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1話

  よく晴れた昼下がり。


  あたしは双子の妹のウィレットと共に洗濯物を取り込んでいた。あたしとウィレットには両親がいない。

  現在は教会が運営している孤児院で働かせてもらいながら日々を過ごしている。2人とも今年で19歳になっていた。


「……ルーラ姉ちゃん。今日もいい天気ね」


「うん。あたしもそれは思うわ」


  ウィレットはそう言って微笑んだ。ルーラというのがあたしの名前だった。もう両親が亡くなって何年になるだろう。あたしとウィレットが8歳の時だったから11年前になる。それだけ長い年月が流れているのだ。

  それを思い出しながら干していたシーツなどを両手に抱えた。よいしょっと言いながら室内に持っていく。ウィレットも同じようにする。2人でせっせと洗濯物を全部一つの部屋に置いてくると中に入って靴を脱いだ。洗濯物が置いてある部屋に来ると座って畳み始めた。


「姉ちゃん。私達、いつになったらいい人に出会えるんだろうね」


「……そればかりはわからないわね。いつ出会えるかは神様でもなければ予測はできないでしょ」


「まあ。それもそうよね」


  そう言ってウィレットは黙り込んでしまう。しばらく黙々と洗濯物畳みに集中したのだった。



  夕方になり孤児院の子供達の食事を作っていた。あたしとウィレット、1つ下のラウラの3人で合計すると16人分のスープなどを作る。今日のメニューは鶏だしの効いた肉団子のスープに黒パンのスライスしたもの、教会の近くで採れた野菜とベーコンのソテーとちょっと豪華な感じだ。黙々とあたしはスープの入った鍋の火加減を見ていた。そうしながらおたまじゃくしでかき混ぜた。

  ウィレットとラウラはそれぞれ野菜とベーコンのソテーを作ったり黒パンを薄くスライスしたりと忙しく動いている。今は冬だから余計に台所は冷えていた。手にはあかぎれができていて荒れている。

  ふうと息をつきながらスープをまたかき混ぜたのだった。


  夕食ができあがると早速、食器--お皿などに盛り付けて食堂に持っていく。一番年上の女の子であるデイジーやマーガレットが手伝ってくれる。あたしとウィレット、ラウラも元々は孤児だった。この孤児院で育ち、今は子供達のお世話をする為に出て行かずに残っている。


「ふふ。今日は豪華ね。肉団子なんて久しぶりだわ」


  デイジーが言うとマーガレットも頷いた。


「そうね。あたしも思うわ」


「今日はダンとフィルが取り合ってケンカになるかもよ」


「確かに。あの2人は食い意地が張っているから」


  デイジーとマーガレットは困ったわねとため息をついていた。

  あたしもそれには同意したい。やれやれと思いつつお皿などを食堂に運んだのだった。


  夕食後、ちょっとした戦争状態だった食堂も静かになる。あたしとウィレット、ラウラは教会のマザーシスターであるマリー様と一緒にお茶を飲んでいた。マリー様は元々貴族様の出身であると聞いた。確か、侯爵家の次女だとか神父様が言っていた。


「……ふう。今日も大変でしたわね」


  マリー様が言うと3人でそうですねと頷いた。ラウラがほうと息をついた。


「マリー様。私、王宮でメイドになる事が決まって。ここを出る事になりました」


「あら。そうですの。でしたらじきにお別れになりますね。ラウラさんはよく子供達のお世話をやってくれていましたし。残念です」


  本当に名残惜しそうにマリー様が言った。あたしとウィレットもラウラに言った。


「ラウラ。王宮に行っても元気でね」


「そうよ。私もお別れになるのは寂しいけど。お仕事頑張ってね」


「……ありがとう。ルーラもウィレットも。私、頑張るよ」


  3人で別れを惜しんでいるとマリー様が微笑ましいとばかりに見ていた。


「ラウラさん。こちらを出るのはいつになるか聞いてもいいですか?」


「えっと。3日後になると思います」


「だいぶ急ですね。ラウラさん、十分に気をつけてくださいね」


「……わかりました」


「では。もう遅いですし。休みましょう」


  マリー様はそう言って飲み終えたお茶のカップを机の上に置いた。あたしとウィレットやラウラも同じようにする。皆で飲んだカップを片付けると寝る準備に入った。湯浴みをざざっとして各々の部屋で寝たのだった--。

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