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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第3章 スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎
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28話 ブルパカ

ヤブネカ村の村長宅の客間。アラヤ達三人は、村長に結婚する旨を報告に来ていた。


「へぇ、じゃあ二人と結婚するんだね?まぁ、二人は貴族の出だろうってのは分かっていたけど、アラヤも貴族だったのか。アラヤは鑑定で見られないからね。それにしても、正気に戻って、すぐ結婚って…アヤコがまた無理に押し付けてないだろうね?」


「アハハ…」


アヤコさんって、村長にも危険視されてたんだね。ショタ好きらしいから、ひょっとして勉強会でも…怖いから想像はやめよう。


「それにしても、二人が結婚となると哀しむ男共が多いね。特にサナエは人気高かったからね~」


「二人共、モテてたんだね。知らなかったよ」


「サナエは、守衛達みたいな血の気の多い男達から人気でね。あの踊りを見た奴がほとんどだよ」


「ああ、なるほど。サナエさんの踊りは見惚れますからね」


サナエさんは照れたのか、そっぽを向いてしまうが、耳が赤くなっているので丸分かりだ。


「アヤコはね、親御さん達とザックスに人気だよ」


いや、個人名は聞きたくなかったかな。よりによってザックスさんか。二回目の失恋、ごめんなさい。


「おじさん達には興味はありませんので」


アヤコさんはショタ以外は興味無しですと、バッサリと拒否する。



「あの、この国での結婚するにあたって必要な儀式がありますか?神父を呼んで挙式みたいな」


「そうね。結婚の場合は教会で、司祭の前で永遠の愛を誓うのが一般的よ」


どうやらこちらの世界も、変わらない形式のようだ。問題は、この村には司祭?や教会は無い事だな。


「この村での挙式は、どうしてるんですか?」


「ああ、この村では、この家で挙式をしてるよ。婚葬はフレイア大罪教の仕事だから、私が司祭役で大丈夫なの」


「村長が司祭って、どういう事ですか?」


「アラヤは、鑑定で私の苗字があるのを知ってるよね?」


「はい」


村長の苗字はピロウズだ。つまり、貴族か王族の家系という事だ。領主とかなら分かるけど、何で村長なんかやってるんだろう?


「私の居たピロウズ家は、親族からも司祭になった者もいるくらいの、代々フレイア大罪教派でね。私も、洗礼を受けてるから代役ができるのさ」


「それでは、司祭は村長さんにお願いします。ここで挙式をするのでしたら、更に掃除をしなきゃいけませんね。掃除と飾り付けは私に任せてください。アラヤ君とサナエちゃんは衣装の手配をお願いします」


途端に仕切りだすアヤコさん。サナエさんはムムムと堪えているが、やむなく従うことにしたようだ。


織物屋に来た二人が店の扉を開けると、ナーシャさんが上機嫌で出てきた。その姿に二人は驚く。


「「ウェディングドレス⁉︎」」


「あら、二人ともいらっしゃい。見て?絹で作ったドレスなんだけど、凄く可愛いいの」


うん。凄く似合ってる。シンプルなデザインだけど、大胆に肩とデコルテが露出している。胸元が強調されるね。サナエさんも、彼女の前や後ろに回って、可愛いと連呼している。


「ナーシャさん、そのドレス、二着無い?」


「残念ながら、生地が足りなくてこの一着しか作って無いの。それに、自分用に作った物だから、あげられないわ」


うん。もっともな意見です。大体、ナーシャさんのサイズだと、二人には大き過ぎるからね。サナエさんを見たら、何故かすねを蹴られました。口に出して無いのに、何故分かったんだろう?


