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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第13章 初顔合わせにドキドキですよ⁈
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183話 アルディスの思惑


 ファウンロド宅に帰って来たアラヤ達は、結界に遮られる事無くすんなりと入る事ができた。おそらく、出入りの許可は精霊達が操作しているのだろう。


「おかえりなさいませ、アラヤ様。【暮れの大火の森】は如何でしたか?」


「う、うん、景色は最高だったよ…」


 出迎えたハウンの問いに、アラヤは言葉を濁す。後からついて来たアヤコ達は至って平気そうなのだが。


「まぁ、俺には女性の気持ちは分からないからね」


「はい?」


「いや、何でもないよ。ところで、イシルウェ達はどうしたのかな?」


 家から出てはいないだろうけど、部屋には見当たらない。


「今、二階でコルプスによる焼き菓子を作ってて、皆さんも手伝いに行ってますよ」


「焼き菓子か、良いねー!俺も行こうっと(試食に)」


 早速向かおうとしたら、火精霊(サラマンドラ)に腕を突かれた。


『俺達の魔力玉(おやつ)も忘れんなよ~?』


『うん、もちろんだよ。ありがとうね』


 ちょっと忘れていたので、結界班の彼等には少し大きめの魔力玉を出してあげた。アラヤ達と同伴した風精霊(シルフィー)闇精霊(エキドナ)との差をつけてあげなきゃね。


「あ、そういえば、あの無属性精霊、ちゃんと俺の魔力玉食べてくれたかな?」


 滅多に現れないという精霊だから、できれば引き入れたいものだ。

 せっかくだからと捜しに向かおうとしたが、二階から漂ってきた焼き菓子の香りに負けてしまうのだった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


『全くなんなのよ、あのカタツムリ!何であんなに早く動けるわけ⁈』


 無属性精霊を見た事が無い風精霊(モース)は、見た目に騙されて普通のジャンボカタツムリだと思っていたのだ。

 基本、のんびり屋の性格が多い無属性精霊だが、当然、無属性魔法にも長けているわけで、ムーブヘイストによる高速移動は得意中の得意なのだ。


 見事に逃げ切られてしまったモースは、アルディスからのお呼びが掛かると、イライラしながら枯れ葉の山を吹き飛ばして去って行った。


『怖い精霊も居るんだあなぁ』


 飛ばされた葉の裏から、ノソノソと現れた無属性精霊は、口元をペロリと舌で舐める。先程食べた魔力玉の味を思い出して、お腹がグゥと鳴った気がした。

 精霊の栄養補給は魔力(魔素)吸収なので、お腹が鳴るという表現はおかしいかもしれないが、まだ欲しい、お腹が空いた、という感覚が彼をそう思わせていた。


『また食べたいんだなぁ』


 見上げる巨大樹は、上が全く分からない。あの精霊の混じった人間は、おそらくこの巨大樹の上に居る。

 ジッと巨大樹の幹を見つめる。


『やっぱ、無理なんだなぁ』


 登るという選択はあっさりと無くなり、自宅の枯れ葉のベッドに戻ろうと決めたのだった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 呼び戻されたモースは、村長宅の居間へ急いだ。

 パートナーのアルディスは、魔力玉の提供を1日1回しかしてくれない。確かに、魔力は常に提供されているので必要ないのだが、食べる食感と味覚は精霊にとっての娯楽であった。

