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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第2章 魅惑の生活が怖いって思わなかったよ⁈
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14話 ドワーフ商人の来訪

 この村に来てから、早くも1カ月が過ぎていた。言葉と文字は何とか覚え、この村での生活もだいぶ慣れてきた。いろんな体験をする事でステータスの向上を目指し、日常の中で技能(スキル)を使用して熟練度レベルを上げる。これもちゃんと続けている。

成果としては、サナエさんは戦士達の鼓舞がLV2になり、アヤコさんは念話と感覚共有がLV2になった。俺だけは、ホーンラビットを沢山捕食した事で、新たな技能【一点突貫】を覚えた。しかし、熟練度の方は何も上がらなかった。


「おはよう、二人共どうしたんだい?」


居間に顔を出してみると、二人が身嗜みを気にして櫛で髪を整えたりしている。


「言ってませんでしたっけ?今日は街から3カ月に一度の行商人が来る日なんですよ?到着は昼前らしいです」


「えっ⁉︎行商人?聞いてないけど?」


初めての村以外の人間の来訪に、少々浮き足立っているようだ。まぁ、外の情報を聞ける点では、俺もかなりの興味があるけどね。

以前、アヤコさんが借りた本も、やっと読み終えたばかりだし (BL以外)。本の情報がどれだけ正しいか、色々と照らし合わせてみたいからね。


「街って事は、この村に1番近い所では…レニナオ鉱山の街かな?」


 今ある情報と地図で確認すると、このヤブネカ村は、世界三大大陸の一つ、スニス大陸の最南端に位置する村である。この大陸には三つの大国があり、大陸南部を領土に持つラエテマ王国の管轄下にある。

 レニナオ鉱山は、ヤブネカ村から北東にある山脈地帯にある。その途中には、自分達がこの世界に転移した洞窟、教室のある森もある。


「行商人が来るのは分かったけど、お金持って無いから何も買えないよ?」


 しかし、大丈夫と二人は上機嫌のままだ。


「行商人の目的は、この村の陶磁器類と穀物類です。その売り上げは、当然村の資金となるわけですが、その売り上げの一部で行商人が持ち寄った商品を買うんですよ。もちろん、私達は直接買うお金を持っていません。しかし、村長が私達村人が欲しいと思う商品を、投票制で買って下さるんです」


「へぇ~。投票制なら三人で欲しいのを選ぶ?」


 その提案に二人の眼つきが変わる。あれ?急にピリピリしだしたよ?


「それは…誰かの品に、二人が投票して下さるって事ですか?」


「え?あ、いや…三人で欲し…「もちろん、私に協力してくれますよね?」…」


「おいおい、アヤ。アラヤは私に協力してくれるに決まってるだろ?きっと、私の新しい服を見たい筈だからな?」


「いえいえ、サナエちゃん。今必要なのは本です。服なんて三人で着れるわけないじゃない」


「「私に協力するよね⁈」」


 その前に、持ち寄る商品にどんな物が分からないでしょとは、二人の迫力に負けて言えませんでした。


「仕事に行ってくる!」


 アラヤは逃げるようにして自宅を出た。今日の午前中の仕事は製材所である。


「棟梁、おはようございます!」


 扉を開けると同時に挨拶をする。いつもと変わらぬ無口な棟梁が、おう!と手を挙げるだけの返事。これはいつもと変わらない光景。だが、他の大工職人達は、何かに取り憑かれたように制作をしている。


「あの…棟梁、彼等はどうしたんですか?」


「ん…今日の行商人と物々交換する品を作ってるんだよ」


「物々交換⁈」


「ああ。行商人が気にいる品を作って、女房が欲しい品と交換して貰うんだと。まぁ、成功率は低いがな」


 そんな手があるのか‼︎それならば、俺も何か作らねば!


「ちょっと待て」


 自分も取り掛かろうとしたら、棟梁に首根っこを掴まれる。


「お前はやるべき事が済んでからだ」


「ですよねー」


 それなら、速攻で仕事を終わらせるだけだ。材木の移動・外皮切り・のこクズを畜産家の方々に届ける。これを全力で終わらしに掛かる。


「ハァ、ハァ…さぁ、作るぞ!」


 流石に疲れたけども、今は時間が無い。行商人が欲しいと思える製品を作らないと!

