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BraIn Vat  作者: 本けいと
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序章 二筋の光

文章は拙いですが、思い描いていることを少しでも描写できたらと思い、始めました。

よろしくお願いします。

薄暗い部屋でその男は瞳にディスプレイの光を映していた。


部屋は床に紙切れなどのゴミが散乱し、足の踏み場もない。申し訳程度にまとめられたゴミ袋は小さな山となって部屋の一部となっている。それに立ち込める悪臭も加わり、この部屋自体が男の特徴と性格自体を表しているといっていいだろう。


当の本人は癖の強い髪と無精髭こそ雰囲気に合っているものの、恐らくここへ帰ったばかりなせいか、カッターシャツを着たまま、すぐ横に荷物を置いて座っている。

その見た目は男がれっきとした社会人であることを印象付ける。が、その目に正面のディスプレイ以外の光はほぼなく、傍から見れば感情もなさそうにそれを操作している。


左右には床に設置された機械から描画される空中タッチパネルがあり、頭にはヘッドフォン型のコントローラを装着している。正面にはディスプレイがあり、本人とディスプレイの間に割り込むようにウィンドウ形式で空中に複数のアイコンや文字が浮かんでいる。その光景はほんの少し前のテレビゲーム世代から見れば中々未来的に感じるものだろう。


件のディスプレイには、中央に三人称視点でキャラが映し出されており、淵に沿うように様々な数値や文字、アイコンが配置されている。また、そのキャラの周りにもまた別の個性的なキャラが動き回っており、各々で交流しているのが見て取れる。


「――――ふぅ」


いつも変わらない、帰っては起動するだけの一日。それでも現実の眩しさに比べれば遥かに落ち着き、我を出せる時間、空間である。

思うところはあるが、人との交流が嫌いなわけでは決してない。会話が苦手でもなく、現にこうして画面越しに積極的に人と会話している。ネット弁慶とは昔の人はよく言ったものだ。


ふと、男――――白神譲(しらがみゆずる)は自分の画面に映るキャラを見る。自分が他人と関わるために精一杯悩んで作った、かなりの思い入れがあるものである。ステータス表示にしてみると、その好意的な顔立ちがよりはっきり確認できた。

次に目を向けるはディスプレイとの間の空間に浮かぶ使役アイコンのキャラだ。自身で操作するキャラとはまた別に作成した存在。譲にとってこれは別格の掛け替えのないキャラだ。性格設定の自由度の少なさには今でも不満がある。


その画面で譲は長考した。

――お金こそ払ってないものの、頼んで実際に届いたからにはやはり使うべきだろう。

譲はすぐ横の大きめの輸送用の箱に目を向けた。


『リアライズ・ワールズ』


箱には側面下に小さな文字でそうかかれている。なんとも安直な名前だ、というのが譲の感想だ。うさん臭さすら感じる。

そして再度の長考。優柔不断な点は、仮想でも現実でも変わらない。


「…………やってみるか」


ガサ、ゴソと音を立て、意を決し一気に中身を取り出す。円盤状のそれを取り出すと、慣れた手つきでセッティングする。幾度も思い悩み数度出しては戻しを繰り返した結果、無駄に効率化された作業である。


「いくぞ…………」

と、誰に向けたかもわからない声をかけると、譲は恐る恐るその電源をついに入れた。

様々な思いが交錯する譲の前で、それは無機質な光を放ちだした。


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