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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第13章 初顔合わせにドキドキですよ⁈
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187話 新居作り①

 アラヤ達は、早速問題に直面していた。

 宅地にすると決めたその大きな土地を、揺れを感じる事無く浮き続ける為には、風の大精霊エアリエルによる気流のコントロールが必要である。しかしその気流の影響で、地盤が徐々に削れていくのは明白だ。

 現在、その問題を解決する為に巨大樹の森から離れたちょっとだけあった台地の上に下ろしている。


「先ずはこの魔鉱石をこの土地の下部に埋め込みます」


 アラヤは、自身と同じ程に大きい魔鉱石を、興味深そうにしているエアリエルに見せた。


『コレは何だね?』


「グラビティの魔鉱石です。この土地自体の重さを微量の重さにする事ができます。これによって、土を抉る程の上昇気流を起こす必要はありません」


『なるほど、無属性の力だな』


「はい。そして埋め込みが終わり次第、地盤は全て鉱石化させて強固な地盤にします。これで、エアリエル様の少々の衝撃には耐えられるでしょう。それと、着陸時に安定する様に脚も作ります」


『ほう、我の力に合わせるというのか。面白いな』


 説明を終えると、早速アラヤ達は地盤の鉱石化と4本の脚の製作に取り掛かる。人数が多いので、広い地盤も小一時間で終わった。

 見た目的にはまだ荒いが、脚のおかげでしっかりと水平に安定している。


「じゃあ皆んな、頼んだよ?」


 飛び立つ前に、各自役割分担してその土地に必要な物資や資材等を集める事にした。

 アラヤ・アスピダで、巨大樹の若木を1本倒して分割した後で運ぶ。建築用資材として使う為のものだ。

 アヤコ・アフティ・チャコで、預けてある馬達と従獣・従魔をここまで移動をする。その際に野営地シェルターも回収してもらう。

 サナエ・コルプス・ファブリカンテで山菜と薬草採集。それと、庭木や花も欲しいものが有れば植える予定だ。

 クララ・オードリーで魔物や野生動物等の食材確保。もちろん乱獲はしないよ?

 カオリ・ハウン・イシルウェは精霊達と整地と基礎作りだ。


 そんな様子を、物陰から指を咥えて見ているアルディス。以前なら、村から出る事すらしなかった彼女は、村に残らないと決めたイシルウェを見に来ていて、どうにか引き止める方法は無いかしらと悩んでいた。


「ああ、このままではまた、イシルウェは届かない場所に行ってしまう…。風精霊(モース)、私はどうしたら良い?」


『方法は一つよ。だけど彼等の仕事は早過ぎる。ゆっくりしてはいられないわ。その方法を実現するには、速く村に戻り行動しましょう!』


 モースの考えに乗ったアルディスは、急いで村へと引き返した。


 間を持て余しているエアリエルは、巨大樹の森ゆっくりと漂い時間を潰している。


『南に、だいぶ澱んだ(オド)が集まりつつあるわね…』


 彼女特有の大気の流れによる気配感知は、ラエテマ王国の異様な流れを感じていた。それは、無数の人間達が移動している事で感じるものだ。


『ハァ…。人とは、何年経とうとも愚かな生き物だな…』


 エアリエルは、自身に芽生えた残念な気持ちを振り払おうと、雲の上まで舞い上がった。

 雲海の上にゆっくりと足をつけ、雲へと力を伝える。それは、この近辺国以外を対象に、突然の雷雨を起こせという伝令。いわゆる、彼女流の()()()()()である。


 世界が同時の雷雨に見舞われている。そんな事が今起きている事等露知らずに、アラヤ達は着々と作業を進めていた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ラエテマ王国、王国領デピッケルのとある住宅地。そこに、アラヤ達の住宅がある。

 今はそこを、画家となったタオとその両親が空き家状態が続くよりはとソーリンに言われて借りていた。居候としてハルも住んでいる。


「タオ兄ちゃん、また絵を描く為にお出掛けするの?」


 画材の道具を担いで倉庫から出て来たタオに、自作の土ゴーレムと砂山遊びをしていたハルが駆け寄る。


「うん、今回はグラーニュ領の領主であるダガマ子爵の御子息の肖像画の依頼でね。ちょっと日数が掛かると思うんだ。ちゃんとお土産を買ってくるからね」


「そんなの要らない。それよりも、私も行きたいな」


「ええっ?ダメだよ、遊びで行くんじゃないんだよ?」


「そんな事分かってるもん。私はタオ兄ちゃんが寂しいから付いてくの」


 自分が寂しいからだと思うけど、このところ依頼で構ってあげれてないだけに、タオは申し訳ないと思っている。


「若奥様がまた遊びに来て下さるから、ハルはここに居なきゃダメだよ」


「…だってナーシャさん、服を飾るゴーレム作りばかりお願いするんだもん。飽きちゃった」


 ナーシャは、自分が仕立てた服を販売する様になっていて、ハルの精巧に作る人型土ゴーレムに目をつけた。そこで思いついたのが、イメージしやすいとサナエがデザイン画に描いていたいわゆるマネキン人形だ。


