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3話

  マリー様に言われた通りにあたしと妹は夕食が終わりさらに片付けもすませた後で院長室に向かった。


  ドアをノックするとマリー様からの返答がある。あたしと妹は開けて中に入った。


「……ルーラさん。ウィレットさん。お話が何なのかはもうわかっていますか?」


「いえ。わかりません。何かあったんですか?」


  あたしが言うとマリー様はほうと息をつく。表情は晴れない。


「2人には知らせておかないといけないと思って。あの。王宮にラウラさんがメイドとして行ったでしょう」


「はい。つい、半月前くらいにここを出て王宮に行くのをあたしと妹、マリー様で見送ったのは覚えています」


「……そのラウラさんですが。3日ほど前から行方知れずになって。王宮でも密かに調査をして探しているそうです。わたくしは実家が貴族なのは知っているでしょう。そのツテで知ることができましたけど」


「え。ラウラが行方知れずですか?!」


「それは本当なんですか?」


  最初にあたしが後でウィレットが大きな声をあげた。マリー様は頬に手を当てた。疲れたと言わんばかりの表情だ。


「行方知れずの件は本当です。ただ、ラウラさんがいなくなった日に怪しい男がいたという話は聞いたのですけど。それと明日になったらこちらにも調査の為に騎士団の方がいらっしゃると思います。2人ともそのつもりでいてくださいね」


「……わかりました」


  あたしが頷くとウィレットも同じようにする。2人で挨拶をして院長室を出たのだった。


  けど一メイドのために騎士団が動くのは異例だとあたしは思った。何かがあるのだろうか。そういえば、デイジーとマーガレットが言っていた。メイドや女官が行方知れずになっているとか。


「……ルーラ。メイドさんや女官さんがいなくなるって言っていたけど。何でだろうね」


「そうだね。メイドさん達が無事だったらいいんだけど」


「うん。ラウラさんが心配だよ」


  あたしとウィレットはそう話しながら孤児院の廊下を歩いた。ギシギシと床が軋む。そうしてあたし達が使う部屋に着いた。先にあたしが入り次にウィレットが入る。もう夕方だ。そろそろ、子供達の夕食も終わりお風呂の時間だと思う。普通は大きな(たらい)にお湯を入れているが。ここは大きな浴槽と洗い場があり男の子と女の子と交代で使うことができていた。あたし達が住む町には豊富な源泉があるらしい。それを陶器製の管で各家々で使えるようにしている。浴槽にお湯と水を入れて適温にさえすれば、入浴や洗濯、食器洗いができていた。


「……ウィレット。あたし達もお風呂に入りに行こうよ」


「うん。着替えと髪用と体用の石鹸と。タオルを忘れないようにしないとね」


「マリー様に頂いた髪用の香油があるから。後で使おうか」


「そうしよう。じゃあ、着替えを持ってくるね」


「お願い」


  あたしがいうとウィレットは部屋にある箪笥に行くと下着や上着などを二人分出し始めた。あたしもタオルや石鹸を小物や細々とした物用のチュニックから出した。香油の残りもどれくらいか確かめる。まだ大丈夫そうだと安心した。その後、お風呂に入りに行ったのだった。


  風呂上がりにウィレットと交代で髪のブラッシングをする。香油を手に広げて満遍なく塗りこんでいく。後はブラシで梳いていった。マリー様がくれた香油はオーラの花から採れるらしい。オーラは実から食用油が花からは髪や肌に塗る用の香油が作れると聞いた。良い香りがするのはハーブが入っているからだと教えてもらった事がある。


「……ふふっ。これを使うと髪がツヤツヤになるのよね」


「本当にね。マリー様が時たまくださるから助かるわ」


  ウィレットが言うとあたしも答える。本当にいい物をもらった。けどラウラは今どうしているだろう。それがふと気に掛かった。あたしが考えているとウィレットがこちらを振り向いた。


「……ルーラ。手が止まってるよ」


「ごめん。早くしないと湯冷めしちゃうね」


「……ラウラさんの事が気になる?」


  ウィレットが不意に訊ねてくる。あたしは驚きながらも頷いた。


「うん。やっぱり心配だわ」


「それは私も思う。明日になったらマリー様に相談してみようよ」


「そうね。そうしてみようかな」


  そう言うとウィレットは前を向いた。あたしは再び手を動かす。ウィレットが終わると今度はあたしの番だ。彼女に梳いてもらいながらマリー様に相談する内容を考えたのだった。

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