 考える事5分。この世界に無さそうな珍しい物とは?

 玩具から実用品まで、思い付く色々な品を作り出した。


 竹とんぼ・将棋・ハンガー・折りたたみ机・折りたたみ椅子・オルゴール・カヌー


 正直、カヌーはちょっと大きいから無理かなぁ。オルゴールも全て木製だと、強度的に大きくせざるをえなかった。見た目じゃ薬箱と間違えそうだな。因みに曲はさくらさくらである。木で出せる音域が、高い音がアラヤには出せなかったのだ。


「おい、来たみたいだぞ」


 外から棟梁の声が聞こえて、アラヤ達は外に出た。他の村人達も、歓迎モードで出て来ている。


「あれは…ドワーフ⁈」


 村の入り口から入って来たのは3台の馬車で、後ろ二台が荷馬車だ。御者をしているのは小柄な髭長おじさん(たぶんドワーフ)だった。どの馬車にも、左右を並走する人間の姿が見える。身形から護衛兵だと推測できる。

 早速、鑑定で答え合わせをする。

 御者はやはり種族がドワーフで、護衛している人間は全員、剣士だった。彼等のステータスはライナスよりは少し低い程度だ。


 御者のドワーフは、村人達には一切注意を向けずに、馬車を村長宅まで向かわせる。


「何か、感じ悪いなぁ」


「そりぁ仕方ねぇよ。俺達は下等種だからな」


 棟梁はフンと鼻を鳴らし、製材所の中へと戻っていった。


「下等種…?」


 村長から借りた歴史本に、そう受け取れる記述があるのを思い出した。


『神は、戯れに創った祖である人間に、進化なる実をお与えになった。人間は、その身に魔力を取り込む術を覚え、四種の新たな進化を遂げた。魔人、膨大な魔力を有し神にも近い力を得た。エルフ、生命(植物等)・精霊の魔力を吸収する事で不老の存在へと成った。ドワーフ、魔力を生命力への増進剤と使用する事(短命)で強靭な身体能力を得た。亜人(獣人)魔力を他生命との結合に使用した。その種類は多く、種類によってその能力は異なる。これ等に該当しない人間。即ち、進化出来なかった人間は、ノーマルと呼称されるようになった』


 つまり、ドワーフにとっての人間(ノーマル)は、進化出来なかった下等種族として見えているって事だな。


「おっと、今はそんな事は気にしない。早いとこ追いかけないとな」


 辺りの村人も、ぞろぞろと村長宅へと移動を開始している。今日は村人にとって、数少ない一大イベントなのだ。

 アラヤは作品を集めると、村長宅へと駆け出した。




「メリダ、今回の出来はどうだ?」


「前回より、穀物は多く収穫出来たよ。あとは例年通りだね。陶磁器は、国宝級・伝説級どちらも一つずつだね」


 村長宅の客間で会話する、メリダ村長と身なりの良いドワーフ。このドワーフが、行商人のガルム=バルクだ。

 彼は、レニナオ鉱山にある商工会の副会長を務めている。


「ふむ。では確認に移ろうか」


 彼もまた、鑑定技能を持つ存在だった。こういった交渉の場で、彼に嘘は通用しないという事である。


「君達が作る穀物類は、レニナオでは評判が良くてね。いつもよりは少し上げて買うとしよう」


「それはありがたい。できれば、これ等も評価してくれたら…」


 二人が室内で交渉をしている中、村長宅前には多くの人集りが出来ていた。

 その多くの人達の目的は、シートに広げられた行商人の持って来た商品だ。商品の前には護衛達が陣取っている。


「中々近くで見られないな」


「アラヤ君!こっちだよ!」


 積み上げられた木箱の上に、アラヤを呼ぶ二人を見つけた。


「二人共、そんな高い場所じゃ危ないよ」


「だって見えないだろ?」


「うん、見えなきゃ選びようがないし」


「それで欲しい物は決まったの?」


「「もちろん、アレよ‼︎」」


 二人は目を輝かせて指差した。案の定、全くの別々の物だった。他の村人の票にもよるけど、入選しないと思われる女性用の服と、真新しい文庫本である。

手に入るかどうかは、やっぱり俺の作品にかかってそうだなぁ。

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