「御給金も頂いてるんだし、いろんなお菓子も貰ってるだろう?」


「むぅ~」


 ハルが頬を膨らませていると、タオを迎えに来たバルグ家の執事バスティアノがやって来た。彼が、タオの教育係兼護衛として同行しているのだ。


「タオ様、今回は長旅です。バルグ社の運搬馬車も同行するので、冒険者を護衛に雇っています。ハル様が1人増えても問題ありませんよ?」


「やったー!流石、バス爺だね!」


 ハルは、ゴーレムに自身を持ち上げさせて大喜びする。タオは少し困った表情をしたが、まぁ大丈夫かと頷いた。


「じゃあ、待っているから、お父さん達に報告とお出掛けの準備して来て?」


「はーい!」


 ハルは元気よく家の中に走って行った。村では暗く大人しかったハルが、この街でバルグの家族達と接する様になってから、大分明るくなったとタオは思う。

 まぁ、それもこれも、アラヤ達の出会いが有ったからこそだが。


「あれ?バスティアノさん、今日はレニナオ鉱山の方が賑やかだね?」


 デピッケルの街に隣接する鉱山地区で、先程から歓声らしき声が、離れたこの住宅街まで聞こえて来ている。


「はい。なんでも、勤勉の勇者が遂に、鉱山の奥地に棲む古竜の討伐に成功した様です」


「へぇ~、長いこと諦めずに挑戦してたもんね。やっぱり勇者って凄いんだなぁ。強さで言ったら、もしかしたらアラヤさんも勇者だったりして」


「それは…」


「お待たせ~っ!」


 そこへハルが、荷物を子供型ゴーレムに持たせてやって来た。

 外に居た土ゴーレムと違い、室内用に作られたこのゴーレムは、主軸となる部分のみに土を用いて、外皮は木製でタオが塗装を施した共同作品だ。口も開かず瞬きしない事以外は、服を着せているので見た目は男の子そのものだ。


ゴーレム(ザック)も連れて行って良いでしょう?」


 どうかな?とタオはバスティアノを見ると、彼は大丈夫と優しく頷く。タオが仕事中の時に、彼女の遊び相手として必要だろう。


「何やら天気が悪くなりそうです。さぁ、早めに出発しましょう」


 ゴロゴロと遠くで雷鳴が聞こえ始めている。本降りになる前にとタオ達は馬車に乗り込み、グラーニュ領に向けてデピッケルの街から旅立った。





「おおっ‼︎あれが勤勉の勇者か!」


「後ろに居る女性も勇者らしいわよ?」


「何にせよ、古竜が討伐されたわけだ!こりゃあ、街中で宴になるぞ!」


 鉱山から運び出される古竜の斬り分けられた遺体と、凱旋する勇者チーム。

 銀の鎧に竜の返り血を浴びた男が、身長と同じ程ある大剣を背に装着して先頭を歩いている。彼が、勤勉の勇者クリスチャート=高須=スタディである。

 その傍らにいる美徳教団の白衣の女性は、銀の錫杖を鳴らして歩いている。その鳴らす音に合わせて、仲間達の傷が癒されている様だ。彼女はフローラ=ミュゲット、美徳教団が聖女の称号を与えた純潔の勇者だ。


「クリス、これで私達の任務は終わりよね?」


「ああ、困難な任務ではあったが、皆の努力で見事達成できた。感謝感激である!達成した暁には、王都の美徳教団に向かえとの事だ。準備が整い次第、出発せねばな!」


「少しは休みなさいよ…」


 ハァと溜め息を吐くフローラは、鉱山を振り返る。坑道から次々と運び出される古竜の遺体。

 鉱夫のドワーフ達は、念願の奥地の発掘ができると喜んでいるが、彼等は後に知る事になるだろう。我々勇者が何故、この古竜に挑み続けたのかという理由を。

 チクリと痛む心を抑えて、純潔の勇者は彼等と同じく何も知らない男の後を黙って付いて行くのだった。

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