「生地が無いなら仕方ない。代わりの生地で作って貰おう」


「何?ドレスが欲しいの?」


「うん。俺達、結婚するんだ。あ、アヤコさんもね。それで衣装が必要になってね」


「そ、そうなんだ…。じゃあ、挙式に着るドレスが二着と、新郎の正装が一着欲しいのね?」


「うん。絹のドレスが良かったんだけど、他の生地で良いのがある?」


「この村では普通、挙式ならブルパカの毛皮で作る衣装でやるわよ?」


「ブルパカ?」


「そう。首の長い牛の魔物でね。東の平原地帯に生息しているんだけど、そいつの毛で作る毛織物は、王都でも人気らしいよ」


「良し!それなら俺は狩りに行ってこよう。サナエさんは、幾つか衣装のデザインを考えてて?」


「分かった。でも、今から行くの?夕飯まで三時間くらいしかないけど」


「大丈夫。任せて」


今のアラヤには、前回の発掘した山の手前に広がる平原なら、片道十五分で着く自信がある。

荷車とショートソードを準備して、村の入り口から全速力で走って向かう。

案の定、十五分足らずで着く事ができた。後は、早めに目標を見つけて狩るだけなんだけど。


「お?あそこに居る群がそうかな?」


羊達の様に群れをなしている影が見えたので、そっと近付いてみる。


「うわぁ…残念な生き物がいるよ…」


おそらく、いや、間違いなくこの生き物がブルパカだろう。

首が長く、胴体部分はモフモフとした長く柔らかな毛に包まれている。外見は途中までアルパカそのものなのだが、頭と体格は牛という残念な姿。


「ンモ?」


モフりたいのに、可愛さが足りない。いや、ボーっとしてる姿は可愛いかも?

しかし相手は魔物。先頭にいた一頭が、こちらに気付いた途端に身構える。

鼻息を荒立たせ、前脚で土を蹴り突撃の準備をしだした。

おっ?ボス的な立場の奴かな?よし、相手をしてやろう。アラヤも、荷車を離れてショートソードを構えて待つ。


『お前達、見てモー?あの小さい人間なら、俺の角で空まで飛ばして見せるモー』


ああ、言語理解で魔物の話が分かるんだっけ。どうやら群の仲間に威厳を見せたいらしいな。残念だけど、それは無理だと忠告してやろう。


『ちょっと、そこのボスブルパカさん!』


『ンモッ⁈人間が喋ったモ⁈』


ボスさん以外のブルパカ達も、動揺の声を上げた。まぁ、そうなるよね。


『悪いんだけど、君達じゃ俺には勝てないよ?』


『何を言う!人間の子供なんかに俺様が負けるかモー!』


ん?かもしれないって事?どっちか分かりづらいな。


『それなら、俺に負けたら全員の毛を刈らせてもらうけど良い?』


『モ、問題無いモー!俺様、負けないモー‼︎』


ボスブルパカは、アラヤに向けて渾身の突撃を行った!

当然、アラヤは難無く躱す。


『もう一度だモー‼︎』


うん。この突撃を見れば、闘牛のように見えて、ちょっとだけ残念さが減るね。

可哀想だけど、終わらせていただきます。


「グラビティ」


『ンモーッ⁈』


途端に、ボスブルパカは地面にペッタリと突っ伏した。そこへアラヤは歩み寄り、ボスブルパカの横に屈む。

両手を合わせて一言。


『【弱肉強食】頂きます』


食べる前の挨拶をしてから、ガブリと首に噛み付く。


『ヴンモッ‼︎‼︎⁉︎』


噛んだ瞬間から、肉の繊維の食感や、血や肉汁の味等の全てが、今までに食べた事がないような旨味で溢れてきて、それと同時に体に快感が走る。


『弱肉強食により、ブルパカの全ての技能(スキル)食奪(イートハント)しました。技能 咆哮LV 1、集団引率術LV 1、体温調節LV 1を取得しました。咆哮は威圧に下位互換として吸収されます。威圧がLV2に昇華しました。』


「嗚呼っ!美味かった‼︎」


口に付いている血を腕で拭う。今回の快感と旨味の余韻は割と短くて、今はちゃんと正気を保っている。物足りない感じは残るけど、たぶん他のブルパカを食べても、技能も快感も何も得られないだろう。

そもそも、ピクピクと痙攣するボスブルパカを見て、仲間達のブルパカは震えている。これを更に襲って食べる気には、ちょっとなれないな。今回は毛が目的だしね。


「ヒール」


とりあえず、痙攣しているボスブルパカを完治してあげる。


『では、約束通り毛を全員刈らせてもらうからね?』


『ンモッ‼︎分かったですモー…』


バリカンは無いので、雑だけどショートソードで次々と毛を刈っていく。荷車に山盛りの結構な量が集まったよ。


『ああ、それと、毛がまた良い長さに生え伸びた頃に、また来るかもしれないから。その時はよろしくね?』


『ンモモモ…‼︎』


言葉にならないくらいに震えてたけど、寒かったかな?体温調節の技能があるからきっと大丈夫だよね?

これで衣装の材料は手に入れたよ。因みに、ボスブルパカの毛は血が付いてたので刈らないであげたよ。だって、技能無いからね?

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