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4話

  翌日にあたしはウィレットと二人でマリー様のお部屋へと行った。


  ラウラの事を相談するためだ。とりあえず、あたしやウィレットの二人で調べてみようと思った。そのために子供達のお世話がおろそかになってしまう。それを謝るのと調査の許可を得たいがためにこちらに来たのだが。ドアをノックすると女性の声でお返事があった。開けて中に入るとマリー様が立って迎えてくれた。


「……ルーラさん。ウィレットさん。何か用があるみたいね」


「はい。マリー様にお願いがあって来ました」


「そうなの。でなかったらこんな朝早くに来るわけないわね」


  マリー様の返事にすみませんと謝る。そう、今は七つの刻だった。まだ早朝といえる時刻だ。それでもあたしとウィレットの決意は固かった。


「マリー様。私とルーラでラウラさんの事を調べようと思って。わかるかもしれないし。わからないかもしれない。それでもこのままじっとしたままでいるのは嫌なんです」


「……あたしからもお願いします。子供達のお世話はおろそかになるだろうし。マリー様や孤児院の人達にもご迷惑をおかけするでしょうけど。ラウラさんの事を放っておけません」


  切々と訴えた。マリー様はちょっと複雑そうな表情だ。しばらく考え込んでいるのか沈黙が続いた。


「……ルーラさん。ウィレットさん。あなた達の言いたい事はわかりました。けど二人だけで調べるのは危険を伴います。せめて護衛をつけてください」


「護衛ですか。けどあたし達だと。お給金を払えるほど持ち合わせはないです」


「でしょうね。だったらわたくしの実家にお願いをしてみます。あなた達に護衛役をつけたいと」


  マリー様はにっこりと笑って言った。けどあまりの事にあたしとウィレットは目を見開いた。


「……え。いいんですか?」


「いいですよ。わたくしも普段からあなた達には良くしてもらっていますし。その代わり、調べる期間を設けます。護衛をつけて調査できるのは。一カ月とします」


「一カ月ですか?」


  ウィレットが言うとマリー様は頷いた。あたしもやっぱりなと思ったが。ただではさせてくれないだろうなと考えていた。


「マリー様。何から何まですみません。あたしとウィレットで聞き込みくらいはしてみます」


「それがいいでしょうね。後、二人には王宮に入ってもらおうと思っています」


  マリー様が告げた言葉にあたしとウィレットは二の句が継げない。王宮に二人で行けって。どういう事?!

 

「……あの。あたしとウィレットでなんで王宮に行くことになるんですか?」


「わたくしも一晩考えたんです。この孤児院の誰かに調べてもらってもいいのではと。なのでルーラさんとウィレットさんに頼もうと思ったのです」


「はあ。でも真犯人を見つける所までは行かないかもしれませんけど」


「それでも構いません。二人も何もしないよりは行動を起こした方がいいでしょう」


「……それはそうですね。私達で王宮に行ってみます」


  ウィレットが返答したのであたしも頷く。マリー様はにっこりと笑うと机に何かが入った麻袋を置いた。じゃらっと金属らしき物が擦れ合う音が聞こえた。


「あの。マリー様。これは?」


「……護衛を雇う用の資金です。わたくしの実家にお願いして持ってきてもらいました」


  あたしとウィレットはまた驚いて目を見開いた。どうも中身はお金のようだ。恐る恐る麻袋を手に取る。紐を引っ張って解き、中を確かめた。驚くべきことに金貨がこれでもかというくらい入っていた。


「わたくしの作ったレース編みのショールなどの代金の一部も入っています。後は二人へのお給金も含まれるけど」


「え。あたし達のお給金ですか?!」


「そうですよ。これだけお金があれば。護衛を二人くらいは雇えます」


  あたし達は唖然としてしまう。この金貨で五千ユルはある。一ユルで銅貨十枚分くらいで。銀貨一枚で十ユルと言えた。銅貨百枚分で銀貨一枚相当分だから。銀貨十枚分くらいで金貨一枚に成るとあたしは計算した。五千ユルと言ったらあたし達のような女二人でも優に四年は暮らせる大金だった。


「……それと。お昼になったら王宮の騎士団の方が調査に来られるでしょう。その方にあなた達の事をお願いしてありますから。もし声をかけられたら質問に答えて。その後で一緒に王宮へ行くといいでしょう」


「……わかりました。何から何までありがとうございます」


  あたしがお礼を言うとマリー様は「これくらいは何て事ありませんわ」と笑いながら答えた。お昼に備えてあたしとウィレットはマリー様のお部屋を出て自室に戻ったのだった。

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