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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第12章 御教示願うは筋違いらしいですよ⁈
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174話 里帰り

 イシルウェの故郷に行く事が決まったのだが、ミヤウツの街から後戻る事となった。戻る先はオードリーの故郷のウラスガミ村だ。


「まさか、ウラスガミ村の近くだったとはね。イシルウェも、言ってくれれば良かったのに」


「いや、元から寄るつもりは無かったからな」


 イシルウェは気落ちしているのか、明らかに声のトーンも下がっている。それ程に帰りたくないのかな?ちょっと悪い気がするけど、彼とは対照的にチャコはウキウキしている。


「今思えば、妙に急いで移動する事も無かった。オードリーも行きはごめんね。せっかく来たから、故郷でゆっくりしたかったでしょ?今度は急がないから、自由にして来て良いよ?俺達は、村の外で魔物狩りでもして待ってるから」


「故郷と言っても、教団に入る前の5歳までですので、そこまでの愛着は無いのですが…。そうですね、せっかくなので墓参りでもしてきます」


 ウラスガミに着いたアラヤ達は、オードリーと別れて村の近場に野営シェルターを作り上げた。


「さて、待っている間、久々に魔物狩りで新たな技能(スキル)を探してみようかな?」


 アラヤがクララの背に乗ろうとしていたら、アフティが走って来た。


「私もご一緒させて下さい!」


 アフティの狙いは新たな従魔を作る事みたいだ。羅刹鳥(メイピイ)はあくまでアラヤ達の従魔なので、自分の従獣か従魔が欲しかった様だ。


「良いよ。さぁ乗って?」


「クララ様、すみません」


「行きだけ。帰りは、従えたものに、乗りなさい」


 なんだかんだ言っても、クララは腰をさげてすんなりと乗せてくれた。単にアラヤの前でのアピールをしただけなのだろう。


「さて、私達は少なくなった魔力電池や魔鉱石作りに取り掛かりましょう」


 アヤコ達は減った消耗品の補充と、傷んだ椅子や皿等の修理に取り掛かった。検査した結果、妊娠していなかったサナエも参加している。ただ、本人はかなり落ち込んでいる。


「サナエちゃん、確かに今回は残念だけど、アラヤ君が言うように、親になるには私達はまだ若すぎます。20歳になったら解禁できる様にアラヤ君を説得しましょう」


「んー、それじゃダメよ。家を確保した後しばらく動かないなら、今がチャンスなんだよ?アラヤには、18歳になったらって皆んなで一緒に説得しよう?」


 仮の未来とはいえ一度は確かに身籠ったいう感覚が、彼女を執拗にしている様だ。


「…分かりました。でも、それなら誕生日を調べなきゃいけませんね。私は前世界の誕生日が、10月6日ですから…紫竜月ですね。あら、私はもう18歳なってましたね」


「私はクリスマスだから、12月の白竜月で後2日じゃない!月日を気にしてなかったから、すっかり忘れていたわ」


「でも焦ってはダメです。先ずはアラヤ君の言質を取ってからにしましょう。彼をその気にしないと、更に引き延ばされるかもしれませんから」


 ムフフと怪しい笑みを零す2人に、ハウン達は若干引いている。


「あ、そうでした!ファブリカンテ、ちょっと良いですか?」


「はい、なんでしょうか」


「貴女が作るツワリの緩和薬、調合に海藻類が多いのは免疫力を上げるから良いんだけど、ケンゴウカジキ(カジキマグロ)の吻の粉末は入れたらダメですよ。あれには、メチル水銀が多く含まれていますから」


「ツワリの緩和薬ですか?それにめち…?ケンゴウカジキは栄養豊富で、様々な滋養薬に多く使われています。ツワリ時には、入れない方が良いのですか?」


「大量摂取はダメって事。胎児はとても敏感で、水銀中毒を引き起こしてしまうの」


 この世界で、メチル水銀の事を話しても分からないだろう。だがサナエには、先に見た未来でアヤコが行った行為が、この事だったのだと理解した。


「アヤ…」


「さぁ、そうと決まれば作戦会議ですよ?先ずは、精の付く食べ物から仕掛けていきましょう」


 女性陣が盛り上がる中、チャコはイシルウェの姿が無い事に気付いてシェルターから外を覗いた。

 すると、盾を持つ大っきなアスピダと、飛竜達の世話をしているイシルウェを見つけた。チャコが飛竜を怖がっている為、その世話をイシルウェがしているのだ。


「アスピダ殿、その古い盾はかなり重くなった様に見えるが、新しい盾はアラヤ殿からまだ頂いてないのかね?」


「まだ試験段階らしいです。なんでも、生きた状態を保つ方法がまだ確立出来てないとか…。それに、この死んでしまった盾も、元はアラヤ様自身の皮膚から出来た物。重さはありますが、硬さは竜鱗で盾の最高クラス。もはや私が守られている様で、捨てる等有り得ませんからね」


