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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第8章 何処へ行っても目立つ様だよ⁈
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116話 対ベヒモス戦決着

 勇者の仲間の魔術士が、地盤の支柱に二重に魔法障壁を展開している。しかしその強度は、ベヒモスの拳による一撃を一度防いだと同時に粉々に砕け散った。

 そのまま二撃目を振りかぶるベヒモスの(ひかがみ)を、分別の勇者が斬り付けて膝カックンのようにベヒモスは後ろに倒れた。


「サラ、もう一度障壁を張ってくれ!」


「分かったわ、ウィル!」


 魔術士はポシェットから魔力回復薬(マナポーション)を取り出し一飲みして、再び詠唱を開始する。

 倒れたベヒモスに追い討ちを仕掛けたウィリアムは、鼻の反撃により突き離された。


「くっ、やはり技能(スキル)で斬らねば通らないか」


 ウィリアムが着地した場所に、丁度アラヤ達が駆け付けた。


「おお、そっちは片付いたのか⁈」


「いえ、トドメは大罪司教の方が引き受けてくださいました」


「大罪司教様が?」


 丁度その時、背後から白々した光の柱が立ち上がる。どうやらリリトにトドメをさした様だ。


「ベヒモスは…?」


 リリトの昇天を機に、ベヒモスも還ることを期待したが、依然としてその巨体は存在していて、切れた手首を地に押し付けて四つん這いの状態になっている。


「マズイ‼︎突進する気だ!流石に魔法障壁では防げないぞ!」


「止めましょう!」


 アラヤとウィリアムは同時に走り出し、お互いにベヒモスの別々の足に向かって攻撃を仕掛ける。

 ウィリアムは技能の分別斬で足の指を斬り飛ばす。この技能は、対象の硬さや質量で大量の魔力を使用する。今の魔力量では指の太さまでが限界だったのだ。

 しかし効果は充分にあり、ベヒモスはバランスを崩してグラついた。

 一方のアラヤは、氷河期(アイスエイジ)とエアカッターの合成で細氷(ダイヤモンドダスト)をアキレス腱に放ち、細胞レベルまで凍らせた。そこをバルクアップした腕力と竜鱗防御の拳で打ち抜く。脆くなったアキレス腱は粉々と粉砕された。


「何、あの魔法⁉︎見た事無いんだけど!」


 どうやら魔術士のサラも、アラヤの思い付きで作った合成魔法は見た事が無い様だ。


グォォォォッ‼︎‼︎‼︎


 ベヒモスは両足でまともに立てなくなったが、膝をついた状態で突進を開始した。


「ええっ⁉︎それでも来るの⁈」


 何か対策をしなければと慌てる2人に、頭上から声が聞こえた。


「待たせたわね!オモカツタ衛兵団の底力、見せてあげるわ!」


 頭上には、グラビティとアースクラウドで形成された巨大な足場が浮遊していて、そこにグスタフが率いる衛兵隊が乗っていた。


「さぁ、降りるわよ!やりなさい!」


 グスタフの合図で、魔術士達が足場を急降下させる。


「ちょっ‼︎ゆっくりに決まってるでしょーーーっ‼︎」


 魔術士達に出した指示が違ったらしく、手前に降りる筈が、直接ベヒモスに激突した。ベヒモスは頭を打ち付けられ、突進は止まったものの、足場に乗っていた衛兵達は大惨事である。


