タカのごちそう 1993年12月17日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1993年(平成5年)12月17日号掲載
タカのごちそう
バサバサッと重い羽音がして、道のすぐ横にある松の根元から茶色の鳥が飛び上がった。とっさにキジのめすと思ったとたん、鳥はキリキリキリッという細い金切り声を上げ、縞の入った幅広い尾羽が見えた。タカだ。それもあの尾羽や大きさ、飛び方から考えると、オオタカのめすに違いない。
松の下をのぞくと、肉を食べつくしたばかりの赤い胸骨や、おびただしい羽が見えた。よく探すと脚や嘴も残っていた。嘴の特徴から、獲物はホシハジロのめすとわかった。お食事中のオオタカのじゃまをしてしまったが、内臓や肉はもうきれいになくなっていたので、それほど悪いことをしたわけでもないだろう。十月二十五日のことだ。
新浜鴨場外縁の昔の堤防に沿った観察路は、保護区のメインルートで、観察会のみならず、何の用事でも必ず通るところだ。人間ばかりか鳥もよく利用するらしく、ここしばらく、この道を歩くと、必ずと言ってよいほどタカが食べた死体に出くわす。タカ類は食べる前に羽をむしるので、むしられた羽が丸く残っているところが、猫や犬が食べた時とはきり異なっている。また、犬や猫なら胸骨などの大きな骨もばりばり食べてしまうが、タカ類が食べた時はていねいに肉をむしられて残っている。
オオタカは食事場所にちょっとした木の下でまわりが見通せるところを選び、チュウヒは道ばたや土手ぎわなど、開けたところが好きらしい。
十一月四日にも、道のまんなかにゴイサギ若鳥の生々しい死体があった。バンディングをやっているバンダーの原島氏が、夕方観察舎をめざして戻る途中、タカが驚いて飛び立ったということ。死体にはまだほとんど手がつけられておらず、悪いことをしたかな、と気にしていたそうだ。翌朝早く同じところを通った時も、ゴイサギの死体は夕方と同じ状態だった。ところが十時ごろには内臓や胸の肉がかなり食べられており、さらに夕方になると、頭や脚のほかはだいたいきれいになっていた。
最初の出会いの時はもう薄暗かったが、種類はオオタカらしいとのことだった。一度捕えた獲物のところに何度も通って食べ尽くすというのがよくわかった。ただ、最初に見られたタカとは明らかに別の種類のタカが同一の獲物を食べていたという現場も目撃されている。合理的というか、けっこうちゃっかりした生活の知恵を身につけているらしい。
そろそろ寒くなるというのに、水面にはもののみごとにカモが入らない。タカや小鳥が多いことだけがささやかな楽しみだ。




