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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

存在証明

作者: はるき

仕事から帰り、スーツのジャケットだけ脱いで洗面所の鏡と向き合う。

日に日に顔が疲れていっていることがわかる。

人間関係は面倒くさいとつくづく思う。

人を理解することは困難だ。

そして自分を理解してもらうことも困難だ。

そもそも自分を理解してもらおうと思わない。

自分でも自分のことがよくわからないのに他人が理解できるはずがない。




この二十数年間寄り添ってきた心と体だが、全く自分がわからない。


きっと自分が見たものを信じ込み、

反対に見たことがないものは信じられないのだろう。

だから幽霊もUFOも私は信じていない。

世界には73億人もの人がいることも、飛鳥時代には聖徳太子がいたことも。

私が見てきたことが真実であり、今私の視界に映っているものが私の世界なのである。

つまり、この世界には私は存在しないのだ。

今目の前にある鏡や画像・映像の類いは所詮虚像なのである。

あくまで私ではない。

世界にないものをどう理解しろと。




こんな話を聞いたことがある。

無いということを証明することが一番難しいと。

だからきっと無いものを信じることも、理解するのも難しいのであろう。

そう思いきやそんなことはないのだ。

幽霊やUFOもそうだし、神の存在を信じて救済を乞う人間だってこの世には多数存在するのだ。

そもそもこれらを「いない」と主観で述べて考えることも無粋であるし、結局は「いないなんて決まってないよねー。やっぱりないことを証明するのって難しー。」と自己完結してしまう。

いそいそと台所へ向かい、もう一度洗面所に戻る。

再び自分の虚像と対峙する。




ゼロの概念というものがある。

無を記号化したのが0である。

これは画期的な発見だ。

何もないものを摘み上げてそれを可視化させた。

時間と同様、目に見えないものを無理やり人間が定義しているだけとも言えるが、

その発想は到底できないだろう。




だが大昔にそんなことをしでかした人がいたのだ。

無の存在証明を。

「無い」ということを知らしめたのだ。

無を見つけて色をつけたのだ。




そんな人が現れてほしい。

誰か私を見つけて。

私に色を付けて。

私は何なのか教えて。

私は何の為に存在するのか。

私は存在しているのか。




そこで勢いよく左手を引くと

右手首から噴出した体液によって鏡が赤く染まり、光を反射させて映し出すという本来の機能を失い始める。

ひたすら歯を食いしばり痛みに耐えるのみ。





死んで幸せになれるなんて思っていない。

生きているよりマシだと思ったからこうしただけ。

死んでも無だ。

天国も地獄もない。

魂だけが彷徨うこともない。

死んだらそこで全てが終わるのだ。

いや、終われるのだ。

こんな血も涙もない冷血な考え方をしている私だけど、

最後ぐらい血迷ったことを信じてさせて欲しい。


幽霊にでもなって、私の世界に私を入れてあげよう。

私の視界の中に、私の世界の中に、私を。

どうも。

私は痛そうな怪我を見るのも、痛い話を聞くのもすぐに手の力が入らなくなるほど苦手です。

ですのでそういう描写はあまりしていません。

というかそこまでこの人がどういう行動をしているのか、何が原因でこうなったのか、なぜこうしようと思ったのかなど大事なところを描写していません。

あえてと言えばあえてなのですが、ご自由にお楽しみください。

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