「ちょっと、皆んな平気ー⁉︎」


 グスタフが瓦礫から身を這い出して来ると、そこには保護粘膜を兼用した大量のバブルショットに受け止められた衛兵達がいた。


「何とか全員間に合ったな」


「坊やが部下を⁈って、私も受け止めてよ~!」


 クネクネと悶えるグスタフは無視して、衛兵達を離れた位置に下ろしていく。


「んもう!私を相手にしないのは貴方くらいよ!とにかくっ、皆んな無事なら隊列を組みなさい?」


「「「ハッ!」」」


 装備や武器を整えた衛兵達は素早く隊列を組んだ。そうして出来上がったのは、先頭にグスタフを立てた蜂矢の陣形だ。


「ちょっと、勇者と坊や。私が奴を引き付けるから、その隙に無力化しちゃってね?じゃあ皆んな、始めるわよ!」


 グスタフの合図で、上方から大量の矢がベヒモス目掛けて降って来た。しかも、矢尻には魔石が括り付けてある。アヤコの魔鉱石の矢と似たようなものだろう。

 放物線を描いた矢はベヒモスに次々と刺さり、フレイムやアイス、サンダーランスが発動するが大したダメージを与えてはいない。

 しかし、グスタフ達は突撃を開始した。


「ウィリアムさん、こうなったらやるしかありません。どうやって無力化しますか?」


「無力化とは簡単に言ってくれるよな。あの巨体を無力化…動けなく…か」


 2人が少し考えていると、アヤコから念話が届いた。


『アラヤ君、あの巨体ごといっそのこと埋めたらどうでしょうか?』


「…そうだね。かなりの魔力消費だろうけど魔鉱石もあるし、その手で行こうか」


「ん?何か名案があるのかい?」


 アラヤは、アースクラウドの魔鉱石を数個ウィリアムに手渡すと、彼はは不思議そうに土色に染まった魔鉱石を見る。


「この魔鉱石には、アースクラウドが込められています。これで大量の土操作を行い、ベヒモスを覆って下さい」


「あの巨体を?かなりの量と時間が掛かる。それに、暴れずに大人しくはしてくれないぞ?」


「それ以外の方法だと、後は口から侵入して心臓を破壊するくらいしか、思いつきませんが…」


「う、無理だな。分かった、とりあえずは試してみるか」


 アラヤ達とウィリアム達は2手に分かれて、ベヒモスの両サイドに回る。

 正面では、グスタフの挑発LV4の使用で、ベヒモスの注意を引き付けていた。ベヒモスの鼻撃を、盾役の重装衛兵が5人で受け止めるも、少し押し飛ばされている。その衛兵達を、全身ビルドアップしたグスタフが受け止めている。彼の体が倍増して、不気味さに拍車がかかっている。

 このままではあまり時間が稼げないかもしれない。なので、彼等の体をグラビティで重くして、サナエに戦士達の鼓舞を踊ってもらった。これで少しだけは頑張ってくれる筈だ。


「アースクラウド!アースクラウド!」


 あまり動きの無い後ろ足からダブル魔法を使い、両手でアースクラウドを同時に使用して大量の土操作を行う。並行思考によりスムーズに同時操作できる。

 それを見たウィリアムも、真似をして2つの魔鉱石を同時に使用してみたが、上手くいかないと早々に気付いて1つに切り替えていた。アースクラウドは操作する魔法なので、意外と神経を使うのだ。

 アヤコはクララに乗って、2人の届かない部分を埋めていく。

 ベヒモスが暴れる前に、こまめに鉱石化しながら両脹脛まで固める事ができた。


「兵長さん!上にいる魔術士にもアースクラウドを使える人が居たら、加勢をお願いして下さい!」


「分かったわ!」


 土属性魔法を使える術者が増えて、大量の土が集まりだす。後の問題は、暴れている上半身をどう大人しくするかだ。


「…やってみるか」


 アラヤはある言葉を思い出し、試してみる事にした。

 先ずはダークブラインドでベヒモスの頭部周辺を覆い、()()()()()()()見られ無い様にすると、闇雲に鼻を振り回すベヒモスの顔に近付いた。


『ちょっと、ベヒモス!危ないでしょ⁉︎アナタのその鼻が私に当たったらどうするのよ⁈』


 巨大な目が、ギョロギョロと念話の主を探す。その目が捉えたのは、長い髪をツインテールにした美少女の姿だった。

 巨大な目が、驚きで少し痙攣している。


『嫉妬、魔王…?』


『何?私のペットが決まっていた筈のアンタは、ご主人様の姿を知らないの?アカネ=コウサカよ、覚えなさいよね?』


『ちが、違う。我、ペットなる呼び名、ではない』


『はぁ?私の従順なる僕なら、ペットと同じでしょう?』


『う、うむ』


『大体アンタ、何勝手にリリトに従ってるのよ?』


『リリト、ゴーモラ王国、守る王国召喚士、代々仕えている』


『そうなの?…まぁいいわ。私はもう、大丈夫。アナタの敵を引き付ける役目は終わったから、後はゆっくり休んでいなさい。コラープス』


 これ以上、香坂の真似をしてもボロが出そうなので、コラープス(虚脱)で思考の低下を謀る。


『う?嫉妬魔…王?』


『じゃあね』


 大人しくなったベヒモスの周りには、既に大量の土が集まっていて、アラヤの脱出待ちだった。ダークブラインドの中で擬態を解除して、アラヤが離れると同時にベヒモスは大量の土に包まれた。アラヤがそれを鉱石化で固めていく。


「やったわ!まさかベヒモスを閉じ込める事ができるなんて!」


 しかし、あの力を抑えるには、まだまだ強度と重みが必要である。ベヒモスの周りの洞穴内を全て土で埋めて、地盤の重みで押さえ付けるまでは安心ができない。

 その作業が終了したのは、朝日が登って来た頃だった。アラヤ達は、守護神とまで呼ばれている魔物ベヒモスを、文字通りの生き埋めに成功したのだった。

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