 その貴重な1回も、パートナーの機嫌が悪ければ無くなる場合がある。

 あの美味しそうな魔力玉を食べれなかった今、モースは彼女の機嫌を損ねたく無かったのだ。

 室内に入ると、アルディスは湯浴みを終えたばかりの様で、濡れた体を乾かしているところだった。


『ごめん、野営地を捜したけど、イシルウェは居なかった。おそらくはファウンロドの家に居るよ。ただ、強力な結界が張ってあった』


「そう…。分かったわ。お疲れ様」


『うん。……それだけ?』


 特に怒るわけでもなく、次の命令を言うわけでもない。彼女は何処かに感情を置いてきた様な表情でいる。


『私が離れている間に、例の坊や達に何かされたの?』


「別に。ただ、相談には乗ってくれたわ。それに彼等は、イシルウェを守ってくれた良い人達よ?」


『それなら良いんだけど…』


 着替えを終えたアルディスは、魔力玉を作り出して机の上に置いた。


「此処に置いとくわね。私は、今から()()に逢いに行ってくるわ」


『えっ?今から?もう夕方だよ?』


「ええ。明日の予定を今一度お願いする為よ。モースは待ってて良いよ」


『彼女との面会で、私抜きというわけにはいかないでしょ⁉︎私も行くわよ』


 置かれた魔力玉を口に押し込んで、モースはアルディスの肩に掴まる。じっくりと味わいたかったけど、この場合は仕方ない。

 向かう先は、村長宅の裏にある巨大樹である。その巨大樹の根元には洞窟があり、地下へと続いている。

 普段はアルディスの結界により入り口は隠されている。この結界の役はモースではなく他に居て、土精霊の2人で賄っていた。


『『入るのか?』』


「ええ。お願い」


 土精霊の2人はヒョコヒョコと左右に分かれると、背後の土壁をドンと叩く。すると、土壁はスゥッと透明になり消えた。


『くれぐれも粗相の無いようにな?』


 土精霊の1人がモースに対してそう言う。彼等は、アルディスのパートナーでは無い。先代の村長に仕えていた精霊なのだ。

 前村長が亡くなった後、魔力提供が消えてしまった彼等は、魔力提供が無いにもかかわらず、この場の結界を張り続ける。

 彼等曰く、先代との繋がりであり、自らで決めた使命らしい。


 アルディス達が洞窟に入ると、土精霊達は再び結界を張り直した。途端に辺りは暗くなり、彼女達は闇に包まれる。すると、今まで目立たなかった最奥の明かりが見える様になった。2人がその明かりを頼りに進むと、やがて広い空間に出た。

 中には壁掛け松明が設けられ、中央には大きなベッドが置かれていた。

 そのベッドには、アルディスにも勝る美貌と体型を兼ね備えた女性が、薄布を要所に巻いただけの半裸に近い状態で寝ていた。


『風の大精霊エアリエル様、この様な時間に参り、大変申し訳ありません』


 ベッドで寝ていた女性は、薄っすらと眼を開けると、モースを見つけて笑顔になった。


『どうしました?我が愛しい眷族モースよ』


『エアリエル様、我がパートナーが、今一度明日の事で話があるらしいのです』


 前に出るアルディスに対し、彼女はモースとは違う無関心な表情に変わる。


『既に明日の予定は聞きました。この期に及んで何用ですか?』


『実は、内容の変更をお願いしたく…』


 その内容を聞いたエアリエルは、首を傾げて目を細める。


『それは、始めの要望とは真逆ではありませんか。貴女は最初、己が弟から私の加護を取り上げろと頼みました。一体、どの様な心境の変化です?』


『私は、弟から貴女様の加護が無くなれば、加護を利用した仕事や生活が出来なくなった弟は、外ではなく、この村でしか生きられないと考えておりました』


 エルフは加護持ちだからこそ、長寿であり優雅で聡明な人生を歩む事ができる。しかし、それを失ったエルフは、何一つ自信が持てなくなり人生に迷うだろう。そうなれば、唯一無二の姉である私に頼りざるを得ない筈だった。


『ええ。全くもって理解し難い要望でしたね』


『…はい。先に謁見を約束致しました6属性の加護持ちである人間の子等に、己の愛の傲慢さを教えられました。故に変更をお願いしたいのでございます』


 モースも、アルディスの心境の変化に驚いた。弟の事になると暴走していた彼女が、今や弟の為にできる事を考えるまでに成長している。本当に、自分が居ない間に何があったんだろうか?


『分かりました。貴女の要望は引き受けましょう。しかし、それには条件があります。それはーーー』


 エアリエルの出した条件を聞いたモースは、思わず飛び上がった。


『それは素敵だわ‼︎あっ、でも…』


 チラリとアルディスを見る。彼女は俯き考えている。これは、彼女には大きな決断となる条件だ。直ぐには決められないだろう。思わず浮かれた自分を反省しようとしていたモースは、彼女の意を待とうと隣に降り立った。


『アルディス…大事な…』


『決めました。その条件でお願いします!』


『『えっ?』』


 早過ぎる決断に、エアリエルとモースは少し戸惑ったが、彼女の表情は強い決意が現れていた。

 そう、これは愛する弟イシルウェの為なのだから!

 彼女の芯は変わっていない。ただ、己が為が、相手の為に変わったのである。


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