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新浜だより 行徳新聞掲載再録  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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野鳥病院てんやわんや 1981年6月20日号掲載

新浜だより(行徳新聞再録) 1981年6月20日号掲載


   野鳥病院てんやわんや


 観察舎新館の横にこじんまりと並んでいるプレハブ建の二階家は、知る人ぞ知る旧観察舎である。一階は官舎としてのわが家、二階の観察室は、現在では研究室兼野鳥病院として使われている。観察舎の管理主体である千葉県にとっては、時間や手間、余分な出費を必要とする野鳥病院は、いまだにじゃま者扱い。おまけに昨年着任されたばかりの渡井主幹が五月に西浜の清掃工場長として異動され、後任者はまだ決まっていない。

 六月は巣から落ちたり、親とはぐれたヒナ達の入院患者が多く、野鳥病院は例年以上のてんやわんや。しかし、一羽の鳥の生命のために努力することは、それにつながる多くの善意にこたえることでもある。残る三人の片肺飛行で、どうにかがんばっている野鳥病院の様子をご紹介したい。


   ゴイサギ

 庭の二階建禽舎の一室を占めるゴイサギの幼鳥は、もう間もなく放鳥できる予定。四月十九日、我孫子市にあるサギ山で、コロニーの周囲の下やぶを刈る作業の間に、誤って巣ごと落とされてしまったものだ。四羽のうち小さい方の二羽は間もなく死んでしまったが、ふ化後四、五日令の二羽は無事に育った。人の姿を見ようものなら、キャッキャッと大声で鳴き立てて、翼をふるわせて餌をねだる。餌のワカサギを入れてやると、魚よりもまず手にかぶりつくようにして、がつがつと呑み込む。綿毛の生えたカッパのようだったヒナは、すっかり羽も生えそろい、きれいな星五位の姿になった。あとは標識足環をつけて、禽舎の戸を開けてやればよい。庭から水路へと行動半径をひろげ、やがて独立してくれることだろう。

   ムクドリ

 研究室のドアをあけると大口をあけてとびついてくるのがこの鳥。習志野市から五月十三日に来所した幼鳥で、もうかなり飛べるようになっている。人なつこくて、頭にとまってはギュッギュッと餌を催促する。他のヒナにやろうとする餌を横からひったくるわ、ピンセットや鉛筆をくわえ上げては床に落とすわ、ともかく元気いっぱいのいたずら盛りである。しばらく室内に放し飼いにして様子を見てから、おだやかな日を選んで放鳥する予定。

   カルガモ

 特製の保育箱には、カルガモのヒナ十一羽がおさまっている。大型の段ボール箱を二つつなげて、一角に水入れや餌入れを置き、もう一方には発泡スチロールのトロ箱二つを組み合わせ、ヒヨコ電球で暖房した保温室を入れた。保温室と餌場は小さな出入口で自由に往復できるようになっている。

 ヒナのうち九羽は、六月七日の日中、ハイパーナカムラの駐車場で、親子してあっちへ行ったり、こっちへ行ったりしたあげく、どぶに落ちて保護されたもの。幸運なことに母ガモも一緒だったので、安全な保護区内に放してやればよいと安心していた。気をゆるめたのがいけなかった。ヒナたちを洗ってドライヤーで乾かしている間、うっかり窓をしめ忘れていたばかりに、母ガモが窓から飛び出して逃げて行ってしまった。さあ大変、一〇日令位までのヒナは、金魚用の粒餌で養うのがよいのだが、慣れない餌に餌付かせるまでが大仕事である。丸三日、一日三回、一回二時間余の強制給餌を経た後に、ヒナたちはぐんぐん餌を食べ始めた‥‥‥ほっとしたのも束の間、その日の夜、羽田沖から新たに七羽のヒナが持ち込まれたものだ。

 二腹プラスα、計十八羽のヒナのうち、不注意や事故で七羽を死なせてしまった。残る十一羽は元気に育ち始めているが、親と引き離してしまった愚を悔やまずにはいられない。

   キジバト

 六月十三日の夕方、強くなってきた雨脚の中で、車の止まる音がした。ドアをあけると、雨でびっしょりになった男の子が二人立っている。あとから、大きな箱をかかえた行徳動物病院の後藤先生が階段を上がってこられた。

「いや、この雨ん中で、坊やたちがびっしょりになって持ってこられてね、このハト助けてくださいっていわれるんですよ。」

 見るとキジバトの成鳥である。何かに衝突したうえ、かみ傷もあるが、致命的な傷ではない。出血も止まり、呼吸も正常である。

「おねがいです。とべるようにしてください。」ぺこっと頭を下げられて、何ともいたたまれなくなってしまった。生きものは自分の力でなおるんだよ、お医者さんはそのお手伝いをするだけ、とは言ったものの。

 新浜小一年の恩田君、遠藤君、キジバトは餌を食べ始めたよ。飛べるまで、あと一息です。



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