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4.友人はリスクと同じ

 良いものを見た後は、気分も良くなる気がする。


 学は行きとは違った足取りで下校していた。真新しい鞄も聖書と讃美歌を置いて来たので軽い。学は浮足立っていた。


 礼拝堂が見えて来る。その脇に校門があってすぐに出られるのだが、ふと学の足は止まる。


 校門の前に、男子生徒が一人立っている。あっと声を出しそうになり、学は口をつぐんだ。


 そこに立っていたのは朝見かけた、女生徒に臆面もなく手を振る、あの軽率な彼だった。


 学は急速に気分が萎え、足も止まった。それを見付けたのか、男子生徒はこちらへ歩いて来る。


「あのさ……」


 相手が話しかけるよりも早く、学は校門に向かって一目散に駆け出していた。


「え!ちょっと待って」


 声が遠のいて行く。学は悪いクセが、と思うものの足が止まらない。


(ああー、やっちゃった)


 でもしょうがない、と学は思い直した。


(友人は、リスクと同じだ。リスクを抱えるなら、孤独な方がマシなんだ)


 久し振りにこんなに走った。学はフラフラになりながら女学生の波に混ざって姿を消す。


 もう追って来られまい、と思った自分を、学は不憫に思った。



 きっとどの在学生よりも長い時間をかけて、学は地元の駅に降り立った。彼は駅を出ると背中を丸め、家に帰ろうと足早に駅前の繁華街を抜け出ようとする。まるで逃走中の犯罪者のごとく……


 そこに、聞き慣れたあの声。


「あれ、市原君じゃないの?」


 体の大きい二人組。真新しいであろう学校制服を早速着崩して得意気に笑っている。学はぎくりと立ち止まる。何故だ。こんな時に限って。


 逃げ出したいのに、足が動かない。


「ちょっと付き合えや」


 言われるがまま、学は首根っこを捕まれて駅の方へ引き戻される。


 行先はゲームセンター。学にとって、嫌な思い出しかない場所。


 そこに三人は消えて行った。

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