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第2章.部員集結

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31.生贄の正しい勝ち方

 その次の日の練習日に、レイラは明日菜を伴って部室へとやって来た。先にいた学と西田は固まる。


「今日から、私も部活に復帰するから」


 それからレイラは怒ったような口調で明日菜に促した。


「で、明日菜。彼らに何か言うことはない?」

 

 まるで保護者だ。明日菜は頷くと、恐縮しきりで頭を下げた。


「本当に……ごめんなさい!」


 不穏な空気。学と西田とレイラ三人の視線が混ざって、全員の思惑が今一致した。


「ま……許せねぇけど藤咲先輩の言うことならしょうがねえか。松島先輩との付き合いは部活限定でお願いしまーす。な、市?」


 学も困ったように微笑んで、


「過ちは戻せませんけど、繰り返さないで下さいね」


 明日菜はぎくりと青くなった顔を上げ、すがるようにレイラに視線を向ける。レイラはちらと明日菜を見やると、


「ベルに性格は必要ないから、もう大丈夫。これ以上部員を逃がさないように、みんな仲良くしてあげましょう」


 冷たいのか温かいのか分からない発言をした。


「ベルは人数がいてナンボですもんね」


 学が言うと、まあねと西田も渋々同意した。明日菜はそんな……と口走ったが、自らの所業を思い出したのか口を慎んだ。


「じゃあ早速練習しましょう。コーチから楽譜預かってあるから、ハイこれ」


 渡された楽譜を見て、学は驚いた。末続コーチが用意した楽譜は、まさに明日菜の帰還を見越した内容だった。今までより楽譜の音符が増えている。音符の数は、丁度四人分で割り振られてあった。


 レイラを交えた練習を再開する。音の重なりが一人分増えただけで、曲全体の厚みが想像以上に増す。学は


(西田君には悪いけど、松島さんが入って来て本当に良かった)


と、密かに明日菜の合流を歓迎した。


 その後吉永らは停学一週間を食らったそうだが、学校自体は平穏だった。後に学がレイラから聞いたところによると、吉永の周辺は日和見なので彼女への悪口でクラスは団結し、レイラと明日菜は今その仲間外れの正当化の為に一応クラスで必要とされる存在になった、らしい。


「結局小さい輪の中で誰か一人を生贄に出来れば、それで良いみたい」


 さらりとのちにレイラは語ったが、学は女子内にうずまく負の力を見せ付けられ、しばらくは女子と関らないようにする毎日が続いた。西田も一時期女子を無視しすぎて評判を落としたようだが、もうどうでも良いと言い、部活中によくむくれていた。

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