70.グランドフィナーレ
肌が焼けるようなスポットライトの熱い光が降り注ぎ、その中にハンドベル部員達は並ぶ。大きな拍手で迎えられ、皆それに応えるように微笑む。何台ものカメラが彼らを追って動く。
初めに挨拶をするのはレイラだった。
「初めまして。S学院ハンドベル部の部長、藤咲と申します。よろしくお願いします……私達は、主に養護学校、老人ホーム、教会などでハンドベルの演奏をして来ました。沢山の交流があり、出会いがありました。そこで学んだのは、ハンドベルはみんなをひとつにすること、ひとりひとりの大切さを再認識する楽器である、ということです」
レイラからマイクが渡される。次に語るのは学の役目だった。
「ハンドベルは一人でも欠けると演奏出来ない楽器です。そのため、健康管理や部内の親睦も大切にして来ました。ここにいる全員が、全員で音を奏でたいと、今ここに立っています。それは本来とても難しいことだと思います。ですが、みんなの協力でここまで来れました。演奏する私達もそうですが、聴いて下さる皆様も、共に楽しめるように演奏したいと思います。よろしくお願い致します」
静けさが会場内を支配する。部員達はハンドベルを構え、コーチの合図に合わせそれぞれのベルを振り下ろした。
「It’s a Small World 」
広いホールに反響するように、ベルをシェイクして甲高い音から始まる。いつもより少しだけ高く手を上げ、会場の後方にいる聴衆にも配慮する。合唱を終えた小学生から仏頂面の評論家まで、全員が知っている曲だ。音の強弱を気にせず、とにかく元気に振り立てる。
とてもとても短い曲。
学の隣にはレイラがいる。この二人だけで始まった部も、今や十人の大所帯だ。
金色の幻影が夢のように、彼らの目の前できらきらと踊る。
最後の和音は全員でベルをマットに打ち付け、曲を終えた。
割れんばかりの拍手が十人を迎えた。それぞれバラバラの事情や目的で集った十人が、今や大ホールでスポットライトを浴び、互いに笑い合って立っている。