 何やら話しをしているのは分かるけど、飛竜が怖くて近付けないチャコは、雪の玉を作ってエイッとイシルウェに投げた。


「あっ…!」


 しかし、雪玉は的外れな方へ飛ぶと、フワフワと宙に浮いたままになった。


『雪玉合戦したいの~?』


 チャコには見えないが、風精霊(シルフィー)が雪玉を掴んでクルクルと回していたのだ。

 不思議そうに雪玉を見つめるチャコを見て、シルフィは悪戯心が擽られた。


『ンフフ~、ちょっと面白いかも~』


 雪玉を浮遊させながら、チャコの周りをグルグルと飛んで彼女の目を回させる。


『仕上げは、こんな感じっ!』


 雪玉は空高く登って行き、あっという間に見えなくなった。


「飛んでっちゃった…」


 少しして、再び白い玉がゆっくりと落ちて来るのが見える。しかしそれが、投げた雪玉とは全く違う大きさになっていた事に気付いた。


『あ、あれ?やり過ぎちゃったかも…』


 シルフィは、上空で風で雪を集めて大きくしたのだ。ただ、予想以上に集まってしまい、巨大雪玉となってしまった。


「パ、パパ‼︎大っきな雪玉が落ちて来るよ~!」


「おお、チャコ。飛竜に興味が出て来たのか?」


「違うの!上、上なの~っ!」


 チャコの指差す先を見ると、確かに大きな雪玉が落ちて来るのが見えた。だがしかし、その大きさはシェルターと同等の大きさだった。


「な、何ーーっ⁉︎」


 驚き固まるイシルウェ達を、アスピダは庇う様に盾を突き上げて構えた。


『もう、情け無いわね』


 雪玉は、真上で突然寸断され、イシルウェ達には当たらずに落ちた。

 イシルウェは声がした方を見上げる。そこには、シルフィーではなく、チャコくらいの大きさの風精霊が、ニヤリと笑っているのが見えた。


『久しぶりね、イシルウェ。貴方が里を出てから10年振りかしら?』


『くっ…。モースか。君が居るって事はまさか、奴も近くに居るのか⁉︎』


 イシルウェは、辺りの巨木を急に警戒しだした。それを見たモースはフフフと笑う。


『残念だけど、彼女は居ないわ。未だに、いいえ、貴方が出てからは異常なくらいに、とても会いたがっているけどね?』


 ブワッと鳥肌が立ったイシルウェは、直ぐにチャコの手を取りシェルターに入ろうとする。


「パ、パパ?雪玉、チャコのやつじゃ無いよ?」


 精霊が見えてないチャコは、シェルター内で怒られると思ったのか、チャコは行きたくないと足を止める。


『ん?パパ…だと⁈ちょっとその子を見せなさい』


 モースは、チャコに向かって風の手を伸ばした。しかし、それは更に上空からの風で拡散する。ようやく降りて来たシルフィが止めに入ったのだ。


『おや?風精霊のパートナーを作ったのかい?成長したものだ』


『ちょっとそこ~、勘違いしないでよね?私はデレルウェのパートナーじゃないから~』


『何だ、違うのか。まぁ良いわ。巡回ついでで来ただけだったけど、彼女に土産話が出来たからね。いやぁ~、帰ったら反応が楽しみだわ~』


 悪戯に笑いながらモースは姿を消した。ガクッと両膝を突き頭を抱え込むイシルウェに、チャコは大丈夫?と背中を摩る。


「チャコ、やっぱり私の家に行くのは止めないか?」


「どうして?」


「あの里には悪魔が居るのだ…」


 イシルウェの嘆きにも似た答えに、チャコ達はどういう事だろうと首を傾げるのだった。

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