには、全員が無事という事にはならなかっただろう。ここは一つお礼をするべきかな。
「良かったら、覚えられるか試してみますか?」
「そんなことができるのか⁈もしできるなら頼む!そうだ、タオやハルも一緒でいいか?」
「えっ?僕達もですか?」
「大丈夫だよ。ものは試しさ。自分に何の属性が合ってるかを知るだけでも損じゃないと思うよ」
「分かりました。お願いします」
先ずは、三人の鑑定する。
ザックス
種族 人間 (ノーマル) 男 age 28
体力 265/265
戦闘力 168/168
耐久力 131/131
精神力 85/85
魔力 69/69
俊敏 119/119
魅力 48/100
運 28
状態 正常
職種 斧兵
技能 斧技LV 1 トマホークLV 1 大木断LV 1
タオ
種族 人間 (ノーマル) 男 age 10
体力 88/88
戦闘力 56/56
耐久力 43/43
精神力 65/65
魔力 70/70
俊敏 82/82
魅力 53/100
運 31
状態 正常
職種 絵師
技能 デッサンLV 1 空間認識LV 1
ハル
種族 人間 (ノーマル) 女 age 8
体力 52/52
戦闘力 35/35
耐久力 31/31
精神力 21/52
魔力 83/83
俊敏 42/42
魅力 42/100
運 21
状態 不調 (車酔い)
職種 人形師
技能 おままごとLV 1 傀儡LV 1
おっと!ハルちゃん車酔いしてるじゃないか!何も喋らず俯いてるのは普段からじゃなかったんだね。
「モドコ店長、そろそろ少し休憩しませんか?」
「そうだね。馬も疲れてきてるからしばらく休むとしよう」
四人は道沿いにある木陰に腰を下ろす。ハルちゃんに光属性魔法のキュアーを掛けて酔いを和らげる。
「…ありがとう」
小さな声で感謝された。ああ、可愛いね。だけどね、お兄さん気になってるんだよね~。傀儡って何だろうね~?職種の人形師ってのも気になるよね。人形使いみたいなものだろうか。
「丁度良いので、ここで軽く練習しましょう。俺が、今から各属性の魔法を一つずつ使っていきます。俺が魔法の名前を唱えたら、同じように唱えてください。俺の魔法は詠唱が無いので簡単ですよ」
「簡単って、それなら皆んなが使えてるだろうがよ」
ごもっともでした。まぁ、感覚共有を覚えたからできる芸当だよね。
「俺が皆んなに魔力の流れを体験させるから、自分に合った魔法だった場合は体が分かる筈だよ」
三人に感覚共有を掛ける。それぞれを横一列に並ばせて、利き手を前に出させる。
「じゃあ、始めるよ。先ずは火属性魔法から。いくよ、フレイム」
「「「フレイム」」」
それぞれが唱えるも変化無し。うん、そんな気はしてたけどね。
「次は水属性魔法、ウォータ!」
「「「ウォータ」」」
「あっ!出たっ!」
初めに魔法が使えたのはタオだった。水属性の適性持ちだね。凄い喜んでる。そうなるよねー。でもまだ終わって無いからね。
「そのまま続けるよ。次は風属性エアカッター」
「「「エアカッター」」」
「誰もいないね。じゃあ次は土属性魔法、アースクラウド」
「「「アースクラウド」」」
「ん?何か変な感じがするぞ」
「うん。足元を見てください」
ザックスの足元の土がモコっと盛り上がっている。彼はまだ力が弱いから、動かせるのはこの程度という事だ。
「ハル!凄いじゃん!」
タオの声で振り向くと、ハルの足元にも土が動いていた。しかもその力は強く、人型の土人形を作り上げていた。
「おお…」
ザックスさんの感動が薄れてるよ。まぁ、練習すればザックスさんもできるさ。
「次行くよ~。次は光魔法、ライト」
「「「ライト」」」
「ん~居ないね。次は闇属性魔法、ダークブラインド」
「「「ダークブラインド」」」
「うわっ!前が見えなくなったぞ⁈」
「ハルちゃん、使い方は合ってるけど、味方には向けないでね?」
闇属性魔法を使えたのはハルちゃんだった。そんな気はしてたんだよね。慌てるザックスさんの盲目状態を解除してあげて、最後の魔法に取り掛かる。
「じゃあ、次は最後。無属性魔法、グラビティ」
「「「グラビティ」」」
「居ないね。結果は、ザックスさんは土属性魔法、タオ君は水属性魔法、ハルちゃんは土と闇属性魔法の二つの適性があったね!皆んな、おめでとう!」
「うぉーっ!」
「水か、凄いなぁ!」
「…嬉しい」
うん、皆んな喜んでるね。ステータスにもそれぞれに適性魔法が発現してるよ。
「今の感覚を覚えてて、自主練をちゃんと続ければ、同属性の違う魔法を覚えるからね?魔力切れになるような、無理しない程度に皆んな頑張って」
「「はい」」
「ていうか、アラヤ。お前は全属性持ちなんだな」
あ、バレちゃいました。誰彼構わず教えちゃ、やっぱりマズイよね。
「他言無用でお願いします」
「分かりました、師匠~」
「うん、喋らない。安心して、ししょ~」
何故か師匠扱いされてしまった。うん、可愛いから認めちゃう。悪い使い方しないように教えないとね。
「アヤコさんにも、こうやって教えたんだな?そりゃ、憧れるよな~」
アラヤばっかりズルいなぁと、ぶつぶつ言うザックスさんに、ハルがそっと触れて宣告する。
「ししょに、迷惑かけたら、メッ!するからね?」
「うん、しないよ~」
ザックスさんも、ハルの可愛いさに弱かったようだね。
「おーい、アラヤ君。そろそろ出発しようか?」
「分かりました!さぁ皆んな、乗りましょう」
再び出発する荷馬車。今度はハルちゃんが酔わないように、クッション代わりに布団を亜空間収納で取り出したら、それは何魔法だ?とうるさく聞かれた。魔法でもあるかもしれないけど、俺のこれは技能だからね。
荷馬車は光の丘を越えて、北へと進路を変える。今までは腰辺りの草原地帯だったが、草木の高さが段々と高くなり始める。
「ここからは、ちょっと警戒が必要になるぞ」
ザックスさんのトーンが変わった。ここからちょっとした魔物が出るのかもしれない。それなら、いろいろと食べて回らないとね?アヤコさんに宿題として言われてるし。




