表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/54

49 そんなことおれに言われても、困るよ

「ええっ! てことは、ドライドンは一万歳いちまんさい以上ってことか!」

 話のこしってはいけないとだまって聞いていたが、さすがに声が出た。

「そうなるね。もっとも、おれのマスターはもっと長生きで、くなる前に十万九十九歳じゅうまんきゅじゅうきゅうさいって自慢じまんしていたよ」

 うーん、どこかで聞いたような話だ。しかし、今はそれどころじゃない。

「話をさえぎってすまない。それで、ドライドンになった科学者とは和解わかいしたのか?」

「まあね。最初のうち科学者をにくんでいたおれも、共に過ごす時間が千年を超えたあたりから仲間意識が芽生めばえて来て、何とか願いをかなえてやろうと協力するようになった。そのためにあらゆる情報を収集しゅうしゅうしようと、超次元通信網も作った。アニメをるのは、その役得やくとくさ」

「で、結局、金を元に戻す方法は見つかったのか?」

 ドッペルはなやましに、「一応ね」と答えた。

「技術的には解決したよ。まず、元々あった金には影響がないように、地道じみちに世界線(=時間と空間の中でその物が動いた軌跡きせき)を解析かいせきした」

「え? どうして?」

「金歯が金以外のものになっちゃ困る、というのは冗談だが、一番の問題はコンピューターさ。CPU(=中央情報処理装置)はともかく、基盤きばんには結構金を使ってるからね。それに、ドラードにだって金の鉱脈こうみゃくがあるかもしれないし、それまで変換してしまうのは、過干渉かかんしょうになる。つまり、元素転換機によってつくられた金のみを対象にしなければならないんだ。これには相当に手こずった。解析が終わったのは、ほんの百年前だ」

 なんだか時間の感覚がおかしくなって、百年が一瞬のように思えた。

すごいじゃないか。あとはピンポイントで、金を元の元素に戻して行けばいいんだ。すぐにやろうじゃないか」

 ドッペルはあきれたようにおれの顔を見た。

「まだ説明の途中だよ。世界線を辿たどったとしても、そのまま元に戻せる訳じゃないよ。元の位置からメチャメチャにシャッフルされているから、場合によっては化学反応が起きて爆発する可能性だってある。それに一々元の元素に戻してたんじゃ、千年ぐらいかかってしまうよ。何に戻すか、ある程度限定しなきゃ」

「あ、じゃあ、鉄がいいんじゃないか。モフモフたちも欲しがってたし」

 ドッペルはゆっくり首を振った。

「ダメだ。一気に酸化して発熱する。ポケットカイロと同じことさ。酸素濃度も下がってしまうし、熱で火事が起きれば、酸素がさらに減る。ドラード人がみんな窒息しちゃうよ」

「水ならどうだ。化学的に安定してるし、いくらあっても困るもんじゃないし」

「そこらじゅうが洪水になるよ」

「空気なら、あ、いや、酸素はもう要らないか。それじゃ、窒素ガスなら」

「今は金で重さを支えているところが、みんな崩れちゃうよ」

 おれは腹が立ってきた。

「じゃあ、いったいどうすりゃいいんだよ!」

 ドッペルは苦笑した。

「だから、説明の途中だって。地表にあって、比較的安定で、たくさんあっても困らないもの、なーんだ?」

「なぞなぞかよ! うーん、何だろう? たくさんあっても困らないもの。現金?」

「ブッブーッ。そんなわけないじゃん。第一、ドラードの現金はドングリだろう。答えは土さ」

「え? ツチって、あの泥みたいな土?」

「そう。まあ、あんまりやわらかすぎると不都合ふつごうも出るだろうから、適当に小石とか混ぜるけど」

「簡単に言うと、土砂ってことか。ええーっ、そんなの土嚢どのうとか園芸用とかで売っても、二束三文にそくさんもんじゃないか」

「そうだ。しかし、これが一番環境に負荷ふかが掛からない。あとの問題は、これを実行に移すための莫大なエネルギーだが、偶然、これも解決の目途めどがついた」

「偶然?」

「まあ、ある意味必然かもしれないけど。この中央湖の下に火山があるのは知ってるだろう?」

「うん、荒川さんから聞いたよ」

「数万年大人おとなしかった地下のマグマが、活発化している。大規模だいきぼ噴火ふんかを起こすほどじゃないが、水蒸気爆発の可能性が高まっている。それも極々ごくごく近い未来だ。いや、未来じゃないな。今、起こってもおかしくないくらいだ。そして、その爆発が終われば、また、休止期きゅうしきに入ってしまう。次の爆発が何年後か、いや、何百年後かもわからない。つまり、チャンスは一度だ」

 話が大きすぎて、実感がわかない。おれはこう言うしかなかった。

「ふーん」

「いやいや、ふーん、じゃないだろう。いいかい、チャンスは一度だ。そして、実行した後は、もう元には戻せない。つまり、天文学的な価値の黄金が、一瞬でただの土に変わってしまう。さあ、どうする?」

「どうすると言われても」

 ドッペルはニヤリと笑った。

「中野くん、きみが決めるんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