かさの袋 1982年11月26日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1982年11月26日号掲載
かさの袋
どうしよう、と思い悩むこと数十日、ついにやりました!と言っても、およそ大したことではない。雨の日、スーパーの入口に出してある使い捨てのかさの袋、あの使用済みのを十数枚、持ち帰ってきただけのことだ。それでも決行までに相当の勇気を要した。図太さに定評のあるオバン世代の私をして、である。
何に使うかおわかりだろうか。まず水気をとり、五、六等分にちょん切って、片端をセロテープでふさぐ。これで、バザーなどで扱う小物類の包装用袋にぴったりのサイズとなる。たかがポリ袋と言われるなかれ。買えば一枚二円近くかかるのだ。
得々として、ぬれた袋を小物干しに吊るしたところで、俄然ファイトが湧いてきた。ようし、今度雨が降ったらまたもらって来ちゃおう。廃物利用でゴミ減量と経費節約、悪いわけがない。
ひところ、卵のパックをせっせと集めたことがある。こればかりは少々自信のある利用法だが、実は草花の種まきに使ったのだ。花菱草やヒナゲシなどの移植を嫌う花は、咲かせたい場所にじかまきしなくてはならないが、これは意外に面倒。土の下ごしらえに気を使うだけでなく、まき時になっても前に植えた花が咲き続けていたりする。そんな時、卵のパックほど手軽で便利なものはない。適当に水はけ用の穴をあけ(穴あきパックはそのまままでよい)、開いた形において土を入れ、種をまいてやればよい。十個入りのパックなら二十本の苗が育てられる。苗がある程度育ったところで、土ごとすっぽりと押し出してやれば、根を全く傷めずに移植ができるわけだ。大型の種類には向かないが、場所もとらないし、水やりにだけ気を使って乾燥を防ぐだけで、簡単で確実な種まきと育苗が可能だ。もちろん、園芸専門店では育苗専用の容器を扱っているし、苗が植えてある黒いビニールポットを使った方が本当はよいのだが、家庭では卵パック育苗で十分効果が上がる。草花栽培の好きな方、ぜひお試しください。
このごろは鳥のマスコット作りに追われて、花作りはすっかりお留守になってしまったが、卵のパックの出番がまたできた。今度は穴のないものを半分に切り、パレットに使っている。子供の道具を借りずにすむし、使うたびに洗わなくても気がとがめない。ことに水彩からアクリル絵具にかえた今では、乾きが早く、乾くと色が落ちなくなるアクリル絵具の性質上、パレットよりも卵のパックの方がはるかに使い勝手がよい。
ペンキやニスを塗る時は、牛乳パックの出番である。適当に切って容器に使うのだが、筆洗いにも便利だ。使ったあと、大手をふって捨てられる気分のよさ。ぶしょう者にぴったりだ。
牛乳パックの口を全部開き、一つをもう一つにすっぽりかぶせると、手頃な四角い箱ができる。穴をあけてそのまま巣箱に使ったことがあるが、スズメがちゃんとヒナを育ててくれたのには感激した。子供が小さいころには積木代わりにしたが、このごろはだぶつき気味で、泣く泣くそのままごみ箱行きとなるものが多い。
ささやかな廃物利用法をご紹介したが、こうして何でもとっておきたがる性分に加えて、整理と聞くだけでジンマシンが出そうになる性格のおかげで、わが家のたたずまいは常にめちゃくちゃ。家事の才能に恵まれた方々がうらやましくてならない。近頃の友人達の合言葉。「天皇陛下のおかげで、まわりはずいぶん片付いたねえ。でも家の中はさっぱりだなあ。」
‥‥‥絶句。
どなたか、欠陥主婦の再利用法、ご存じないでしょうか。
道路わきのノブドウの実が、つやつやと陶器のように輝いている。天皇陛下のご行幸も無事に終わり、冬の小鳥たちの姿が急に目立つようになった。オレンジ、黒、白に彩られたジョウビタキの雄の美しさは格別だが、チャッチャッとやぶで舌打ちのような笹鳴きを聞かせるウグイスも、いかにも晩秋らしい落ち着きがある。そろそろえさ台にパンや柿の実を出して、小さなお客をご招待されてはいかが。




